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与えたいもの ―夜―

※ご注意回です(ちょっとだけ)

数日前の誕生日。

庭園の奥にあるガゼボは、王妃のものになった。


昼の光も美しかったが――

その価値を、別の角度から示したのは庭師だった。


「夜は、星もよくご覧になれましょう」


その一言を、王妃は忘れなかった。



とある夕刻。王妃は魔王に告げる。


「陛下……今夜、あのガゼボで過ごしてみたいのです」


穏やかな声音。

ただそれだけで魔王の内に、密かな“欲”が芽生えた。


魔王はそれを表に出すことなく、静かに告げる。


「……分かった」


そしてその夜。

携灯(ランタン)を手にした魔王は、王妃の指を取る。


言葉はない。

だが指先に伝わる熱が、すべてを語っていた。


新緑の匂いを含んだ夜風。

ガゼボに辿り着いた瞬間、王妃は息を呑んだ。


「……まあ」


天を仰ぐ瞳が、星を映して輝く。


「こんなにも……近くに」


魔王はその横顔を見下ろし――静かに、王妃を抱き寄せた。


敷布の上。

逃がす気は、最初からない。


王妃の背が、優しく押し倒される。


「こうすれば……もっと星がよく見える」


低く、囁く。

王妃は困ったように笑った。


「陛下のお顔しか……見えません」

「……」

「でも」


魔王の視線が、王妃に戻る。


「陛下こそが……私の、輝ける星です」


その瞬間。

魔王は、何も返さなかった。ただ――


言葉の代わりに、噛みつくような口づけを落とす。

深く、逃げ場を与えず。


星はもう見えない。


ガゼボには新緑の夜風が吹き込み。

それに紛れて、重なる二人の吐息だけが残った。


――後日。


庭師には、特別な報奨が与えられたという。

理由は誰も知らない。


ただ、魔王の機嫌が良かった――

それだけが、王城に残る噂だった。

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