7.死神と呼ばれるヒーラー
失ったものは多くあれど、得た物は非常に少ない。
そんな彼らが手を組んで、多くを得るため歩み出す。
島田の圧力に負けた私は、半ば強制的にパーティを組まされた。
とは言っても今回はお試しであり、正式に加入したわけではない。
これで本当に終わりだ。これが終わったら冒険者を辞める。
「いゃ〜悪いな!今回の依頼、どうしてもヒーラーが欲しくてな!」
島田が持ってきた依頼。それは城壁付近に出没したオーク三頭の討伐だった。
慣れた手つきで、仮拠点にテントを設営すると島田と夢華は、さっさと装備を整えて偵察に向かった。
一人テントに残された私は、退屈凌ぎに相棒の杖を磨いていた。
この杖は、幼馴染が買ってくれたものだ。
「一緒に冒険者になってのし上がろう」と約束した実の兄の様に親っていた大好きな人だった。
私はそんな大切な人を目の前で失った。
この杖を見るたびに、その時の光景を思い出す。
*
あの日は、雨が降っていた。
視界が悪く、足場も悪い。なのに魔物達はそれをものともせず攻撃してきて、仲間達が一人、また一人と倒されていった。
皆んなを助けようと必死に回復魔法を発動させたが、いくら傷を癒しても立ち上がる者は一人もなかった。
死者を甦らせる魔法はこの世に存在しない。
仲間達はすでに死んでいる。どんなに傷口を塞いでももはや意味がない。
私は、その事実を受け止められず、絶望してその場に膝をついた。
ああ、なんて私は無力なんだ。
ヒーラーなんて、大層な肩書を持ちながら私は何も出来ない。誰も救えない。
そんな私に魔物達が襲いかかる。
動けなくなった私を庇ったのは、幼馴染の彼だった。
彼は傷だらけになりながらも魔物と戦い続けて、最後の一体を倒したのと同時に力尽きて倒れ込んだ。
死なせたくない一心で再び回復魔を発動させた。
しかし、彼の傷は多く、深く、致命的で、どんなに頑張っても間に合なかった。
私の手の中で彼は、最後の最後まで苦しみながら息を引き取った。
*
杖を磨くたび、あの日のトラウマを思い出して、悲壮感に苛まれた。
私がもっとしっかりしていれば、助けられたかもしれない。
自分の役目も果たせない私に存在価値はない。
何のために生きているのかわからなくなってきた。
「…なんで生きてんだろ?」
そう、漏らしてしまった。
「死ぬにはまだ早いからだろ?」
「うわぁああああ!!?戻ってたんですか?!」
全く気づかないうちに島田と夢華が戻って来ていて、私を挟む形で左右に座っていた。
私は思わず跳ね上がって驚く。
「いつからいたんですか!」
「五分前だ」
「声くらいかけてくださいよ!」
「そんなことより、装備を整えろ。準備が整い次第、出発する」
二人は帽子を脱いで、ヘルメットを被り、バックパックを背負うとテントから出ていった。
私も慌てて荷物をまとめて二人を駆け足で追いかけた。
*
すでに陽は落ちて、辺りは暗く静まり返っていた。
音を出来るだけ立てない様に慎重にオーク達に近づいて、数メートル離れたところから敵上を確認した。
寝息を立てる二頭。
棍棒片手に周囲を警戒する一頭。
オークは視力が低い代わりに、鼻が効く。
夜間だからと言って油断すればあっという間に居場所がバレてしまうだろう。
夢華が指先に唾液をつけて、風向きを確認した。
「北から攻めた方が良さそうだね」
「了解。セリアはここで待機しててくれ」
「わかりました」
夢華はその場でライフルを構え、島田は北方向へ前進する。
島田が持ち場についたのを確認すると夢華は深く息を吐き出し、呼吸を止めて引き金を引いた。
発砲音が辺りに響いた瞬間、警戒していたオークがその場に倒れ込む。
目を覚まして立ちあがろうとする残り2頭のオーク達に今度は、島田が発砲した。
連続して発砲音が鳴り響き、その度オークが悲鳴を上げながら後ずさる。
暗くてよく見えないが、一方的な戦況なのは間違いない。奇襲は成功した。
「終わりだ」
戦意を喪失して、その場にうずくまったオーク達に島田は容赦なく手榴弾を投げつけた。
爆発音が鳴り響き、戦闘は終了。
あまりにもあっさりとクエストをクリアしてしまった。
読んでいただきありがとうございました。
本作は、日曜日の1000時の週一投稿で続けていこうと思います。
定期的に修正を加える予定ですが、大まかな内容は変更しません。
これからも彼らの旅は続くので、引き続き読んでいただけると嬉しいです。




