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第2話:氷、初めてレベルアップする

 いったい、何が起きたのだ。

 特大の雹に当たって死んだら氷になっていた……?

 ……えっ、俺本当に氷になったの?

 再度意識を全身に向けるが、やっぱり氷だった

 焦燥感がヤバい一方で、実感することもある。



 俺は、氷が好きだ。

 透明でキラキラしてて綺麗だし、冷たくて気持ちいい。

 徐々に溶けて消えていってしまう儚さもまた美しいし、綺麗な氷を入れればどんな飲み物もコップも一瞬でおしゃれになる。

 アイスボールを自分で作り、家でバー気分を味わったことは一度や二度じゃない。

 正直なところ、氷の美しさと儚さに憧れていた…………でも、氷に転生するのは違くない!?

 さすがにハードモードすぎるでしょ!

 これ、溶けたら死んじゃうよね!?

 

 しばし混乱した俺だが、どうにかして心を整える。

 ……落ち着け、一旦落ち着け、俺。

 パニックになるのが一番まずいだろう。

 冷静に氷になった事実を認めなさい。

 ほぅっとため息を吐いた気分になると、幾分か気持ちが落ち着いた。

 ……よし、まずは状況確認だ。


 改めて周りの地面を見たら、たくさんの氷が落ちていることに気がついた。

 俺より小さかったり、はたまた大きかったり大小様々だ。

 真上の空は分厚くモコモコとした灰色の雲が覆う。

 詳しい理由は不明だが、どうやら俺は雹の一部として落下したらしい。

 

 何にせよ、願ってもない二度目の人生……いや、氷生だ。

 前世では仕事ばかりの人生だったから思う存分楽しもう。

 さて、異世界転生と言えば"あれ"だが、いけるか? …………ステータスオープン!

 念じると意識の中に一覧表が出てきて、俺は感動で震えてしまった。



――――――

 名前:なし

 種族:【氷】

 性別:男

 レベル:1

 ランク:F

 体力:3/4

 魔力:3/3

 攻撃力:2

 防御力:5

 魔攻力:1

 魔防力:3

 素早さ:1


《種族スキル(種族に特有なもの)》

・氷語(氷と会話できる)

・給水Lv.1(水を吸収して体力を回復できる)


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》

・人間模倣(人間の行動を模倣できる。前世が人間だったため獲得)

・鑑定Lv.1(魔物や物の鑑定ができる。前世で品質管理の仕事を頑張ったため獲得)


《シークレットスキル(ある条件を満たすと解放されるもの)》


〔称号〕

・転生者(種族スキルを継承できる)

――――――



 こ、これがステータスオープン……!

 夢にまで見た異世界転生そのものだ!

 ふわぁぁ……と嬉しさが全身に溢れる。

 マジのガチで異世界転生したんだなぁ……(氷だけど!)

 氷のためか、防御系の能力がちょっと高めだ。

 魔攻力と魔防力は、きっと魔法関係のステータス……つまり、この世界には魔法がある!

 わくわく感が半端ない。


 ほぅ、この世界の氷には《氷語》なんてスキルがあるのか。

 氷とお喋りできるらしい。

 飲み物のコップに入れられたときの気分を聞いてみたい。

 もう一つの種族スキル、《給水》も便利だ。

 とりあえず、水があれば死ぬ心配はないらしい。

 レベルアップしたらもっと有用になるのかな?


 ユニークスキルはその名の通り、特別なスキルのようだ。

《人間模倣》は人間の活動を模倣……ふむふむ。

 手足はないけど、動けたりするってこと?

 ちょっと試してみたら、コロコロと転がれた! すごい!

 さらにさらに、《鑑定》のところにはすごく嬉しい説明が書いてある。

 前世の仕事を頑張ったから獲得できたとのこと!

 何も知らない異世界で生きていくのに、《鑑定》スキルなんて有益すぎる……。

 辛い仕事に耐えて頑張って本当によかった……。

 これにもLvの表記があるということは、レベルアップするのだろう。

 先が楽しみだし、シークレットスキルも気になる。

 たぶん、めっちゃ強い能力のはず!

 ぜひとも獲得させていただきたい。


〔称号〕は転生者ね。

 種族スキルを継承……ふむ。

 これはきっと、"進化の可能性"を暗示されている……気がする。

 ということは、レベルを上げていけば氷とは別の種族になれるかもしれない。

 そんなことを考えていると、自然と俺の目標が決まった。


 ①なるべく溶けないよう立ち回り、少しでも体力を温存する

 ②レベルを上げてステータスを高め、強くなること

 ③別の種族に進化できるスキルを手に入れること

 ④願わくば、この剣と魔法な世界でスローライフを送ること


 まずはこの三つを新しい人生……もとい、氷生の目標としよう。

 レベルを上げて能力を高め、強いスキルをゲットできれば、氷でも生きていける……はず!

 種族が進化すれば、人間かそれに準ずる姿にだってなれるかもしれない。

 氷でもどうにかなると前向きな気持ちになったとき、何かこう空気が揺れるような重い振動を感じた。

 周囲を見ると、よくわからない、そこそこ大きな虫が俺の周りを飛び交っている。

 え、な、なんだ?

 虫は俺の身体――下の方にくっつくと……なんと、ペロペロと舐め始めた!

 こ、こらっ、やめなさいよ!

 水分補給のつもりか?

 早く潰して…………いや、まずは《鑑定》してみよう。



――――――

 名前:なし

 種族:【コモンフライ】(一般的な蠅の魔物。どこからか現れ、いつもそこら中を飛び回っている。うるさい。生ゴミを処分し忘れるとすぐに繁殖する)

 性別:オス

 レベル:2

 ランク:E

 体力:3/3

 魔力:0/0

 攻撃力:2

 防御力:0

 魔攻力:0

 魔防力:0

 素早さ:12


《種族スキル》

・媒介(病原菌や呪いなどを身に宿し、別の場所や生物に感染させる)


《ユニークスキル》


《シークレットスキル》


〔称号〕

――――――



 おお、すごい。

 本当に細かいところまでステータスがわかるのか。

 種族の説明もありがたい限り。

 攻撃力や防御力は弱いけど、なにげに素早さが12もある。

 さすが蠅……。

 そして《媒介》スキル、めっちゃ怖い。

 ……えっ、こいつ変な病気持ってないよね?

 なんかすごく怖くなってきた。

 早く潰してしまおう……それっ!


『ッ……!』


 身体を動かすと、パキッと軽い音がして【コモンフライ】は潰れた。

 なんとか勝利したことで、俺のレベルも上がったらしい。

 


――――――

 名前:なし

 種族:氷

 性別:男

 レベル:2

 ランク:F

 体力:6/6

 魔力:4/4

 攻撃力:2

 防御力:6

 魔攻力:1

 魔防力:4

 素早さ:1


《種族スキル(種族に特有なもの)》

・氷語(氷と会話できる)

・給水Lv.1(水を吸収して体力を回復できる)


《ユニークスキル(個体に特有なもの)》

・人間模倣(人間の動作を真似できる)


《シークレットスキル(ある条件を満たすと解放されるもの)》


〔称号〕

・転生者(種族スキルを継承できる)

――――――



 ステータスが上がってたよぉ……!

 さすがにスキルの獲得はまだか。

 とはいえ、とても小さな一歩だが氷にとっては大きな一歩だ。

 わかりにくいが、体力が全回復している。

 おそらく、レベルアップすると最大まで回復するとみて間違いないだろう。


 この調子で頑張るぞと思うや否や、疲労を感じた。

 おかしいな、今回復したばかりなのに…………あっ!

 いつの間にか、空が完全に晴れていた!

 ぽかぽか陽気が降り注ぎ、俺の氷ボディを溶かしていたのだ!

 逃げなければっ……!


 とりあえず近くの岩陰に避難して、ホッとひと息吐く。

 強くなるとはいったものの……俺、これからどうなるんだろ。

 どうしよう、急激に心細くなってきた。

 さっきの蠅もあんなに小さいのに、一応魔物だった。

 生き残れるのか?

 自分の行く末に不安を感じていると、不意に小さな声が聞こえてきた。


『……ねぇ、あなたは動けるの?』

『コロコロ転がれていいなぁ……。身体も大きくて素敵』

『魔物を倒せるなんてすごいね! かっこいい!』


 氷だ。

 周りに雹として落ちた氷たちが、俺に話しかけている。

 これが《氷語》スキルか。

 どうやって言葉を返そう。

 念じればいいのだろうか……いや、実際に話してみよう。


「も、もしもし」


 声が出た!

《人間模倣》スキルが発動したんだ!

 俺が返答すると、氷たちはきゃいきゃいと嬉しそうな声を上げる。


『もしもしって、なにぃ? すっごく可愛いわぁ』

『これからは挨拶にもしもし、って言うね』

『ボクたちともっとお喋りしよ~』


 氷たちはとても優しくて、俺を仲間の輪に入れてくれた。

 みんなとお喋りする。

 どうやら、水の間は意識がなくて、氷になると自我が生まれるとのこと。

 この世で生きていける時間は短いから、今この瞬間を精一杯楽しく過ごすのが種族としての信条らしい。

 楽しい……とっても楽しい。

 ちょっと話しただけで、先ほどまでの心細さが嘘のように気持ちが明るくなった。

 このままずっとお喋りしていたい……と思ったとき。


「あれ……? なんか、みんな小さくなってない?」

 

 気がついたら、氷たちの身体は四分の一ほどに小さくなっていた。

 俺は岩陰にいるけど、みんなは直射日光をもろに喰らっている。

 全身の大きさだって、俺に比べたらとても小さい。

 おまけに、彼らは動けない。

 ぽかぽか陽気の下、解けていく運命……ってこと?

 そう思う間も氷はどんどん溶けていき、いよいよ限界が来た……来てしまった。


『そろそ、ろ……時間……が来たみた、い……。あなた……と話、せ……て……よかっ……た……』

『世界、に……還っ、ても……忘れな、い……』

『不、思……議な……氷さん……楽し、い……時間を……あり、が…………とぅ……』


 こおおおおおおおおおりいいいいいいいい!

 みんな……みんな、溶けて消えてしまった!

 めっちゃ悲しいのだが!?

 せっかくできた仲間ともうお別れだなんて……いや、悲しんでいても仕方がない。

 みんなの分まで精一杯生きろ!

 氷として幸せな氷生を過ごすんだ!


 そう誓った瞬間、突然、少し離れた場所で巨大な火柱が出現した。

 ななな、なんだっ!?

 天まで届きそうな火の柱が聳え立つ。

 50mは離れているだろうに熱気が伝わるほどだ。

 急いで逃げなきゃっ!

 そう思って転がり始めたが、"とある考え"があってピタリと立ち止まった。


 たぶん……さっきの巨大な火柱は魔法だ。

 俺はこの世界のことを何も知らない。

 今いる場所の地名すらわからないのだ。

 氷のままじゃ人ともろくに話せないだろうし、知識を手に入れる絶好の機会かもしれない。 まずは少しでも知識を蓄えなければ、生き残れるものも生き残れない。

 溶けるのはもちろん怖いが、多少のリスクは背負わないといけない……と思われる!

 なので、近くまで行ってまずは様子を探ることにした。


 草原を転がっていくと、小さな崖に出た。

 その下には鬱蒼とした森が広がる。

 何本かの木々が燃えており、広場みたいな空間ができていた。

 きっと、先ほどの火柱で燃えたのだ。

 前世ではほとんど見ないであろう光景にも驚くが、それ以上に衝撃的な場面に遭遇した。

 空間の中央には、多数の焼け焦げた緑色の鬼魔物――おそらくゴブリンと、苦しそうに倒れる少女がいる。

 初めて本格的な魔物を見たこともそうだが、それ以上に少女の姿に驚いてしまった。

 赤色の髪の両脇からは短くも先の尖った角が伸び、背中には小さな翼が生え、腰のあたりには……尻尾がある!

 彼女はきっと……ドラゴン娘だ!

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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