第20話:氷クラゲ、洞窟の主を倒す
突然出現した魔物を見て、孤島には緊張感が走る。
蛇魔物はかなり大型で、水面から出ている部分だけでも10m近くはあった。
アニカさんは両手で頭を抱え、うがぁーっと天井を見上げる。
「ヤッバ、出ちゃったよ! マジこいつの水魔法のせいで、あーしらは孤立したんよ! 鉱石を掘ってたらね? いきなり地底湖からバッシャーンきて、ちょっ待っ!って感じで、辺り一面水浸し。ありえんてマジでさ!」
委員長な雰囲気なのに言動はギャルっぽいので、何だかとてもちぐはぐな印象を受けてしまう。
何はともあれ、彼女たちを避難させなければ。
「俺が惹きつけるから、その間にみんなは避難して! リゼリアはアニカたちの誘導と護衛を頼む! 俺は宙を飛べるから大丈夫だ!」
「わかった! コーリちゃん、無茶しないでね! 避難したら私も遠距離攻撃で援護するから! ……マリステラ、何やってるの! 早く逃げるよ!」
「待ってくれ、リゼリア君。この魔物は水蛇にしては大きすぎる。顔の斑点模様も見たことがない。病気の個体だろうか……?」
「なにブツブツ言ってるの! 逃げるよ!」
リゼリアがマリステラさんを掴んで走り出し、アニカさんたち行商人グループが続く。 水蛇が噛みつこうとしたので、すかさず《氷弾》をぶつけて注意を逸らした。
「お前の相手はこの俺だ! こっちに集中しろ!」
『……キシャアアアッ!』
水蛇は血走った目を見開くと、何発もの巨大な水弾を放ってきた。
壁や天井に当たって崩落すると危険なので、水面スレスレを飛んで回避する。
よし、まずは《鑑定》だ。
攻撃を避けながら鑑定すると、今までとはまったく違う魔物だと明らかになった。
――――――
名前:サンプル42
種族:水蛇(変異種)
性別:メス
レベル:21/40
ランク:B-
体力:25/78
魔力:76/93
攻撃力:81
防御力:90
魔攻力:97
魔防力:89
素早さ:75
《種族スキル(種族に特有なもの)》
・水魔法Lv.4(水属性の魔法が使える)
・脱皮(脱皮するたびに状態異常を無効化する)
・体温感知(体温を感知することができる)
《ユニークスキル(個体に特有なもの)》
・永続巨大化(常に身体が巨大化する)
・凶暴化(知能が落ちる代わりに、全てのステータスが1.2倍に上昇する)
・短命(常にHPが減り続ける)
《シークレットスキル》
〔称号〕
・優秀な実験個体
――――――
名前がサンプル42?
そして、この《ユニークスキル》と〔称号〕はなんだ?
今まで結構な数の魔物を倒してきたが、こんなステータスを持った魔物を見たことは一度もない。
何より、水蛇の顔に浮かぶ紫色の斑点模様から想起されるのは……ネリファ村の病気だった。
脳裏にイオニスたち"黒葬の翼"の存在がチラつく。
魔物の名前や称号もそうだし、まだ確定してはいないが、何かしら関係しているのではないか?
ここは中途半端に攻撃して逃がすより、しっかり倒してマリステラさんなどに死体を調べてもらうべきだろう。
洞窟という立地を考えると、崩落を避けるため、俺自身の巨大化は避けた方がいい気がする。
「《氷結烈波》!」
水蛇の周囲の水面を分厚く凍らせ、動きを止める。
リゼリアたちはもう岩場に退避できたようで、俺と水蛇の戦いを注意深く見守っていた。
解剖して調べてもらうなら、死体の損傷は少ない方がいい。
それなら……。
「《氷伝い》!」
凍らせた水面から、じわじわと水蛇を凍結させる。
三十秒も経たぬうちに全身を氷で覆い、無傷で凍死させることができた。
一安心したところで、ピロンッと軽いアラーム音が頭に鳴る。
〔進化が可能になりました〕
進化きちゃぁ……。
一番のお楽しみはじっくり考えたいし、街に戻ってからにしよう。
岩場に向かうと、リゼリアたちが笑顔で迎えてくれる。
「やっぱり、コーリちゃんが一番強いね! あんなにおっきな蛇を氷漬けにしちゃうなんて、コーリちゃんにしかできないよ!」
「素晴らしい活躍ぶりだ、コーリ君! これほど優秀な魔法の使い手は、ボクの大学にもいない! 君がボクの生徒だったらどれだけよかったことか! というか、今からでもボクの生徒になってくれ! そうだ、それがいい!」
「コーリッち、マジヤバいね! あーしらはとりま静かにするしかできなかったんよ! 倒すなんて100パー無理! そんな激ヤバ魔物倒すとか、コーリっち超激ヤバでマジすごい!」
みんなの歓声が洞窟に反響する。
一人も怪我人がいなくてよかった。
リゼリアとアニカが先ほどのバトルを振り返る中、俺はマリステラさんに小声で話す。
「マリステラさん、ちょっとお話ししたいことが……」
《鑑定》スキルで得た情報とネリファ村での一件を伝えると、マリステラさんは厳しい評定で思案する。
「……なるほど。"黒葬の翼"についてはボクも聞いたことがあるよ。コーリ君の言うとおり、この水蛇も大学で調査を進めた方がいいね。街に戻ったら、早急に手配を進めよう」
俺たちは救助した行商人グループを連れ、アストラ=メーアのギルドに戻る。
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