年明けの逢瀬 ―後日談―
年が明けて数日後。
王城は新年の休業から通常業務に戻り、女官長も無事に帰還していた。
――今年も胃が無事であるかは、定かではないが――
王妃はしばらく書庫に行けず――
女官に頼んで、いくつかの書を私室に取り寄せていた。
今日は先日とは別の書。
極東の神国の年中行事に特化した、注釈書を手にしている。
「……え?」
指が止まる。
王妃の視線は、ある一文に釘付けになった。
《――“姫初め”とは。新年最初に夫が妻を慈しみ、その一年、夫婦の情が乱れぬことを誓うための床の儀である》
さらに続く。
《公的な場で行うことに意味があり、それは“この女人は我が妻である”と世に示す行為でもある》
王妃の頬が、みるみる熱を帯びる。
思い出されるのは、昼間の光差す書庫、長椅子。
そして低い声――
(実践した方が、早いな)
「陛下……っ!」
王妃は書を閉じて、思わず顔を覆う。
魔王は完全に、その“意味”を理解していたのだ。
*
その夜。灯りの揺れる寝室。
「……陛下」
王妃は寝台の端から、小さく魔王に呼びかけた。
「極東の書を……読み直しました」
魔王は一瞬だけ視線を逸らし、短く言う。
「そうか」
「……ずるいです」
王妃の声は抗議のはずが、どこか――甘さを含んでいた。
魔王は何も言わずに王妃を抱き寄せ、額に口づけた。
「余は、嘘はついておらぬ」
その言葉に王妃は、目を閉じるしかなかった。




