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王妃、子猫を拾う

冬の深まる日。

王城の裏山も、すっかり雪に覆われていた。

踏みしめるたび、きゅっと音がする。


先日の庭園での一件があったにも関わらず。

王妃は相変わらず、王都の雪深さに目を見張っていた。


そんなこともあり。

魔王は雪の止んだ日に裏山へ散策へ連れ出した。


「寒くはないか」

「はい。陛下がご一緒ですから」


王妃はやわらかく微笑む。その会話の直後だった。


「……あ」


王妃が足を止める。

雪の中――黒い影が、かすかに動いた。


「……猫、でしょうか」


近づくと、それは小さな子猫だった。

雪にまみれ、震えている。


王妃は迷わなかった。


「可哀想に……」


外套を広げ、そっと包む。魔王は、その一部始終を見ていた。


(……触るな)


とは、口に出さなかった。


王城へ戻る頃には、子猫は王妃の腕の中で眠っていた。


「飼っても――よろしいでしょうか」


王妃の決断は、早かった。


「この子……行き場がありませんでしょう?」


魔王は子猫を見た。


黒い毛。

小さい。

弱い。


(……敵だな)


翌日から、状況は明らかに変わった。



王妃は子猫に構っていた。膝に乗せ、撫で、話しかける。


「暖かいですね」

「よく眠る子ですね」


そのたび、魔王の視線が重くなる。


(――王妃の膝は)

(――王妃の腕は)



夜。寝室の暖炉の前。


王妃は椅子に座っていた。

その膝には黒い子猫。王妃に甘え、喉を鳴らしている。


魔王は正面に立った。


「……王妃」

「はい?」

「その猫」


子猫が、王妃の指にじゃれついた。


「可愛いでしょう?」


魔王の沈黙が、長くなる。


「……余より、か」

「え?」


王妃は、はっとして顔を上げた。

次の瞬間。


子猫はいつの間にか王妃の膝から消えていた。

そして、場所が入れ替わり。


魔王の膝に、いつも通り王妃が乗せられていた。


「……陛下!?」

「猫は、かごに入れた」


平然と言う。

魔王は、王妃の腰に腕を回した。


「お前が抱いていいのは――余だけだ」


王妃は顔が熱くなる。


「……あの、陛下……」


暖炉の火が揺れる。

少し離れた場所で、かごの中の子猫が鳴いた。

魔王は、ちらりとそちらを見る。


「……余の嫉妬を、甘く見るな」


王妃は何も言えなくなった。


――翌日。


子猫はかごから動いて、寝台の近く。

魔王の外套の上で眠っていた。


そしてその上には、薄い夜着も落ちていた――

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