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牢獄は音を失う

※ご注意回です(撲る蹴る系)

――地下最奥。


石壁と鉄線に囲まれたその区画では、囚人の呻きも鎖の音も、すでに止んでいた。


魔王が姿を現した、そのとき。

灯りが一段、落ちたように感じられたのは――

錯覚ではない。


宰相と将軍は数歩後ろに控えたまま、何も言わない。


止めるつもりがないのではない。

止める権利が、もはやこの場には存在しなかった。


決して光が届くことのない牢獄で。

猿轡をされ、手足を鎖で繋がれ壁に張り付けにされた東の華国の第三皇子は。


魔王を見た瞬間、必死に何かを訴えようとした。


だが、声は出ない。

そして――言葉を持つ資格も、もう()い。


魔王はゆっくりと近づいた。

感情を荒げることもなく、声を張ることもない。


ただ低く、冷たい声で告げる。


「余の王妃に、手を出したな」


返事はなかった。

あるのは荒い呼吸と、意味を成さない目の動きだけ。


魔王は第三皇子の前に立ち、その顔を“確認する”ように射貫いた。


「――安心しろ」


その声に、宰相が一瞬だけ眉を動かす。


「命は()らぬ」


第三皇子の瞳に、安堵が浮かんだ。


この直後――

完全に叩き潰されることを、まだ彼は知らない。


「命を()ることさえ、無駄だ」


魔王はそう言い捨て。


その背中が牢獄の扉を出るまで、何が起きたかを。

宰相も将軍も、一切言葉にしなかった。


ただ時間だけが過ぎた。


やがて将軍が、呆れたように呟く。


「……陛下。これ以上は、持ちませんよ」

「構わん」


魔王は、振り返らない。


「“終わらせる”だけだ」



第三皇子が牢獄から運び出されたとき。

それは人ではなく――物品の扱いだった。


豪奢な衣装は切り刻まれ、ほぼ跡形もない。


意識はあるのかないのか。

それを確かめる者は、誰もいない。


手足を縛られ、腐りかけの木箱に放り込まれる。


猿轡は外されていた。

もう、声を発することはないだろうと。


ただ代わりに、目元は覆われていた。

もう、何かを映すことはないだろうと。


蓋が閉められる直前――

魔王は一度だけ、木箱を見下ろした。


まるで“穢れたもの”を見るような目で。


「余の王妃を拐ったその手で、二度と何かを掴むな」


淡々とした声だった。


「次は、国ごとだ」



木箱は、東の華国へ“丁重に”送り返された。


中身の説明はない。

ただ《返却》とだけ記された貼り紙があるだけ。


第三皇子はそれ以降、公の場に姿を現すことはなかった。


殺されなかった。

だが――生きているとも、言い切れかった。

魔王さんブチギレ(どころではない)

喉元と目ん玉……やっちゃってますね( ◜◡◝ )

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