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演説

マリアルス理事長の声がホールに反響する。壇上に立っていた男(と思われえる人物)が数秒後、こほん、と小さく咳払いした。


「えーでは教頭の私の挨拶はこれくらいにしてマリアルス理事長からお言葉を頂きたいと思います」


そういうとオールバックのダンディな教頭はすすすと壇上を後にした。


「うむ、では君も隊列に参加して私の言葉を聞き給え」


「いやいやいや、僕ここに居ていいんですか!?」


なんかすごい視線集めてるし! ていうか人間だよ僕!? 絶対大丈夫じゃないよね? これ僕の生命の危機だよね!?

ていうかあそこにいる緑のでかいのゲームで見たことあるよ、DQ5だよ、まんまデスピサロだよ、ご本人登場だよ! 


「まぁまぁ、私が送ってあげよう」


マリアルス学園長が僕の肩を叩くと同時、僕の景色は一瞬で変わり、あの隊列から壇上を見る形で瞬間移動していた。ざわっ、と周りがざわつく。


いやぁぁぁぁぁ!よりによってデスピサロ君の隣に来るなんてぇぇぇぇぇ!!!


生命の危機に体が強張り、筋肉が凍ったように動けない。


落ち着け、落ち着け僕! パニックを起こしたら生存確率はそれだけ下がる。心を無にして悟りをひらけ!


「新入生の諸君、まずは入学おめでとう!」


僕が無心になって恐怖を打ち消しているとマリアリス学院長が声を張った。その凛とした覇気のある声はマイクもないのによく響く。


「私はこの学園の学園長、マリアルス=ヴィ=リアンだ!私は君たちが切磋琢磨しあい、目標に向かって一丸となってくれる事を切に願う」


短いが存外まともな事をいう学園長。しかし、その期待は、見事なまでに裏切られた。


「と、言うとでも思ったかあああああああああああああああ!」


きぃぃん、と鼓膜を破らんばかりの声というよりビリビリと腹に響く程の轟音。


「いいか、ここは魔王を目指す所だ! 学園という名の戦場だ! 勝ち残りたいのなら爪を砥げ! 生き残りたいのなら牙を突き立てろ! 己を鍛え、知恵を回して長所を最大限に生かして活路を見いだせ! 諦めるな! その心臓が鼓動する限り戦い抜け! 最後まで立っていられた時、魔王の名は君のものだ! 以上!」


わぁ、と弾けるように歓声と拍手の嵐が巻き起こる。隣にいるデスピサロ君も興奮したように咆哮する。こええええ。


壇上のマリアルス学園長は一礼し、壇上を後にする。壇上に誰もいなくなってからもしばらく歓声と拍手は鳴りやまなかった。







マリアルス学園長の演説の後、すすすと壇上に教頭が上がってきた。まだ喧騒がやまない生徒たちを大仰な咳払いで納める。


オールバックに襟のたった黒ずくめのマント。なんかドラキュラっぽい。


「ではこれよりクラス分けの儀式を始める。用意ができたものから目を閉じなさい」


クラス分けの儀式?なんだそれは。とりあえず目を閉じればいいのか。


教頭の指示に従い、目を閉じると、景色が変わった。


「!? なんだこれ!? 教室?」


僕はいつの間にか別な場所へと飛んでいた。この景色は、見たことがある。 中学時代に過ごした学校の教室だ。ふわぁー、と辺りを見渡していると、うおっほん、と大げさな咳払い。

その方向をみると教頭がじろりとこちらをにらんでいた。


「カンニング防止の為に魔法を使っています。さ、はやく儀式をはじめなさい。」


儀式って言ったって……


困惑する僕はふと机に広げられた紙に視線を落とした。まさか、これが儀式か……?


それはどう見ても試験のテスト用紙なのだが、拍子にクラス分けの儀式と書いてある。

いつのまにか握られたシャープペンを見るに、これを解けという事か。

一応日本語で書いてある。魔族の文字だったらどうしようかと思ったけど、とりあえず、これを解いていくしかなさそうだ。


最初は……数学か。


ふむふむ。


なるほどなるほど。


うん、さっぱりだ。


何この『魔界平方根』って?どう見ても子供の落書きなんですけど。魔力の総量ってどうやって求めるの?


しょうがない。次にいこう。

こういうテストでわからない問題があったら無理に答えを求めずにできる問題から解いてき、最後に時間をかけて解くのが定石だ。

まぁ、いくら時間があっても解けそうにないけど。


次は理科か。


無理だ。しょっぱなから詰まった。マンドラゴラからできる薬の名前なんて僕は知らない。小さくサービス問題と脇に書いてあるけど全然サービスになってない!


ええい、次だ!


魔界語学?わかる訳もない。


魔界歴史?知る由もない。


人間界育ちの文字通り真人間の僕にわかる訳もなく。一門もまともに解けずにただ問題文とにらめっこする時間が続く。


「時間です」


教頭がそう告げると、景色は暗転する。はっとして目を開けるとそこは巨大なホール。隣にはデスピサロくん。

時計を見れば一分と経っていない。体感では一時間程だと思ったがなんとも不思議な感覚だ。


「ええと、では全員儀式が終わったようなので、今日はこれで解散です。クラス発表は二時間後広報魔術で発表します。では解散」


教頭がそういうと、ホールは喧騒に満ちる。


「いやー楽勝だったな」


「入学の振り分け儀式だからなぁ。あんくらいのレベルだろ」


とか口々に談笑しながらホールを後にする。

その方法はさまざまで壁をすりぬけたり、床をすり抜けたり、空を飛んでいったり。となりのデスピサロ君なんか闇に解けるようにして消えていった。

……なんなんだろ、魔族の人ってすり抜けたりするの日常的なのかな。

そうしてぽつんと残された僕は改めて場違い感を認識するのだった。

デスピサロ君の後ろの奴「ちょw何も見えんww」

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