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「ハハハッ!あの姉ちゃんすごいね!」

「何者なんですか!あの執事さんは?!」


 イザベラは、自分が褒められたかのように誇らしげな表情を浮かべた。

 

「人類史に剣術を持ち込んだ。その実績から『始まりの剣豪』の二つ名を持つ我が最強の盾。それが『ハリン・グレース・リエル』だ!」

 

 一歩ずつゆっくりと確実に距離を詰めてくるハリンに対し、島田は何度も発砲した。

 連射したり、不規則なタイミングで撃ってみたが、その全てが弾かれてしまっている。

 ジリジリと距離を詰められて行き、あっという間に闘技場の隅にまで追い詰められてしまった。

 

「銃が上手いだけでは、お嬢様は守れない。わかったか?」

「そうだな。確かにその通りだ」

 

 島田は小銃を槍を持つように構え直した。射撃を捨てた島田の顔に鬼の形相が浮かび上がる。

 

「だったら大和魂を見せてやる!」

「悪足掻きだな」

 

 トドメを刺そうと剣を振り上げたハリンに対し、島田は自ら突進した。

 

「「は?」」

 

 離れた位置から攻撃できるのが銃の強みだと言うのに、島田は逆に自ら距離を詰めたのである。

 その場の皆が困惑していた。

 それは、相対するハリンも同じだった。

 

(なぜわざわざこちらの間合いに入って来たんだ?この男は一体何を狙っている?!)

 

 *

 

 「銃剣突撃」

 それは銃口に専用のナイフを取り付けて、敵陣へ突っ込むと言う最もシンプルな戦術である。

 17世紀にフランドル地方で考案されたその戦術の強みは、「心理的な威嚇」「射撃と近接戦闘の両立」であり、一度はヨーロッパ全体で普及した記録がある。

 この戦術は現代戦に置いても有効なのか?

 その答えは否。

 現代の進化した兵器、戦術に対し、銃剣はあまりにも無力である。

 しかし、それをあえて訓練し続ける組織が存在する。

 「日本国陸上自衛隊」である。

 主に新隊員教育隊で行われる敵陣への突撃訓練によって「戦闘員に必要な突撃精神」と「基礎的な戦闘技術」を養う事を目的として、今日まで行われている。

 島田の肉体にはそれが染み付いており、追い詰められた今、本能的にその「突撃精神」を発揮したのである。

 

 *

 

「突き技」標的に向かって獲物を真っ直ぐ突き出す攻撃。

 実にシンプルかつ強力であり、槍術をベースとした銃剣術との相性抜群の技である。

 

「ヤァアアアア!!」

 

 最短距離で突き出されたその銃口は、振り下ろされる剣とほぼ同じ速さだった。

 互いの得物が接触し、弾き合う。

 体制を立て直そうと後方へ下がるハリンに対して、島田はさらに追撃しようと距離を詰めた。

「仕切り直しなんてさせない。このまま攻め続けて仕留めてやる。」その一心で繰り出された突きだったが、その狙いは外れてしまった。

 喉を狙ったはずのその突きはハリンの頰を掠めただけで、有効打とはならず、ただ隙を晒しただけに終わった。

 当然その隙をハリンが見逃すはずもなく、彼女の持つ剣が島田の喉元を捉えた。

 

「そこまで!」

 

 その瞬間、イザベラが決闘を終了させた。

 見るからにハリンに群杯が上がる体制だ。

 ハリンの勝ち。これで『長袖』を雇えなくなった。

 そのはずなのにイザベラはまるで勝者のような笑みを浮かべながら、ハリンの顔を覗き込んだ。

 

「やられたな!」

「はい…私の負けです」

 

 一見、島田の負けに見える体制だったが、実際は違っていた。

 最後の突き技を外した瞬間、島田は腰のホルスターから拳銃を抜いて、ハリンに向けていたのである。

 もし、あのまま決闘を続行していれば、ハリンの刃が届くよりも先にゴム弾が発射されていたであろう。

 流石のハリンも攻撃と防御を同時には行えない。

 島田はその僅な弱点を突くため、あえて出鱈目な攻撃を繰り出し、反撃を誘ったのだ。

 剣を下ろすとハリンは深々と頭を下げた。

 

「非礼を詫びます。あなたは確かに強い」

「今回は運が良かっただけだ。もう一度やり合ったら間違いなく俺が負ける」

「戦場に二度目はありません」

「確かにそうだな…」

 

 ハリンは、頭を上げて手を差し出した。

 それを握り込んで上下に振る。

 熱い握手が先ほどまでの冷め切った空気を温めた。

 

「あなたのような強者が味方になるなら心強い。これからよろしくお願いします!」

「こちらこそだ。あんたが盾役なら矛役の俺達は背後を気にせず安心して戦える」

 

 堅牢な盾と切れ味抜群の矛を手に入れたイザベラは、これから行う計画を思い浮かべて、不敵な笑みを浮かべた。

 

「さぁ!忙しくなるぞ!早速作戦会議だ!」

 


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