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王妃、風邪を引く ―料理長―

王妃が風邪を引いたその日。

王城の厨房は――異様な空気に包まれていた。


原因は明白だ。

魔王が、袖をまくって立っていた。


――あり得ない。


料理長はそう思いながらも口には出せず。

ただただ背筋を伸ばした。


「粥だ。胃に優しいものを」


低い声での命令だが、刃のような威圧はない。

その代わり、鍋を覗く眼差しは異様なほど真剣だった。


火加減。

水の量。

匙で混ぜる速度。


魔王としてではなく。

ただ一人の人間として。


誰かを想って、台所に立つ姿だった。


「……陛下」


思わず声をかけた料理長に、魔王は一瞬だけ視線を寄こす。


「味見をしろ。王妃が食べる」


それだけだった。


粥は、驚くほどやさしい味だった。

尖りも、無駄もない。


料理長は理解した。

この王城が今日、なぜ静まり返っているのかを。


王城は王妃のために止まり。

魔王はその中心で――鍋を見ている。


……敵わない。


料理長は深く頭を下げ、恭しく告げた。


「――完璧でございます、陛下」


魔王は、ほんのわずかに頷いただけだった。

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