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第31話:氷ミミック、フォース進化する

 進化できることをリゼリアやモンセラートに伝えると大変興奮し、ぜひ進化してくれと頼まれた。

 喰尽スライムの死体を収納して、一旦移動する。

 地盤が硬く見晴らしのよい場所に来た俺は、みんなに告げる。


「じゃあ、進化するね」

「「わくわく!」」


 リゼリアもモンセラートも騎士たちも、とても楽しみな様子。

 カッコいい種族になれるといいな。

 進化先を提示!

 ……するのだが、今回も時の流れは……。


「コォォォォォォォォォォ……リィィィィィィィィィ……」


 よし、大丈夫。

 しっかり検討して、一番良い進化先を選ぼう。



○氷ミステリーボックス

・等級:ランクA

・説明:氷属性のミステリーボックス。中に何が入っているか、まったくわからない宝箱。開けてみてからのお楽しみ。箱なので動きは遅い。

・種族スキル:①氷ミステリーボックス語(氷ミステリーボックスの言葉がわかる)

       ②収納(物を亜空間に収納できる。亜空間に上限はなく、時の流れも止まる)

       ③びっくり箱(魔力を全消費して使える、ランダムな魔法を発動する)


○氷ガーゴイル

・等級:B+ランク

・説明:氷属性のガーゴイル。飛翔速度が速く、爪による近接攻撃と魔光線による遠距離攻撃が得意。

・種族スキル:①氷ガーゴイル語(氷ガーゴイルの言葉がわかる)

       ②飛翔(素早く飛ぶことができる)

       ③魔光線Lv.2(口から魔力を圧縮した光線を放つ)

       ④爪撃(爪に魔力を集めることで、鋭さと衝撃を強める)


○氷ゴーレム

・等級:ランクA

・説明:氷属性のゴーレム。人型を呈しており、全長はおよそ2m手前くらい。透き通った身体は美しいクリスタル調。

・種族スキル:①氷ゴーレム語(氷ゴーレムの言葉がわかる)

       ②攻防上昇(攻撃力と防御力を1.5倍に上昇させる)

       ③分体生成(分体を生成できる)



 ……ふむ、ミミックの余韻が少なからず残るような進化先が並ぶ。

 まずは、氷ミステリーボックス。

 ゲームや漫画ではあまり聞き馴染みのない名前だが、不思議な魔物もいるんだな。

 形態としては、ミミックの宝箱状態と大差ないと思われる。

 謎の中身も開ける側だったら楽しいものの、俺自身がなるとしたらちょっと微妙なところ。 変な物が入っていても困るし、ここは安心できる種族を選びたい。

 だとするとスキルの内容での判断になってくるが……。

《収納》はもう持っているから不要として、新しいスキルは《びっくり箱》か。

 こういう能力はハマれば強いかもしれないが、逆に自滅する可能性もある。

 少々ランダム要素が強すぎると判断。

 ミミックの姿から大して変わらないのもつまらないし、こいつは却下にしよう。


 次の進化先は、氷ガーゴイル。

 空飛ぶ悪魔の石像みたいなイメージだろうか。

 形態としては、なかなか悪くはないのでは?

《飛翔》は氷メガビートルのときと同じで《浮遊》と被るものの、《爪撃》と《魔光線》は結構強そう。

 これまで、俺は魔法攻撃をメインとして戦ってきた。

 今回倒した喰尽スライムもそうだが、魔法が効かないヤツと戦ったときは詰んでしまう可能性もある。

 魔法だけじゃなく、そろそろ物理の攻撃方法も欲しいところだ。

《魔光線》もなんだかカッコいいし、候補として保留しておく。


 最後は……氷ゴーレム!

 とうとう、ゴーレムきちゃぁ!

《攻防上昇》はステータスの上昇値も高いし、シンプルで使いやすい。

 発動に困る場面も少ないだろう。

 そして、ここでまさかの《分体》スキル。

 喰尽スライムでその強さと厄介さは体感したので、ぜひとも習得させていただきたい。

 スキルの有能さだけでなく、何よりも何よりも"人型"という言葉に大変心惹かれる。

 スライムやクラゲ、ミミックとはやっぱり違うよ!

 人間みたいに動けるのは最高だし、殴ったり蹴ったりと物理攻撃もできる。

 クリスタル調の身体だってどれくらい美しいのか楽しみだ。

 よって、進化先は氷ゴーレム一択!

 念じると俺の身体が白く光り、姿形が変わっていく。

 あっという間に、念願の人型となった。

 ステータスもチェックしてみよう。



――――――

 名前:コーリ

 種族:氷ゴーレム

 性別:男

 レベル:1/70

 ランク:A

 体力:420/420

 魔力:454/454

 攻撃力:529

 防御力:570

 魔攻力:477

 魔防力:532

 素早さ:300


《種族スキル(種族に特有なもの)》

・氷語(氷の言葉がわかる)

・氷スライム語(氷スライムの言葉がわかる)

・給水Lv.3(水蒸気を吸収して体力を回復できる)※LEVEL UP

・氷魔法Lv.5(氷属性の魔法が使える)※LEVEL UP

・氷クラゲ語(氷クラゲの言葉がわかる)

・回復氷生成Lv.5(回復効果のある氷を生み出すことができる)※LEVEL UP

・浮遊(宙に浮かび、移動することができる)

・氷ミミック語(氷ミミックの言葉がわかる)

・収納(物を亜空間に収納できる。亜空間は上限はなく、時の流れも止まる)

・硬化Lv.4(一時的に、防御力と魔防力を1.5倍にする)※LEVEL UP

・氷ゴーレム語※NEW!

・攻防上昇(攻撃力と防御力を1.5倍に上昇させる)※NEW!

・分体生成(分体を生成できる)※NEW!


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》

・人間模倣(人間の行動を模倣できる)

・鑑定(魔物や物の鑑定ができる)

・手練れの旅人(移動による体力の消費量が0.5倍になる。様々な場所を旅してきたので習得)※NEW!


《シークレットスキル》

・氷族進化(氷属性の他種族に進化できる)

・巨大化(身体を巨大にすることができる)

・造型師(自分が生み出す物の形を自由に変えられる。氷族進化するたび、造型にもこだわってきたので習得)※NEW!


〔称号〕

・転生者(種族スキルを継承できる)

・守り神(自分を含めた味方の防御力・魔防力を1.5倍に上昇させる)

・将来有望な学徒(経験値が多く貰える。レベルアップや進化したとき、ステータスが上昇しやすい)

・原石光る騎士(剣による攻撃の威力が1.5倍になる)※NEW!

・主殺し(主と戦うとき、全能力値が1.2倍に上昇する)※NEW!

――――――



 つつつ、強いっ!

 かなりステータスが上がったのだが!?

 レベル1なのに、レベル42だった喰尽スライムに匹敵する。

 懸念点だった素早さも相当上昇しており、そこら辺の魔物には負けないだろう。

 種族スキルの《給水》Lv.3はありがたい!

 水蒸気を吸収して回復ってことは、寝ている間も体力が減らずに済むじゃないか。 

 ユニークスキルは《手練れの旅人》が増えた。

 移動の体力が減らないのは普通に便利だし、日頃の頑張りが報われている気分でとても嬉しい。

 新入りのシークレットスキルは《造型師》。

 今まで進化するとき、たしかに形にはこだわってきた。

 そんなことまで影響するなんて、異世界って面白い。

 称号の〔主殺し〕はカッコいい上に強力だ。

 今後、どれくらいの主と戦うかはまだわからないが、持っていて損はないはず。

 そして、謎の〔原石光る騎士〕。

 剣なんて使っていないのになぜ……そうか、モンセラートたちからの期待が大きすぎるからだ。

 いやはや、今後剣で戦うときに有効活用させていただこう。

 何はともあれ、氷ゴーレムのボディはクリスタル調で予想以上に綺麗だ。

 頑張ってよかった……と思っていたら、リゼリアが俺の足にしがみついて大喜びする。


「コーリちゃんが氷人間になったー、カッコいいー! 絶対強いヤツじゃん! コーリちゃんが大きくなって、私とっても嬉しいの!」

「ありがとう、俺も嬉しいよ」


 なんと言っても、念願の人型。

 魔物ではあるが、もうほぼ人間と言っていいだろう。

 よっぽど嬉しかったのか、リゼリアは俺の足下で嬉しそうに跳ねる。

 俺はずっと見上げたり抱きかかえられたりする側だったのに、逆になるとは不思議な気分だ。

 喜びの声が響く中、ふと別の小さな声が聞こえた。 


「コ、コーリ……」


 なぜか、モンセラートは他の騎士たちと一緒になって小刻みに震えている。

 とても真剣な顔。

 ……どうした? と思う間もなく、彼女は血走った目で俺の胴体を摑んだ。

 

「人型に進化したということは、騎士になりたいということだな!? 我らは歓迎するぞ! 一緒に騎士道を突き進もう!」

「え、えええ――っ!?」


 他の騎士たちも乗っかり、次々と俺にしがみつく。

 

「「騎士、騎士、騎士! 騎士、騎士、騎士!」」


 生まれて初めて聞くコールが鳴り響くと、リゼリアが庇うように俺と騎士の間に入った。


「待って! 騎士になるなんてダメだよ! コーリちゃんは私と一緒に旅するんだから! みんなちょっと離れてーっ!」



 □□□



 騒ぎが沈静化すると、モンセラートは恥ずかしそうに咳払いした。


「……こほんっ、失礼。少々興奮してしまった。まさか、コーリが人型に進化するとは考えもしなくてな。さて、我々はだいぶ大湿原の出口に近づいてきた。たしか、コーリとリゼリアは北を目指していると聞いたが、その目的は変わっていないか?」

「ああ、変わらず北――もっというと大氷原が目的地だ」

「早く涼しいところにいきたいね、コーリちゃん」


 俺たちの話を聞いたモンセラートは納得したように頷き、討伐部隊の今後の予定を話す。


「この辺りで、我々は一度王都に帰還しようと考えている。主の討伐を宮殿に報告したいし、種々の死体も詳しく調査する必要があるからだ。異常魔物についてはまだ不明な点が多い。正式な書類を製作し、きちんとした手続きで研究所に引き渡さねばならないのだ。……そこで、コーリとリゼリアに提案がある。我々と一緒に王都に来ないか?」

「ぜひ、頼むよ。王都は通り道だから」

「この国の王様がいる場所でしょ? 行ってみたーい!」


 俺もリゼリアも王都同行に賛同した。

 エイルヴァーン大湿原を抜けると、王都ルミナリエがある。

 王都からは北の国境に向かって街道が伸びているので、実質ノヴァリス王国における最後の大きな訪問地になりそうだ。

 俺たちの反応を見て、モンセラートは嬉しそうに言葉を続ける。


「王都では、国王陛下にコーリたちの活躍も話さねばなるまい。きっと、国王陛下も喜ぶぞ。国境を超える許可も快く出してくれるはずだ」

「ありがとう、嬉しいよ。でも、国王陛下ってそんな簡単に話せる相手じゃなくないか? 騎士のモンセラートはまだしも、俺は単なる冒険者だし魔物だし」

「心配するな。私が間を取り持とう。私は公爵令嬢だから、国王陛下と直接お話しすることもできるんだ。まぁ、さすがに雑談はできないが」

「「……えっ!? 公爵令嬢!?」」


 モンセラートの言葉に、俺もリゼリアも衝撃を受ける。

 アニメや漫画の知識では、公爵は貴族の中で一番上の階級だった。

 彼女はたしかに品があるけど、まさかそんな偉い女性だとは思わなかった。

 唖然とする俺とリゼリアに、モンセラートは不思議そうな表情を浮かべる。


「ん? 公爵令嬢だと言っていなかったか?」

「「聞いてない!」」


 ということで、王都に行く話はまとまった。

 残りの異常魔物の討伐については、部隊の何割かをここに残すそうだ。

 俺たちが王都に行くと入れ替わりで、体力も装備も万全とした援軍を大湿原に向かわせるとのこと。

 ノヴァリス王国で最も栄える街――王都ルミナリエ、いったいどんな場所だろうか。

 期待に胸を踊らせ、俺は自分の足で大地を踏み締める。

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