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揺りかごを守る

王城に、再び新緑の季節がやってきた。


その一室はやわらかな光に満ち、穏やかな時間が流れていた。


そこには揺りかごの中で眠る――小さな王子。

王妃は傍らに腰を下ろし、編み物をしていた。


細い指先で糸を操りながらも、時折そっと。

王子の頬を優しく撫でる。


その姿は、まるで女神のようだった。


――そのとき。


黒い影が、すっと窓辺に現れた。


黒猫がひょいと跳ね、王子の揺りかごの縁に座った。

紫銀の瞳で、じっと王子を見つめている。


王妃は顔をほころばせた。


「まあ猫ちゃん……王子を守ってくれているの?」


黒猫は王妃を見た。

その視線には、明らかな忠誠心が宿っている。


王妃は胸がじんわり温かくなるのを感じた。


しばらくして、扉の向こうから足音が近づいた。


「……眠っているのか」


魔王が静かに現れる。

王妃と王子、そして黒猫を見つめしばし目を細めた。


「……猫よ」


王妃は思わずくすっと笑い、糸を握る手を緩めた。


「陛下……猫ちゃんも、王子を大切に思っているようです」


魔王は王妃の隣に腰を下ろすと、王妃の肩を包み込むように抱いた。


そして、眠る王子の指の先に触れる。


「王妃と王子を守れるのは……余だけだ」


黒猫は魔王を一瞥し、尾を揺らした。


――魔王には、決して懐かない。


王妃は微笑み、魔王の胸に頭を寄せた。


「まあ」


魔王は唇の端をわずかに上げ、王妃の髪を撫でる。


「……猫になど、譲らぬ」


揺りかごの中の王子が、父の指を握り返すようにわずかに動く。

そのやわらかさに魔王も王妃も、胸を締めつけられるような幸福を覚えた。


黒猫は鋭い眼で、王子の傍らに座ったまま。


けれどその姿は。

家族を見守る守護神のようで、あたたかい。


魔王と王妃。

そして懐かない黒き守り手。


彼らの間には言葉にできない信頼と愛情が――

静かに、けれど確かに流れていた。

王子が爆誕しました。

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