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第4話:氷、魔物を倒して初めて進化する

「よし、リゼリア。まずはこの森を抜けるとするか」

「そうだね、森を抜けましょー」

「できれば、一度水を吸収したいな。どこかに川とかあればいいんだが……」

「コーリちゃん、すごく小さくなっちゃったもんね。たくさん食べてごめん」

「いやいや、気にすることはないよ」


 今の俺の身体は直径15cmくらい。

 たぶん、初期状態の直径30cmほどが現段階のMAXなんだろう。

《給水》のおかげで、とりあえず水を浴びれば身体は元に戻るはず……。

 そんなことを考えていたら、リゼリアが心配そうな表情を浮かべた。


「あのね、コーリちゃん。私、この森に来たばっかりで、どこに川があるかわからないけど大丈夫かな。森に降りたらすぐゴブリンがやってきて、逃げ回ってるうちにここに着いたの」

「……なるほど。まぁ、大丈夫だろう。川を探すには、いくつかポイントがあるんだ。まず、水は高いところから低いところに流れるから、水源は谷や窪地になっている場所にあることが多い。水辺の植物は他の場所より青々しいし、それもまた目印になる」

「ふむふむ」

「動物は水辺の近くに巣を作りやすい。きっと、魔物のゴブリンも同じはずだ。だから、一旦はゴブリンが来た方向に歩いてみよう」

「コーリちゃん、頭いいー!」


 リゼリアは目を輝かせて俺を見る。

 前世の数少ない趣味である、キャンプの知識と経験を多少なりとも活かすことができた。

 リゼリアは瞳を輝かせたまま俺を持ち上げ、元気よく拳を突き上げる。


「それじゃあ、川探し開始ー! コーリちゃん、冷たくて気持ちいいー!」


 ゴブリンが来たという方向に歩き出す。

 リゼリアは上機嫌で俺を抱えているがやはり体温は高く、じわじわと俺は溶ける。

 早く川が見つかってほしいな。

 森を進みがてら、俺は彼女に気になっていたことを尋ねた。


「リゼリアはいつも火魔法で魔物を倒してきたのか? 毎回、オーバーヒートしちゃうなんてすごく辛そうなんだが」

「もちろん、近接バトルで戦うこともあるよ。尻尾で叩いたりとかね。でも、ほとんど火魔法を使っちゃう。だって……」

「だって……?」


 不意に言葉を切ると、リゼリアは真顔で黙り込んだ。

 ……え? きゅ、急にどうした?

 なにかシリアスな理由があるの?

 リゼリアは国を追い出されたっていうくらいだから、もしかしたらかなり重いヤツかも。

 ……どうしよう、まだ心の準備が全然できてない。

 ごくりと、無い唾を飲み込んだとき。

 彼女は恍惚とした表情で告白した。


「火魔法ぶっ放すの気持ちいいんだよねぇ……」

「……そうか、よかったな」

「ねぇ、どうして生暖かい目で見るの? 本当に火魔法は気持ちいいんだから。それはもう、身体の芯から激しい情熱が迸って……あっ! ちょっと待って、コーリちゃん。なんか水のせせらぎみたいな音が聞こえるよ?」

「マジか。立ち止まってよく聞いてみよう」


 俺とリゼリアはピタリと止まり、耳を澄ませる。

 たしかに、どこからか水の流れるサラサラとした音が聞こえた。

 近くに川があるのだ!

 どこだ!? と思ったとき、リゼリアが左斜め前方を指した。


「コーリちゃん、あっちの方から聞こえる! 走るから落ちないようにね!」


 リゼリアは勢いよく駆け出し、瞬く間に木々が後ろに流れる。

 馬にでも乗っているかのような結構なスピードで、龍人族としての身体能力の高さが垣間見えた。

 走ること、およそ数分。

 念願の"あれ"に辿り着いた俺たちは、一緒に勝利の雄叫びを上げた。


「「せーのっ……川だー!」」


 幅は約5mほどで、小川という表現がぴったりなこじんまりとした川だ。

 日が差し込んでいるのに水の色は黒っぽく見えるから、水深は意外と深いのかも知れない。

 人間だった頃より水を見ると何段階も気持ちが落ち着くのは、俺が氷になったからだろう。

 心なしか涼しく感じられるのも、また大変にありがたい限り。

 リゼリアは喉が渇いているだろうに、先に俺を川の水につけてくれた。


「まずはコーリちゃんを回復させようね。はい、お水だよ」

「ありがとう、リゼリア。本当に嬉しいよ」


 川に触れると、みるみるうちに俺の身体は大きくなっていく。

 水を吸収しているのだ。


「どう、コーリちゃん。気持ちいい?」

「……生き返りゅぅ」

「ふにゃふにゃしてて可愛いね」


 リゼリアは笑うが、この心地よさはふにゃふにゃしてもしょうがない!

 渇いた喉に流し込まれるキンキンに冷えたハイボールの思わず唸ってしまう喉越しや、風呂上がりに飲む瓶のコーヒー牛乳の甘くも爽やかな風味、真夏の太陽の下で冷たいプールに飛び込んだような爽快感……。

 それらが全部一緒に訪れた感じ!

 身体は30cmくらいまで大きくなって、体力を確認すると満タンまで回復してた。

 よかったぁぁぁあ、これで一安心。


「ありがとう、リゼリア。もう大丈夫だ」

「コーリちゃんが元気になってよかった! じゃあ、私もお水飲もうかな。……ぐぼらっ、がぶるっ、ごばばばばっ!」


 リゼリアは川に顔を突っ込むと、すごい勢いで飲み始める。

 聞いたこともない効果音……。

 しばらく飲みまくると、彼女は心底満足げに寝っ転がった。


「ああ~、もう飲めない~。水でお腹いっぱいになっちゃった~」


 リゼリアが放り出したリュックには、水筒らしき革袋もくっついている。

 今はいいけど、水辺から離れて喉が渇いたらまた囓られそうな気がする……。

 あの痛みを思い出して身震いした俺は、彼女に助言する。


「水筒にもちゃんと水を入れておきなさいよ。八分目じゃなくて満杯までだぞ」

「はーい。コーリちゃんって、なんかお母さんみたいだね」


 そんなことを言いつつも、リゼリアは水筒に水を入れてくれた。

 ありがたし。

 一休みしてからまた歩きだそうなどと話していたとき。

 不意に、後方の木陰でガサッという葉の擦れる音が響いた。

 振り向くと、1mほどもある大きな狼が2匹いる。

 どちらも深緑色の毛皮に覆われ、黄色い目は鋭く俺たちを睨む。

 牙も爪も尖っており、野性的で狂暴なオーラを感じた。

 たちまち、リゼリアは俺を抱えて立ち上がった。


「コーリちゃん、ヤバいよっ! Dランクの森林ウルフが2匹も! おっかない!」

「森林ウルフ!? とりあえず、《鑑定》してみるから待ってくれ!」

「えっ、コーリちゃん、《鑑定》スキルなんか持ってるの!? すっごーい!」


 俺の脳裏にステータス画面が思い浮かぶ。



――――――

名前:なし

種族:森林ウルフ(主に、森や林の中に棲息する狼型の魔物。俊敏な動きと鋭い爪及び牙が武器。人を襲う)

性別:オス

レベル:5

ランク:D


体力:8/10

魔力:6/6

攻撃力:8

防御力:4

魔攻力:3

魔防力:2

素早さ:16


《種族スキル(種族に特有なもの)》

〇言語系

・森林ウルフ語(森林ウルフの言葉がわかる)

〇戦闘系

・駆け足(素早く走ることができる)


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》


《シークレットスキル(ある条件を満たすと解放されるもの)》


〔称号〕

――――――



 ぐぬぬ、結構強いじゃないか。

 もう1体も似たようなステータス。

 この前倒した蠅とは大違いだ。

 体力は2桁もあるし、攻撃力と素早さがとても高い。

 

「リゼリア、鑑定したところ、こいつらは攻撃力と素早さが高い。逆に防御関連は低い。だから、下手に動かずカウンターを狙おう!」

「《鑑定》は超激レアスキルなのに! どうやってゲットしたの!?」

「生まれたときから持ってたよ……って、そんなことより、今は目の前の敵だ!」

「そうだった、何とかしないと! どうしよ、まだ魔力が回復できてないよ~!」


 リゼリアはおろおろと頭を抱える。

 その間にも、森林ウルフたちは二手に分かれてじりじりと距離を詰めてくる。

 俺たちの後ろは川。

 おそらく、水深は意外と深いと思われる。

 この世界でも真水は重いはずだし、リゼリアが溺れたらまずい。

 俺だって川底で一生を過ごすのは嫌だ。

 この森林ウルフたちは《駆け足》という種族スキルを持っていた。

 魔力も満タンだったし、逃げてもすぐ追いつかれるかもしれない。

 だったら……。


「こいつらはここで倒そう! リゼリア、俺を使え! 硬いから武器として使えるはずだ!」

「たたた、たしかに! 困ったときのコーリちゃんだね!」


 リゼリアが俺を強く抱き締めた瞬間、右前方の森林ウルフが勢いよく駆け出した。

 不規則に左右に飛びながら走り、3mほど手前で大きくジャンプする。

 魔物だからか全身がバネのようにしなやかで、跳躍力がすごい。

 大きく開いた口からは鋭くて太い牙が何本も覗き、なかなかの迫力だ。


「うぉわあああああああああ!」


 と、リゼリアは叫びながらギリギリで横に動いて躱す。

 直後、躊躇なく俺を森林ウルフの頭に叩きつけた。


「どおおおおおおりゃああああああ!」

『グアアッ……!』


 ベキッ! という、骨が潰れたと思われる鈍い音が響く。

 森林ウルフは叫び声を上げフラフラと後ずさった後、ぐたりと崩れ落ちた。

 いくら魔物といえども、こんな大きな氷を思いっきり叩きつけられたら死に至るらしい。


「やった! 倒したよ、コーリちゃん!」

「さすがだ、リゼリア! でも、気をつけろ! もう1体いるぞ!」


 左前方にいた森林ウルフは、姿勢を低くしてこちらの様子を窺っている。

 仲間が倒されたためか、警戒心が強くなったようだ。


「できれば、ここで倒しておきたいな。ずっと追跡されたり、仲間を呼ばれると面倒だ」

「だねっ、コーリちゃんの言うとおり! 今度は私たちが先に攻撃するんだから!」


 リゼリアは俺を抱えたまま、力強く地面を蹴る。

 勢いそのままに空中で回転して、尻尾の強烈な殴打を喰らわせた。


「えいっ、<テイルスラッシュ>!」

『ガァッ!』

 

 森林ウルフが地面に倒れると、間髪入れず力の限り俺を振り下ろす。

 

「ぬぐぉああああああああああああ!」


 バキッ! と骨の潰れる嫌な音がして、もう1体の森林ウルフも力尽きた。

 喧噪が落ち着き森の静寂な雰囲気が舞い戻ると、リゼリアは満面の笑みで拳を突き上げた。


「ぃぃぃぃいやったー! 初めてDランクの魔物を倒せたよ! コーリちゃんのおかげだね、ありがとう!」

「あ、ああ、倒せてよかった」


 そして、俺も痛え。

 囓られたときほどじゃなかったものの、今回もまたなかなかに痛かった。

 たしかに叩きつけろとは言ったけど、もう少し手加減してくれてもいいんだよ?

 そんなことを思っていたら、ピロンッと頭の中にアラーム的な音が響いた。


〔進化が可能になりました〕


 えっ、ほんと!?

 急いでステータス確認しなきゃっ!



――――――

 名前:なし

 種族:氷

 性別:男

 レベル:5/5 ※進化が可能

 ランク:F

 体力:6/6

 魔力:4/4

 攻撃力:2

 防御力:6

 魔攻力:1

 魔防力:4

 素早さ:1


《種族スキル(種族に特有なもの)》

〇言語系

・氷語(氷と会話できる)

〇非戦闘系

・給水Lv.1(水を吸収して体力を回復できる)


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》

〇非戦闘系

・人間模倣(人間の行動を模倣できる)

・鑑定(魔物や物の鑑定ができる)


《シークレットスキル》

〇非戦闘系

・氷族進化(氷属性の他種族に進化できる)


〔称号〕

・転生者(種族スキルを継承できる)

――――――


 

 ふおおお……。

 とうとう、進化の瞬間が来ちゃぁ……。

 きっと、リゼリアと一緒に倒したから経験値が俺にも入ったのだ。

 

「コーリちゃん、森林ウルフの死体はどうしようか」

「ちょっと待ってくれ、リゼリア! 今の戦いで俺はレベルアップして、進化できるようになったらしい!」

「えええ! コーリちゃん、進化するの!? 見たい、見たい、見たい!」


 リゼリアは興奮して俺に詰め寄る。

 脳裏に浮かぶ進化先は3種類。

 どうやら、好きなものを選べるようだ。



○氷ゴブリン

・等級:Eランク

・説明:氷属性のゴブリン。体内で弱いながらも毒を作り出すことができ、油断は大敵。鈍器の扱いが得意。

・種族スキル:①氷ゴブリン語(氷ゴブリン系の言葉がわかる)

       ②毒生成Lv.1(毒を生成できる)

       ③鈍器使い(鈍器の習熟度が早い)


○氷コボルド

・等級:Eランク

・説明:氷属性のコボルド。嗅覚に優れ、匂いからある程度魔物の種類を判別することも可能。刃物の扱いに優れる。

・種族スキル:①氷コボルド語(氷コボルド系の言葉がわかる)

       ②嗅覚鋭敏(色んな匂いが嗅ぎ分けられる)

       ③刃物使い(刃物の習熟度が早い)


○氷スライム

・等級:Eランク

・説明:氷属性のスライム。宝石のように美しい見た目から、貴族に乱獲された経験もあり。とても珍しい氷魔法を習得可能。

・種族スキル:①氷スライム語(氷スライム系の言葉がわかる)

       ②氷魔法Lv.1(氷属性の魔法が使える)



 ほぅほぅほぅ、どれもなかなかに良い進化先だ。

 氷ゴブリンの《毒生成》は低いステータスを補ってくれるし、レベルアップすれば強い毒も作れるだろう。

 鈍器の扱いが得意というのもありがたい。

 森林ウルフとの戦いでも実感したが、丸腰はやっぱり危険だ。

 今後は、何かしらの武器も使えるようになりたい。


 氷コボルドだって、《嗅覚鋭敏》という便利なスキルを持つ。

 匂いで魔物の襲撃を察知できれば、少なくともこの森は安全に突破できるだろう。

 刃物の扱いも氷ゴブリンと同じように便利だ。


 そして、氷スライム!

 念願の魔法が使える!

 しかも、《氷魔法》なんてすごく素敵だ。

 美しい見た目というのも非常に興味を惹かれる。

 なんだかんだ今の氷の姿は気に入っており、似ている外見になったらそれはそれで嬉しい。

 

 そこまで考えたところでハッと気づいた。

 俺、めっちゃ考え込んじゃってる!

 今攻撃されたらヤバイぞ!

 慌てて周囲を見渡すと、口を開けたリゼリアの顔が飛び込んできた。


「コォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ…………リィィィィィィィィィィィィィィィィ……」


 なぜか、ぬる~っと滅茶苦茶ゆっくり動いている。

 いや、川の流れだったり木の葉の揺れもそうだ。

 どうやら、進化を考えているときは外の世界の時の流れは遅くなってくれるらしい。

 よかった、ゆっくり考えよう。


 さて、問題はこの先の進化をどうするかだ。

 スキルは〔転生者〕の称号で引き継げるから大丈夫として、種族選択はどうしよう。

 進化前の種族が少なからず影響すると仮定した場合、氷ゴブリンはゴブリン系やオーク系になるのだろうか。

 ……ヤダ。

 いや、ゴブリン諸氏やオーク諸氏には申し訳ないが、どうしても見た目に抵抗がある。

 思い出されるのは、リゼリアと初めて会ったときすでに亡骸と化していたゴブリン。

 彼らはマスコット的な可愛いヤツではなく、漫画やアニメで敵として出てくるような、なかなかに凶悪な姿だった。

 よって、氷ゴブリンはやめておこう。

 君たちを否定するわけではない。

 好みの問題なのだ。

 

 2つ目は氷コボルドか……。

 犬の魔物だから、なんとなくウルフ系に進化しそうな気がする。

 これもおそらく、先ほど倒した森林ウルフみたいな恐ろしい見た目と想像される。

 とはいえ、種族スキルは有用なので一旦保留にしておこう。

 

 最後は氷スライム。

 種族スキルの《氷魔法》はとても使い勝手がいいのでは?

 氷の塊を飛ばしたり壁を作ったりというイメージが浮かぶ。

 攻撃にも防御にも応用できるだろうし、何より俺も魔法を使ってみたい!

 今後、別種族に進化してもこのスキルは持っておいて損はないし、この中で一番可愛いであろう見た目も俺の背中を後押しした。


 よしっ、進化先は氷スライム!


 念じると、全身を白い光が包み込み俺の姿形が変わった。



――――――

 名前:コーリ

 種族:氷スライム

 性別:男

 レベル:1/10

 ランク:E

 体力:5/5

 魔力:7/7

 攻撃力:4

 防御力:4

 魔攻力:5

 魔防力:7

 素早さ:4


《種族スキル(種族に特有なもの)》

〇言語系

・氷語(氷と会話できる)

・氷スライム語(氷スライム系の言葉がわかる)※New!

〇戦闘系

・氷魔法Lv.1(氷属性の魔法が使える)※New!

〇非戦闘系

・給水Lv.1(水を吸収して体力を回復できる)


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》

〇非戦闘系

・人間模倣(人間の行動を模倣できる)

・鑑定(魔物や物の鑑定ができる)


《シークレットスキル》

〇非戦闘系

・氷族進化(氷属性の他種族に進化できる)


〔称号〕

・転生者(種族スキルを継承できる)

――――――



 川を覗き込むと、俺の新しい姿が映り込んだ。

 滑らかに丸みを帯びた、つるんとしたボディ。

 ……すげぇ、本当に氷でできたスライムだ。

 繊細なガラス細工みたいな感じ。

 進化したためか、ステータスも結構上がっていた!

 いくつかは下がっているものの、これはレベルが1に戻ったからだろう。

 つまり、進化する場所は安全性を重視した方がいいというわけか。

 ……などと考えていたら、リゼリアが満面の笑みで抱きついてきた。


「コーリちゃんがスライムになった! かわいいー! ナデナデしたくなっちゃうよー!」

「こ、こらっ、離れなさいっ、溶けちゃうからっ」

「ええ~、ナデナデしたいのに~」


 相変わらずリゼリアの体温は高く、抱かれただけでボディの表面がじんわりと溶ける。

 するりと腕から抜け、回避。


「さて、森林ウルフの死体は回収しておきたいな。もしかしたら、街とかで換金できるかもしれないし」

「コーリちゃんにさんせーい! でも、運ぶ間に腐ったらどうしよう。焼いとく?」

「大丈夫。俺にちょうどいい魔法がある」


《氷魔法》スキルを手に入れた瞬間、頭の中に使える魔法のイメージが浮かび上がったのだ。

 魔力を集中させ、Lv.1の氷魔法を発動!


「《氷結》!」

「コーリちゃん、すごーい!」


 一瞬のうちに、森林ウルフの死体は2体とも氷漬けになった。

 じわじわと胸に喜びがあふれる。

 すげえ……魔法が……魔法が使えた!

 漫画やアニメ、小説を見るたびに、ずっと憧れていた魔法が使えた!

 充実感と達成感が半端ない。

 これからレベルも上がれば、もっと色んな魔法が使えるのだろう。

 ああ、早くたくさんの魔法を使いたい。

 俺が感動に震える中、リゼリアは「よっこいしょ」と森林ウルフの氷漬けを持ち上げた。


「じゃあ、私が運ぶよ。コーリちゃんは凍らせてくれたから休んで」

「ありがとう、リゼリア」

「う~ん……冷たくて気持ちいいけど、コーリちゃんほどじゃないね」


 森林ウルフの氷漬けを抱えたリゼリアは、少しばかり不満げに話す。

 何はともあれ、進化できてよかった。

 俺たちは旅を再開し、無事に森を抜け、いよいよ街が見えてきた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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