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真桜学園

吹きすさぶ四月の風はまだ肌寒い。指定の制服にの上に上着を着ていてもまだ寒いくらいで、吐く息も白く濁る。

早く室内に入って少しでもその寒さから逃れたい所だが、僕は真桜学園を前にして圧倒されていた。


それは例えるなら城。中世の物語で王様が住んでいそうな巨大な城が幾つも建てられている。それを囲むようにして張られた城壁は5メートルの高さはあり、城壁のようだった。しかもこんなに巨大な城壁でありながら橋が見えない。

そして入口はまんま城門そのもの。どうやって開閉できるのかわからないほど巨大な岩壁でできた門。その上には『私立真桜学園』と書かれている


はっとして我に返り、プリントを見返す。住所をを読み返してスマフォに入力する。スマフォに入力した住所検索ではここを指している。間違いない。

いやいやコレホントに日本なの? さっき歩いてきた時に見かけた日本住宅とすごい差があるんですけど。なにこの城、ハリポタかっていうぐらいスケールでかいんですけど。


「はは……」


もしやものすごく俺は場違いなのでは、と思う。こういった所はお嬢様とかそういう人たちが集まるんじゃないのか。

ていうかよく父さんこんなところに伝手あったな。どんな交友関係の人なんだよ。


「もしかして君が馳 樹くんかい?」


ぽけーっと学園を圧倒されていると突然後ろから声を掛けられ僕は振り返る。

そこには長い赤い髪と同じ色をした派手な赤いレザーのジャケットに赤いタイトなミニスカートを合わせ、さらにガーターベルトのついた赤いタイツに赤いピンヒールを履いた派手な美人がいた。


「え、と、そうですけど」


「やっぱりそうか! いやー、若いころの竜崎にそっくりだ!」


なにやらテンションが上がった様子で僕を観察してくるこの女性はいったいなんだろう。

しばらく僕に質問攻めを浴びせたあと、何か思い出したように咳払いを一つして大人しくなった。


「えー、私が君の父馳 竜崎の知り合いである。だいま、じゃなかった、マリアルス=ヴィ=リアンだ。この学園の理事長をしている」


威厳ある声色で彼女はそういった。ぴし、と威厳ある父親像にヒビが入る。

ちょ、父さんマジでどんな交友関係してるの。完全にお水系の人だと思ったよ。ちょっと大人の爛れた関係の匂いがするよ。


「あ、どうも、お世話になります。馳 樹です」


思考は口に出さず、挨拶を返す。父さんとの関係は聞かない方向でいこう、うん。


「では、さっそく学園を案内するとしようか」


そういって彼女は石門を手で押すと音もなくあっさりと開いた。


……発砲スチロールか何かで出来てんのかなぁ、この門。






学園の中は意外と静かで生徒が一人もいない。どうやら授業中らしい。校内は外見と同じく城のようになっていた。

所々に彫像や細かな彫刻があり、まるで中世にタイムスリップしたかのようで、ここが日本だという事を忘れてしまいそうだ。

見ていて飽きない校内を十分程歩き、僕は理事長室に通される。


「かけたまえ」


学校の教室の二倍ほどの大きさの部屋に置かれた六人掛け程のソファに僕は腰を下ろす。

やはり服と同じ真っ赤な高級そうな本革のソファは座り心地抜群で、小心者な僕は委縮してしまう


やばい、場違い感が半端ない。


強張る僕にいつの間にか入れてくれた紅茶をマリアルス学園長は差し出した。


「あ、ありがとうございます」


「そう強張るな。これから三年間通う学園だ。まぁ、直に馴染むだろうが」


そうとは思えないけど……。と思っただけで口に出さず、僕は紅茶を口に運ぶ。美味しい。茶葉の産地とか種類とかはわからないが、この味は今まで味わったことがない。


「さて、それを飲んだらこれにサインをしてくれ」


「これは?」


マリアルス学園長が取り出したのは古い紙だった。羊皮紙とかいうんだろうか。現代の紙とは違って荒い作りをしている。なんか凝ってるなぁ。


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