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10.ドラゴンに挑む者達

 巨大な肉体、分厚い鱗、鋭い牙と爪、長い尻尾、その巨体を浮かせられるほど大きく発達した羽根。食物連鎖の頂点に立つドラゴンに今、人類が挑む。

 朝早くから集結した騎士と冒険者達が眠りについているドラゴンを囲んだ。

 まず最初に魔法使い達による攻撃魔法が炸裂した。

 雷、炎、岩、水、ありとあらゆる物質の弾幕がドラゴンに降り注ぐ。しかし、それは目覚ましでしかなかった。

 ほぼ無傷で起き上がったドラゴンに今度は、大量の矢の雨が降り注いだ。しかし、矢はドラゴンの肉体にすら届くことは無かった。

 ドラゴンの咆哮があたり一面に鳴り響き、矢は全て吹き飛ばされててしまったのである。

 その場にいる全員が思わず耳を塞いだ。

 最前列の騎士や冒険者に至ったては、耳から血を流しながら吹き飛ばされていた。

 咆哮一つで多くの被害が出てしまっている。それでも彼らは諦めていなかった。

 こちらには切り札がある。

 アイゼンの槍が命中すれば、勝てる。これは勝利のための犠牲だ。

 皆がそう思いながら、作戦を続行した。

 臨戦状態となったドラゴンを誘導すべく、動ける者達は馬にまたがり、森林を駆け抜ける。

 対し、ドラゴンはその巨大な翼で羽ばたくと逃走者の真上についた。

 馬が通れる道は最低限の広さが必要だ。

 しかし、それでは身を隠す木々が少なくなってしまう。上から見られれば一目瞭然だ。

 速度を求めたのが仇となり、一方的に攻撃される展開になってしまった。

 ドラゴンの口から放たれる炎の玉が、次々と騎士や冒険者を灰へと変えていく。

 あまりにも無慈悲であっけなく、作戦参加者の半分が死亡した。

 想定していた何倍もの犠牲者を出しながらも、ドラゴンを広い野原へ誘い込むことに成功した。

 ドラゴンはその巨体が故に長距離の飛行には向かない。

 森林を抜けたところで限界の飛行距離を迎えたドラゴンは地上へ降り立ち、それを待ち構えていたアイゼンと対面した。


「久しぶりだな!ドラゴン!その胸の傷、懐かしいぜ!」


 ドラゴンの胸にあるアザは、かつて駆け出しだった頃のアイゼンがつけたものだ。

 アイゼンは歓喜していた、一度、撃退したドラゴンとの再戦を。そして確信していた。自身の勝利を。

 アイゼンが放った槍は、まるで弾丸のように目にも止まらぬ速度でドラゴンの胸のアザに直撃した。

 遅れて、雷鳴の如き爆音が鳴り響く。

 この一撃がアイゼンにつけられた二つ名「雷神の一撃」の所以である。

 雷の如く強烈な一撃は今まで、多くの魔物を屠ってきた。

 アイゼンの槍はドラゴンの鱗を破壊し、筋肉を切り裂き、胸骨に到達。

 しかし、そこまでだった。

骨に到達した時点で、槍に込められたエネルギーが底をつき、停止してしまったのである。


「嘘だろ!?俺の槍が貫通しない?!」


 肉体とは、破壊されることで、より強固に再生していくものである。

 皮肉なことに、かつてアイゼンがつけた傷がドラゴンをより強固にさせたのだ。

 胸に刺さった槍を引き抜くとドラゴンは咆哮を上げた。

 こちらは最大火力の切り札を使ったというのに、ドラゴンは存命している。

 それは作戦の失敗を意味していた。

 戦意を損失したアイゼンに対し、ドラゴンは殺る気満々だった。


「クソったれが…」


 ドラゴンが吐き出した炎に対し、アイゼンは何も出来ず直撃。跡形もなく蒸発した。

 最強クラスの冒険者があっけなく死亡した事実にその場にいる全員が青ざめ、絶望した。

「終わった」と皆が諦めて、逃げ出そうとする中、一人の騎士だけは違った。

 「レイナ・アン・アビー」彼女は、剣を抜き、その刃をドラゴンへ向け走り出した。


「私が時間を稼ぎます。皆さんはお逃げください」

 

 *

 

 私の指示通り、前線の騎士と冒険者達は皆、一目散に逃げ出した。

 正しい判断だ。ただですら戦力差があると言うのにわざわざ負け戦に戦力を注ぎ込む訳にはいかない。

 ドラゴンを倒す為にも、彼らには、逃げ延びてもらわなければならない。

 むしろこの場に残られた方が困るぐらいだ。

 ドラゴンよりレイナが優っているのは素早さだけだ。だが、それで十分。圧倒的な速度を持って翻弄すれば良い。

 迫ってきた爪を直撃するギリギリで交わし、足元へすべりこむことに成功した。

 危なかったが、懐に入ればこちらのものだ。


「さて…今回は、どこまでやれますかね」

 

 *

 

 「鎧通し」と言う技が存在する。

 その名の通り、甲冑の隙間を狙う技である。

 硬い鱗を持つドラゴンにもこれは有効なのか?

 答えは否。

 あくまでもこの技は、関節などの大きな隙間を狙うものであって、竜の鱗の隙間を狙うなんて事は想定されていない。

 木刀では岩を切れないように、不可能な事は不可能である。

 しかし、この世には例外が存在する。

 二つ名「闇の天敵」を持つ女騎士「レイナ・アン・アビー」。

 彼女の生まれ持った才能と血の滲む鍛錬がそれを可能とした。

 

 *

 

 ドラゴンの尻尾を踏み台に高く跳び上がり、巨大な背中に向かって落下する。

 瞳を閉じ、思考を止め、深く息を吐いた。 

 そして、その巨大な背中と接触する瞬間に瞼を開き、極限まで高めた集中力を爆発させた。

 「闇の天敵」とは「光」を示す二つ名であり、それはレイナが剣が光速に到達した事を意味する。

 人類最速の剣士による無数の斬撃は、目にも止まらぬ早さで、正確に鱗と鱗の間を切り裂いた。

 レイナが地面に着地した瞬間、大量の血液と赤黒い鱗が、辺り一面に飛び散り、真っ赤な雨が辺りに降り注ぐ。

 愛刀の刀身を確認したレイナはため息をついた。


「やはり脆いですね」


 刀身にはヒビが入り、刃はギザギザになっている。

 これでは、もう使い物にならない。

 ボロボロになった刀身に血まみれになりながらもまだ戦意を失っていないドラゴンが映りこんだ。

 傷を多く与える事はできたが、その全てが浅かったようだ。


「グァアアアア!!」


 腕時計を見る。時計の針はちょうど1700時を指していた。


「定時なのに帰れそうにないですね」


 目の前に灼熱のブレスが迫る。

 熱風で髪が焦げてしまいそうだ。

 全くついていない。才能があったらからと言ってこんな仕事に就くんじゃなかった。

 毎日残業、残業、残業。挙げ句の果てには、こんな怪物と戦かわされている。

 こんなのあんまりだ。何のためにここまで必死に働いてきたのかわからないじゃないか。

 今更逃げ出しても間に合わないし、武器を失ったため戦えない。

 目の前まで迫った死を受け入れるしか選択肢はなく絶望的な状況。

 そんな戦局を覆したのは、たった一発の弾丸だった。


「下れ!巻き込んじまうぞ!」


 一発の弾丸がドラゴンの角に命中して弾けた。

 銃声が聞こえた方向へ目をやるとそこには、見たことのない巨大な火器を携えた「長袖パーティ」の姿があった。


読んでいただきありがとうございました。

本作は、日曜日の1000時の週一投稿で続けていこうと思います。

定期的に修正を加える予定ですが、大まかな内容は変更しません。

これからも彼らの旅は続くので、引き続き読んでいただけると嬉しいです。

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