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義姉による制裁

「……で?」


魔王の姉は話を最後まで聞いた後、カップを置いた。

その音は、妙に静かだった。


「王妃ちゃんに嫌味?……へえ」


一同、無言だった。

とても口を挟める雰囲気ではない。


「――誰?」


続けて。


「名前、出して」


女官長が、慎重に言葉を選ぶ。


「い、いえ……すでに陛下が……」

「足りない」


魔王の姉は断言する。


「“分からせ”が不足――じゃない?」


王妃が慌てて止める。


「お義姉さま、もう十分ですので……」

「……王妃ちゃんが、そう言うなら」


しかし、不敵な笑みを浮かべて。


「でも次は――私も、同席するわね?」



後日。

王城の応接間では、小さな茶会が催されていた。


参加者は――二人。

魔王の姉と、王妃の友人となった伯爵令嬢。


伯爵令嬢はその圧倒的な威圧感から、緊張で背筋が伸び切っていた。


「そんなに硬くならなくていいのよ」


魔王の姉はにこやかに微笑む。


「今日は二人きりで女子会。王妃ちゃんの、お友だちだもの」


伯爵令嬢は少しほっとした。

しかし魔王の姉が気にしているだろう件について、自ら口を開いた。


「……あの、お茶会の件、改めて――」


「いいの」


言葉を遮り。


「もう、終わった話……でも」


声色は、変わらずにやわらかい。


「他に――何人いたの?」


伯爵令嬢は凍る。


「……え?」


「王妃ちゃんに、嫌味言った人」


にっこり、という音が聞こえるほどの笑みで。


「名前、覚えてるでしょ?」


逃げ場はない。伯爵令嬢は観念して、全てを話した。


その夜――

数名の有力貴族に、静かに圧がかかった。



翌日。

王妃のもとに、魔王の姉が訪れる。


「王妃ちゃん。昨日の女子会、とーっても楽しかったわ」


王妃は微笑みながら。


「それはよろしかったです、お義姉さま」


背後で、魔王が静かに呟いた。


「姉上……ほどほどに」


魔王の姉は、悪びれもせず答えた。


「あら?あんたのためよ?」


決して目の笑っていない微笑みを浮かべて。


「可愛い王妃ちゃんを傷つける命知らずな輩は――きちんと躾てやらないと」


王妃は見上げながら、そっと魔王に囁いた。


「……陛下」


魔王は、何も言わなかった。

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