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目覚めを待つ手 ―三晩を越えて―

※王妃視点。

王子は私の腕の中で眠っている。

小さな吐息が、規則正しく胸に触れる。


その温もりが指先を掠めるたびに。

どうしても――あの三日間を思い出してしまう。


夜が、三つあった。


一つ目の夜。

陛下は高熱に浮かされ、意識を失っていた。

私はただ、その手を握っていた。

離せば、何かが終わってしまう気がして。


二つ目の夜。

王子を胸に抱きながら、祈った。

声にはしなかった。

言葉にすれば、壊れてしまいそうだったから。


三つ目の夜。

眠り続ける陛下の胸に、ようやく穏やかな呼吸を感じて。

私は――泣いてしまった。

けれど、誰にも見せなかった。

王妃である前に、ただの妻でいたかったから。



王子がむにゃむにゃと口を動かす。

それだけで、胸が満ちる。


生きている。この小さな命も。

そして――何よりも愛しい人も。


「とてもお強いですね……あなたのお父さまは」


そう呟いたときだった。

背後に、気配する。


振り返るより先に大きな手が、そっと私の肩に触れた。


「無理をするな」


低く、いつもの声。


私は息を呑んで、ゆっくりと振り返った。

そこにいたのは――もう熱に侵されていない陛下だった。


「……陛下」


そう呼んだだけで、喉が詰まる。


陛下は何も言わず――王子ごと、私を抱き寄せた。


「三晩だ」


耳元で、静かに。


「余は……お前を、三晩も独りにした」


違います――と言おうとして、言葉は出なかった。

代わりに、額をその胸に押し当てる。


「……戻ってきてくださって、ありがとうございます」


それだけで、十分だった。

陛下の腕が、少し強くなる。


「二度と、越えさせぬ」


短く、断言する声。

私は目を閉じた。


三晩は、確かに長かった。


けれど――


今、この腕の中にいる限り。

あれはもう、越えた夜だ。

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