義姉による制裁
「……で?」
魔王の姉は話を最後まで聞いた後、カップを置いた。
その音は、妙に静かだった。
「王妃ちゃんに嫌味?……へえ」
一同、無言だった。
とても口を挟める雰囲気ではない。
「――誰?」
続けて。
「名前、出して」
女官長が、慎重に言葉を選ぶ。
「い、いえ……すでに陛下が……」
「足りない」
魔王の姉は断言する。
「“分からせ”が不足――じゃない?」
王妃が慌てて止める。
「お義姉さま、もう十分ですので……」
「……王妃ちゃんが、そう言うなら」
しかし、不敵な笑みを浮かべて。
「でも次は――私も、同席するわね?」
*
後日。
王城の応接間では、小さな茶会が催されていた。
参加者は――二人。
魔王の姉と、王妃の友人となった伯爵令嬢。
伯爵令嬢はその圧倒的な威圧感から、緊張で背筋が伸び切っていた。
「そんなに硬くならなくていいのよ」
魔王の姉はにこやかに微笑む。
「今日は二人きりで女子会。王妃ちゃんの、お友だちだもの」
伯爵令嬢は少しほっとした。
しかし魔王の姉が気にしているだろう件について、自ら口を開いた。
「……あの、お茶会の件、改めて――」
「いいの」
言葉を遮り。
「もう、終わった話……でも」
声色は、変わらずにやわらかい。
「他に――何人いたの?」
伯爵令嬢は凍る。
「……え?」
「王妃ちゃんに、嫌味言った人」
にっこり、という音が聞こえるほどの笑みで。
「名前、覚えてるでしょ?」
逃げ場はない。伯爵令嬢は観念して、全てを話した。
その夜――
数名の有力貴族に、静かに圧がかかった。
*
翌日。
王妃のもとに、魔王の姉が訪れる。
「王妃ちゃん。昨日の女子会、とーっても楽しかったわ」
王妃は微笑みながら。
「それはよろしかったです、お義姉さま」
背後で、魔王が静かに呟いた。
「姉上……ほどほどに」
魔王の姉は、悪びれもせず答えた。
「あら?あんたのためよ?」
決して目の笑っていない微笑みを浮かべて。
「可愛い王妃ちゃんを傷つける命知らずな輩は――きちんと躾てやらないと」
王妃は見上げながら、そっと魔王に囁いた。
「……陛下」
魔王は、何も言わなかった。




