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その手に触れるものは
午後。軍の訓練場。
若い騎士が転倒し、腕を負傷した。
たまたま見学で居合わせた王妃が、迷いなく駆け寄り手当てをした――
その翌日。
魔王直々に訓示が出された。
「全軍、訓練内容を変更する」
その内容は――
・基礎体力訓練→倍
・各武術近接訓練→倍
・集団戦術訓練→倍
・注意力不足者→追加鍛錬
・医療班→増設
将軍が小声で言う。
「……陛下、少々過剰では?」
魔王は一瞥した。
「王妃が動く事態が、すでに過剰だ」
その後、王城内ではこう囁かれた。
『怪我をしたら、命が果てるまで陛下にしごかれる』
王妃は後で聞いて、苦笑した。
「陛下……」
「余以外の男に触れるな」
「……治療ですよ?」
「分かっている」
分かっているが、やめる気はない。




