クラス分け
「自主退学させていただきます!」
入学式のようなものを終えて僕はマリアルス学園長に学園長室に案内されて開口一番に宣言した。
対する学園長は豪華な赤いイスに座ってふむ、と短く唸る。
「残念だがそれは無理な相談だ。この通り、契約書にサインしてしまっているからね」
ぴらり、と何処からかあの羊皮紙を取り出す。え、それそういうヤツだったの?
「私、馳 樹はこの学園で三年間欠席なく過ごし、学問に励む事をここに誓います、とまぁこんな感じの契約内容だが」
は、嵌められた! ていうか父さんは息子をなんて所に送り出すんだ! ここを魔王育成学校だと知らないで送り出したんじゃ。
「ああ、心配せずとも竜崎はこの学園の事を知っているよ」
父さぁぁぁぁああん!!そんなに僕が嫌いなのーーーー!?
もはや悪意しか感じられない。厳しいってレベルじゃない。獅子は我が子を強く鍛える為に谷底へ突き落すっていうけれど人外魔境へぶち込むのはやり過ぎでしょう!?
愕然とする僕を見てくすくすと学園長は笑う。
「心配せずとも魔族は人間の(きみ)視点から見ても悪じゃないよ。人間に法と政府がある様に、魔族にも法や政治機構もある、むしろ君たちの法より我ら魔族の法の方が処罰が重いくらいだ。戦争もないしね」
今のところは、と学園長は笑った。
「それに、人間が在籍していた前例がないわけではないし、私も全力で君をサポートするから安心していい」
全然安心できない。と思っていたら、またどこからか紅茶を取り出して僕に差し出す。
「飲みたまえ、気分が落ち着くぞ」
「……ありがとうございます」
僕は紅茶を受け取って一息に飲み干す。じわっと体の芯から温まる。少し気分がよくなった気がする。
「おかわりは?」
「あ、すいません。いただきます」
おかわりした紅茶を今度はちびちびと飲みながら学園長の話を聞く。
僕は人間界に長らく住んでいた魔人の末裔として入学した設定だという、人間であることは極力ばれないようにするようにと言われた。
僕が魔族を怖がっていたのと同様に、魔族も人間が怖いという。
これから入る科によって勉強する内容が違ってくるという事とか。
医学や法学など、さらには芸能科などがあるときは驚いた。どうやら先ほどの儀式の内容によって最適な職業に付けるように初期選択してくれるとの事。自分の目指している未来と違った場合は変更も可能だとか。
人間は(ぼくたち)は化学が発展しているが魔族は魔術、魔法が発展しているらしい。あの入学式のようなものを行ったホールに移動したのも学園長が使った魔法だとか。便利なものだ。
学園長と話していると内容はともかく、さほど人間とかわらない印象を受けた。単純な僕はなんだか、やっていけそうだと少し安堵する。
話半ばで棚から出してきた紅茶によく合うクッキーが半分くらいになったころ、突然耳鳴りがして何処からか声が聞こえてきた。
困惑する僕に学園長は「ああ、クラス分けの発表だろう。個人にしか聞こえないから結果を聞かせてくれ」と言った。
『えー、先ほどの儀式のクラス分けを発表します。生徒名ハセイツキのクラスはおう科です。地図を送付しますので確認してください』
と、目の前に光が瞬いてぴらりと羊皮紙が現れる。これ完全にダンジョンマップだろ。
「で、何科だったのだね?」
と学園長。
「おう科です。ところでおう科ってなんですか?」
学園長に尋ねると学園長は切れ長な目を見開いた。そして大声で笑いだす。
「はははははははっ! 君がおう科とは!」
「な、なんで笑うんですか! 確かに一問も解けなかったけど」
まさか最底辺のクラスだろうか。この際どこでも変わらないのだが笑われる程バカだとは思われたくない。
学園長はくつくつと含み笑いをしながらいやいや、と手を振る。
「おう科とは、我ら魔族の頂点、魔王になれる素質を持った者たちが集まるクラスだ。いわば特進科みたいなものだ」
ま、魔王の素質!? なんで僕が!?
「た、たしか他の科も選べるんでしたよね? それってどうやって」
「いや、おう科――魔王科は無理だ。ほかの科から移ってこれない様に、魔王科に選ばれたものは他の科に移る事はできない。いわば君はエリートなのだ。選ばれた才能で出世街道まっしぐらという訳だな」
その街道って何処に繋がってるんだろうか。ダークサイドまっしぐらじゃないんだろうか。
「安心したまえ。我が学園の知名度は人間界にもちゃんとある。特進の魔王科からでた魔人が人間界で活躍しているくらいだ」
ぽん、と僕の肩を叩き「まぁ、大抵は魔界に引っ張られるがね」と冗談めかしていった。僕にとってはまったく冗談に聞こえず、下半身から思わず何か漏れそうになった。
「まぁ、最初は見た目が怖いとかあるだろうが大丈夫だろう。 日本では『美人には三日で飽きるが魔族には三日で慣れる』という諺があるんだろう?」
「そんな諺ないよ!?」