1
さて、ようやく(?)二章。
あれから衛士は、何をして過ごしていたのでしょうか?
一週間。
部活があるなら、日々之精進と、スポーツやら芸術にいそしんでいるだろう。
無くとも、塾に遊びにニートにと、それぞれが違った意味で邁進していることだろう。
しかし、月六万円のアパートに暮らす身としては、そんな青春を興じている暇などない。
どういう一日を過ごしているか、と問われれば、非常に答えやすい一日である事は確かだ。
まあ、アルバイトに塗れた一日である事は言うまでも無い。
そんな毎日を過ごしていればどうなるか。
週末である日曜日には筋肉痛で一歩も動く事が出来なくなる。
「う……っお……」
現在時刻は午後八時。
一週間の労働の結果が、これだ。よもや殆ど動けなくなるとは……。
ジリリリリリリリ! と突き刺さるような電話の呼び鈴を聞いて、部屋を這いずり回って受話器を取る。
「はい……もしもし結城ですけど」
消沈した声に、呆れ笑いのような声が帰ってくる。
『もしもし切枝ですけど……って、とても誘えそうにない状況かな』
「……誘いとは?」
『いやね、もう日曜だし今日はサーカスのラストショーが行われると思うんだけど……』
頭の中が一瞬で切り替わる。
全身が行くべきだと訴えかける。
固まっていた筋肉が一気に解れたように体の痛みを無視できた。
脳裏にあの少女を浮かばせながら、俺は電話口に向かって言った。
「分かった、行く」
『分かったって……お前そんなにサーカスに行きたいの? 今までのお前からは想像できないな』
俺は切枝の言葉を否定せず、
「……何となく、だ。おい、何時に集合すればいい?」
気付けばもうマウンテンバイクに乗りこんでいた。
夏の夜というのは暑さもあるが、自転車に乗っていると涼しい風が全身を舐めるように流れてとても心地が良い。
坂道を駆け抜けながら、色々な事を思う。
俺は再度あの少女に会って、どうするつもりなのだろうか。
自分があのサーカスを見に行く理由なんてたかが知れていた。間違いなく、俺はあの少女が気になったから来る気になったのだろう。
いや、違うかもしれない。本当はこの自分の中に渦巻く自分自身でも分からない感情を理解したいだけなのかもしれない。
坂道を抜ければ、もう目と鼻の先に目的地はある。
どうでもいいと切り捨てる事ができない、この訳の分からない感情に、俺は明確に区切りを付けられなかった。
サーカスを見ている内に、おのずと分かることなのだろうかと思いながら、俺はテーマパークに駐車場の隅っこに小さく併設されている自転車置き場にマウンテンバイクを駐輪し、財布の中身を確かめながら入場ゲートへと向かう。
短い?
気にしない、気にしない。小分けするとこうなるんですよ。どうしても。
ところで、筋肉痛って正直悲しいんですが(だって運動してすぐ筋肉痛になると、いかに自分がたるんでるかよくわかるし)衛士君は働きすぎで筋肉痛だそうです。
一度くらい、「ちょっと頑張りすぎて、もう動けないんすよ」って言ってみたいですねー。




