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同じ色を湛える

夜更けの王城。

寝室の暖炉は、まだ静かに息をしていた。


王妃は椅子に腰掛け、膝の上で丸くなった黒い子猫の背を撫でている。


子猫は魔王には懐いてはいない。

お互い、ただそこにいるだけの“存在”。


ふと王妃が呟いた。


「あら?この子……」


子猫が顔を上げる。

灯りの残り火を映して、瞳がわずかに光った。


そこには――紫銀。

王妃は、瞬きを忘れた。


「……陛下」


呼ばれた魔王は視線を向けて、気づいた。

王妃が――子猫の瞳を見つめていることに。


沈黙。


子猫は、すっと身を翻し床へ降りた。

王妃の膝を離れ、距離を取る。


「……同じ色ですね」


王妃はそっと言った。


「陛下の……瞳と」


魔王は答えない。

ただ一歩近づき、王妃の背に腕を回した。


「見るな」


低く、拗ねた声。


「お前の視線は――余のものだ」

「え……?」


王妃が振り向く前に抱き寄せられる。

子猫はいつの間にか、暖炉の影へ消えていた。


「猫だろうが、何だろうが」


魔王は唇を寄せ、王妃のやわらかな髪に埋める。


「お前の視線が向くものは――余の敵だ」


王妃は、くすりと息を漏らした。


「……困った方ですね」

「誇っている」


その背後、誰にも気づかれぬ場所で。

黒い子猫は紫銀の瞳を細め、静かに二人を見守っていた――

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