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第37話:氷ゴーレム、王女様を助ける

 力なく横たわっているので死体ではないかと一瞬焦ったが、ゆっくりとした呼吸が確認できた。

 ジル所長や研究員に見つからないよう、分体の俺は素早く状況を把握する。

 オーロラ様の身体に紫色の模様はまったく浮かんでおらず、彼女の表情は穏やかだ。

 額に汗したり頬が赤らんだ様子もないので、ただ寝ているだけだと推測できた。

 研究所の分体が見た光景は、リアルタイムで国王陛下の部屋にいる分体にも共有される。


「国王陛下、俺の分体がオーロラ様を見つけました! 研究所の奥にある部屋に、ジル所長や研究員とともにいます! 理由はわかりませんが寝ているようです!」

「コーリ殿、よくやったぞ! よくオーロラを見つけてくれた! 皆の者、研究所に急げ! コーリ殿は我が輩の肩に乗って、引き続き情報を教えてくれ!」


 医術師も薬師も騎士たちも、大変な慌ただしさで外に出た。

 トカゲ型の俺は走る国王陛下の肩に乗せてもらい、「オーロラ様を救出できないか試してみます」と話す。


「頼む、コーリ殿! 今や貴殿だけが頼りだ! だが、決して無理はしないでくれ! 救出が厳しければ、騎士たちの到着を待つのだ!」

「わかりました! 絶対に無理はしません!」


 国王陛下と話す間も、研究所の分体はしっかりと中の様子を見張っていた。

 状況は先ほどと変わらず、横たわるオーロラ様とジル所長、研究員が同じ位置にいる。

 今すぐにでも助け出したいが、まずは周辺の分体を研究所に集めて身体の大きさを確保しよう。

 みんな、研究所に来い!

 同時進行で、監獄にいる俺の本体はリゼリアに情報を共有する。


「というわけで、みんなで研究所に向かっている」

「宮殿の人たちが探しても見つからなかった王女様を見つけるなんて、コーリちゃんお見事だよ! でも、ここから出してもらうのを待ってたら間に合わないかも! もう無罪で決まりなんだから、壁を壊してもきっと大丈夫だよね!? コーリちゃん、ちょっとどいてて……《焔華》!」


 リゼリアが巨大な薔薇を思わせる炎の花を壁に当てると、たちまち溶解させてしまった。

 監獄は破られ、外に通じる道ができた。

 結構大きな穴ができてしまったが、緊急事態につき大目に見てもらいたい。

 俺とリゼリアは特別牢獄棟を脱出。

 警鐘が鳴り響く中走りながら分体を回収し、モンセラートにも連絡を飛ばす。


 一方、研究所の分体。

 ほとんどの分体が集結し、俺は物陰に隠れながらだいぶ大きくなった。

 本体である氷ゴーレムの1/4くらいのサイズ。

 静寂に包まれる室内で、ジル所長はぶつぶつと何やら呟く。


「いよいよ、我らが日の目を見るときが訪れた。永遠に続くかと思われた日陰暮らしも今日で終わりなのだ」


 彼の呟きに頷く研究員たち。

 注意深く様子を窺う俺は、ふと気になることが思い浮かんだ。


 ところで、スタニック閣下はどこにいるんだ?

 

 "研究所で国王陛下の病気を治す薬の開発中"という話だったが、姿が見えない。

 もう宮殿に移動したのだろうか?

 敷地に散らばった分体はどれも姿を確認していていないが……と、そこまで考えたとき、ジル所長が懐からナイフを取り出した。

 国王陛下から「無理はするな」と言われている。

 だが、救出のチャンスを逃すのが一番ダメだ。


 俺は"準備"が完了したのを確認し、近くにあった木箱をわざと床に落とした。


「「何者だ!」」


 ジル所長たちがこちらを向いた一瞬の隙を狙い、台の真上の天井に張り付いていた大きなクモ型分体がジャンプ。

 すかさず空中で鷲に姿を変え、オーロラ様を救い出した。

 氷ゴーレム型の分体と合流し、同時にぶつかって扉をぶち破る。

 出口に走る俺たちの背中にジル所長の叫び声が轟いた。


「コーリだ! オーロラ様が奪われたぞ! ただちに取り返せ!」


 後方を確認すると、走り出した研究員たちがドカドカッと倒れ込む光景が見えた。


「な、なんだ、これ! 地面が凍っているぞ!」

「ちくしょう、コーリのせいだ!」

「壁を伝って歩け! ……おい、どけよ! 邪魔だ!」


 分体の一部を平面上にして床に貼り付けておいたので、作戦通り足を滑らせて転んだのだ。

 俺は氷なので氷上を走っても問題ないから、一気に差を広げる。


 鷲型の分体と一緒に通路を駆け抜け、研究所を脱出できた。

 本体の居場所はわかるので、最短距離で森を駆け抜ける。

 森を出るや否や国王陛下、本体、リゼリアの一団と合流した。

 オーロラ様を丁寧に地面に置くと、国王陛下が真っ先に抱きつく。

 俺は合体して1つの俺に戻る。


「オーロラ、起きてくれ! 助けに来たぞ! 目が覚めん……目が覚めんぞ!」

「俺の氷で目覚めさせます……《回復氷》! リゼリア、溶かしてくれ!」

「了解! 《火の粉》!」


 リゼリアに《回復氷》を渡すと溶かしてくれ、水となったそれはオーロラ様の唇にそっと注がれる。

 じんわりと幾分か吸収されるや否や、オーロラ様はゆっくりと目を開いた。


「……ん。お父様……? 私、どうして……」

「ああ、よかった! 目が覚めたのだな!? コーリ殿が助け出してくれたのだぞ!」


 国王陛下はオーロラ様を壊れそうなほど強く抱き締める。

 熱い涙が零れる様子からも、どれだけ娘を心配していたかが痛いほど伝わってきた。

 張り詰めた空気は和らぎ、周囲の騎士たちも歓声を上げる。

 

「オーロラ様が目覚めた! コーリ殿のおかげだ!」

「コーリ殿、あなたがいなかったら王国は大変な混乱に陥っていました!」

「本当にありがとうございます! さすが、Aランク冒険者ですね!」


 分体が呼んだモンセラートと彼女の部下も合流し、俺を讃えてくれた。


「コーリ、リゼリア! 私はお前たちが無実だと信じていた! 国王陛下を救い、オーロラサ様まで探し出すとは見事だ! よくやってくれたとしか言いようがない!」

「やっぱり、コーリちゃんが一番だね! コーリちゃん、大活躍!」


 リゼリアが俺に抱き着き歓声が響く中、森からジル所長と研究員たちが現れる。

 オーロラ様が目覚めた様子を確認すると、明らかに驚きの表情を浮かべた。

 すかさず、国王陛下が厳しい声で責める。


「ジル! これはどういうことだ! 研究所で何をやっていた! 皆の者、其奴を捕まえろ!」


 国王陛下が命じて、騎士たちがジル所長一同を捕らえる。

 日頃から厳しい訓練を積んでいるからか、素早い動きで一人も逃さなかった。

 俺たちの前まで連行されていたジル所長は、初対面の強気な姿勢が嘘のように弱々しく呟く。


「宰相閣下は……宰相閣下はどこですか……」

「知らん! 研究所で薬の開発に当たっていると聞いた! 貴様らこそ、所在を知っているはずであろう! 我が輩が毒を盛られた件にオーロラ誘拐の件、貴様らは宮殿に連行して詳しい話を聞く必要があるな。スタニックも急いで探せ!」


 あとは取り調べを行うだけだと、雰囲気が落ち着いたとき。

 研究所ではなく、宮殿の方からスタニック閣下が現れた。

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