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年明けの逢瀬 ―後日談―

年が明けて数日後。

王城は新年の休業から通常業務に戻り、女官長も無事に帰還していた。


――今年も胃が無事であるかは、定かではないが――


王妃はしばらく書庫に行けず――

女官に頼んで、いくつかの書を私室に取り寄せていた。


今日は先日とは別の書。

極東の神国の年中行事に特化した、注釈書を手にしている。


「……え?」


指が止まる。

王妃の視線は、ある一文に釘付けになった。


《――“姫初め”とは。新年最初に夫が妻を慈しみ、その一年、夫婦の情が乱れぬことを誓うための床の儀である》


さらに続く。


《公的な場で行うことに意味があり、それは“この女人は我が妻である”と世に示す行為でもある》


王妃の頬が、みるみる熱を帯びる。


思い出されるのは、昼間の光差す書庫、長椅子。

そして低い声――


(実践した方が、早いな)


「陛下……っ!」


王妃は書を閉じて、思わず顔を覆う。

魔王は完全に、その“意味”を理解していたのだ。



その夜。灯りの揺れる寝室。


「……陛下」


王妃は寝台の端から、小さく魔王に呼びかけた。


「極東の書を……読み直しました」


魔王は一瞬だけ視線を逸らし、短く言う。


「そうか」

「……ずるいです」


王妃の声は抗議のはずが、どこか――甘さを含んでいた。

魔王は何も言わずに王妃を抱き寄せ、額に口づけた。


「余は、嘘はついておらぬ」


その言葉に王妃は、目を閉じるしかなかった。

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