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小さな強者からの告白

年末を前に、魔王の姉が息子たちを伴って王城に姿を現した。

夫である公爵は領地に残り、母子のみの滞在である。


謁見の間にて。

久しぶりに王妃を目にした瞬間、魔王の姉の長男ははっと息を呑んだ。


「……王妃陛下」


丁寧に一礼し、視線を上げる。その頬が、わずかに赤い。


「お会いできて……嬉しいです」


王妃はやわらかく微笑んだ。


「私もです。お元気そうで、何よりですね」


そのやり取りの隣で。

魔王の姉の二男は、王妃のドレスの裾をぎゅっと掴んでいた。


「おうひさま」


無邪気な声。


「ゆき、あそんでもいい?」


王妃は屈み、目線を合わせる。


「はい。もちろんです」


その様子を魔王は――無言で、見ていた。



王妃は甥たちが王城に滞在している間、よくともに過ごした。


庭園で雪に触れ、廊下で追いかけっこをし、書庫では絵本を開いた。

長男は少し距離を保ちながらも、王妃の隣を離れなかった。


ある日の午後、庭園のベンチで休んでいたとき。

長男が、意を決したように口を開いた。


「王妃陛下……」

「はい?」

「……僕、王妃陛下が、とても好きです」


王妃は驚いたが、すぐに微笑んだ。


「まあ。ありがとうございます」

「それで……」


少年は耳まで赤くして続ける。


「王妃さま、とお呼びしても……よろしいですか?」


一瞬の沈黙。

王妃は困ったように、けれど優しく答えた。


「もちろんです。ただし公の場では“王妃陛下”ですよ?」

「はい!」


その瞬間。

王城の空気が、わずかに震えた。


通りかかった魔王が、その様子を見ていたのだ――


別室で、紅茶を飲んでいた魔王の姉は即座に気づき。

一人楽しそうに口角を上げる。


「あらあら」



夜の寝室。

魔王はまるで閉じ込めるようにして、王妃を腕の中に抱いていた。


「……随分と、懐かれているな」


声は低い。


「陛下の、甥子さまたちですよ?」


王妃は苦笑いする。


「分かっている」


さらに腕が強まる。


「だが、余は気に入らぬ」

「陛下……?」

「“好きです”などと」


額に触れる。


「余の妻に、言う言葉ではない」

「まあ――お聞きになられていたんですか?」


王妃は魔王を見つめて。


「……小さな子にまで、そのようなお気持ちに?」

「当たり前だ」


魔王は即答する。


「年齢も、血縁も、関係ない」


王妃の肩に顔を埋める。


「お前を見る目が、増えることは許さぬ」


王妃は微笑みながら、そっと背に腕を回した。


「……大切に、され過ぎている気がします」


魔王は顔を上げ、無言で王妃の唇を奪った。



翌朝。

朝食の席で、長男と二男は王妃の両脇に座ろうとした。

しかし気づけば、王妃は魔王の隣に引き寄せられている。


「……叔父上?」


長男が首を傾げる。魔王は、平然と言う。


「王妃は、余の隣だ」


二男が、きゃっと笑う。


「おじうえ、やきもち?」


魔王の姉も声を上げて笑った。


「相っ変わらずねえ」


王妃は真っ赤になりながらも。

そっと見えないところで、魔王の袖を掴んだ。


年の瀬の王城は――嫉妬で大忙しだった。

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