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合コンに呼んではいけない人 ー番人外伝ー

 椿屋 守がゼミの研究室で課題のレポートを纏めていると、自前のパソコン画面の端っこにメッセージアプリの通知がポップした。


 最近は業務連絡をやり取りするだけの関係になってきた男から齎されたそれは一欠片も無視出来ない凶事で、思わずその場で時計の長針が一周するくらいの時間分は固まってしまった。


 しかし、茫然自失をしていても物事は悪化の一途を辿っていくだけだ。


 いやいやながらも守は画面の端っこに留まっている通知をクリックし、男とのトークルームを開く。


『真昼 善時:お宅の虎丸君、ウチの沙倉を引っ掻いて血まで舐めとったけどちゃんと教育出来てんの?』


 誰にも朗らかで、滅多に怒ることがない同級生からの冷ややかなメッセージからは怒気が漂っていた。


 目を疑うような凶行が綴られているが、守が知っている『虎丸』ならば何にも可笑しいことはない。陽葵の素性を何処かで聞き知ったのならば、さもありなんだ。


『迷惑を掛けた。今から引取りに行くが何処にいる?』


 虎丸が仕出かしたのであれば、守がフォローに回るのは当然のことだ。

 彼と同等に渡り合えるのは分家内だと筆頭三家の当主達か、守のような次期当主のような立場にいる者くらいだからだ。


 出掛ける支度をしようと研究室のハンガーラックに掛けていた背広を羽織ったところで、またピロリンと通知音が鳴った。


 ノートパソコン前に戻って覗き込むと、そこには『真昼 善時:いいよ。帰るついでに藤倉家に突っ込んでくるから』とある。


 どうやら善時が責任を持って最後まで虎丸の面倒を見てくれるらしい。

 一族の垣根を越えてなんだかんだと他家の面倒まで見てくれる気のいい同級生の存在に感謝し、守は御礼と謝罪のメッセージを送付した。



 虎丸の凶行については別口からも密告があった。

 それは分家に名を連ねる『萩野』性の後輩からの連絡で、ついでに陽葵のメンタルケアも含めて居酒屋で飲みニケーションをしてくるという旨の記載もあった。


 二人が訪れる予定の居酒屋は、コチラ側に息が掛かっている店だ。

 大学からも駅からも少し歩いた所にある繁華街に構える店で、提供される料理は居酒屋にしては良質であるし、飲み物の種類も豊富だ。


 金のない大学生が少し奮発して行くような店であるために、客層の六割は仕事帰りのサラリーマンが多い。

 そして、繁華街ということもあって平和な三日月島にしては少し問題が多い場所でもある。


 陽葵を守護し、何処まで近くにいるかは御方様(月呼)に全て委任されている。

 ただし、護衛対象である陽葵には一切気付かれないこと──これが破られてしまった場合、陽葵と糸乃の関係性は更に拗れてしまうからだ。


 だからこそ陽葵に糸乃の人間が近付く場合は最大限の慎重さが求められるのだが、それをあの家の、特に『虎丸』の名を戴いている男は理解していない。


 守は暫し逡巡してから、ノートパソコンの電源を落とした。


 萩野 茉里奈から連絡があったのも久方ぶりのことであった。

 これも良い機会なのだから下手に知ったかぶった一族の人間から陽葵について聞き齧るよりも自分が直に説明した方が良いだろう。


 守はそう自分に言い聞かせて、研究室の続き部屋にある教授の個人部屋の扉を叩いた。




 ❁⃘*.゜❁⃘*.゜❁⃘*.゜



 陽葵が御手洗のために席を立ったタイミングを見計らって、彼女達が陣取るボックス席へと近付く。


 茉里奈は急に声を掛けてきた守に対して一瞬だけ驚いたような顔をしたが、何故この場に彼がいるのかの理由をある程度予測出来たらしく、「まあまあ、とりあえずお座り下さいよ」と陽葵が先程まで腰掛けていた席を勧めてくる。


 陽葵が戻ってくるまでの間と決めていた守は少しばかり渋ったが、悠長にしている間に時間が経ってしまうことを恐れて仕方なく勧められた席へと腰を下ろす。


 何か頼むかとメニュー表を見せてくる茉里奈を制して、守は此処まで来た目的を果たすために前振りもなく茉里奈に本題を話した。


 茉里奈は守から伝えられた話を聞いて何度も眉間を揉み、それだけでは足りなくなるとコツコツとビールジョッキに己の額を当てた。しまいには腹が痛いと腹部の上を摩り始める。


 しかし、彼女も善時同様に周囲にいる困った人間をフォローせずにはいられない性分だ。


 最終的には守の話を受け入れ、彼のお願い事も聞いてくれた。

 そのお願い事を聞く代わりに『お見合い話を持ってくる父を説得してくれ』と持ち掛けられたので、自分の権限が及ぶ限りは力になると請負う。


 分家同士の嫁取り・婿取りに椿屋家の跡取りが口を出してもいい事は一つも無いだろうが、宗家である糸乃家の問題解決に貢献できるのであれば些事にも等しい。


 萩野の当主には少しばかり無理を飲んでもらうことになるが、この問題が解決すれば月呼自らが萩野の婿取りの舵を取ってくれることだろう。

 御方様が縁を結んでくれることは、一門にとっての至上の喜び。末代まで語り継がれる吉事になる。


 だが、茉里奈と話し込んでいたせいでこの座席の元の主への警戒が緩んでいた。

 普段の守ならばこんな小さなミスはしないのだが、避けていた陽葵と顔を突合せてしまったのだ。


 何故、此処に居ると指を差してくる陽葵にどうすれば良いのか黙していると、目前にいる茉里奈が良いように取り計らってくれた。


 守を取り巻く人間達は癖が強いものが多く、厄介事へと背中を押すことはしても、厄介事からフォローしてくれる人間は差程居ない。もしかしたら、茉里奈と善時の二人のみの可能性もある。


 そう思うとより茉里奈の優しさが胸に染み、守は改めて彼女からのお願い事は出来る限り叶えてやろうと強く思った。




 ❁⃘*.゜❁⃘*.゜❁⃘*.゜



 何の運命の悪戯か。

 陽葵と共に鏡慈(きょうじ)家の姫が乗ったタクシーを追跡することになった。


 隣に座っている陽葵から錫子がチンピラに無理やりタクシーに乗せられてしまったと捲し立てるように話される。

 彼女の話を聞くに、恐らくそのチンピラとやらは鏡慈家が抱える一門の一つを筆頭する男のことだと思われる。


 朝昼晩と一日中サングラスを掛けている不良で、三日月島在住ともなると一人しかいない。


 真宵 遊理。

 上方に実家を持つ彼は胡散臭い見た目と口調で人を翻弄し、欺くことに長けている。


 ただ、もしかしたら本当に事件は起きている可能性もある。

 神力を感知することが滅法苦手な守ではタクシーに乗っているチンピラが果たして遊理なのか、それともその辺の暴漢なのかは判別がつかない。


 陽葵に手を引かれてタクシーに乗り込んでしまったことが定めなのだとしたら、それはもう流れに乗るしかないのだろう。


 守はそれ以上、深く考えることを放棄する。


 そんな小さな問題よりも他に気になることが彼にはあった。


 陽葵の片腕の内側に貼られた一枚の絆創膏に、見覚えのある神力の痕が付着していることだ。

 神力を持たない者には一文字に貼られた絆創膏しか見えないのだろうが、神力を保有する者には蛍光塗料のように光る青白い残滓を知覚する事が出来る。


 その神力の残滓がいやに守の勘に触った。


 これではまるで縄張りを示す犬のマーキングのようだと思ったからだ。

 陽葵と糸乃の関係はまだ赤の他人も同然であり、何一つ()の家に連なる尊き御方であると証明されてはいないが、月呼の態度は陽葵を一族の一員と見倣しているようなものだ。


 この虎丸の仕打ちは糸乃宗家に対して叛意があると取られても可笑しくはない。

 ──そもそも奴の性質自体が宗家に対して諸刃の剣であるのだとしてもだ。


 気がつくと守は陽葵に傷のことを尋ねていた。

 彼女の返事を聞く前に絆創膏の貼られた手を取って、気を逆撫でる虎丸の痕を様々な角度から眺める。


 ウラの人間は保有している神力との相殺で他人の神力が残ることは無く、オモテの人間は神力を保有していないことから痕が残る余地すらないので、そもそもこんな珍妙な現象は起きる筈がない。


 神力の残滓が付着するとすれば、永い時を生きる大地や樹木、たまに神力を僅かに内包している花々などが挙げられる。

 顔見知りの学者が神力と自然に関する関係性について、日本で育まれたアニミズム文化で紐解く研究をやっているが、まだ一定量の仮説が揃った段階なために立証にまでは至っていない。


 もしも陽葵のことをその学者に話でもしたら、喜び勇んで研究対象にすることだろう。

 きっとロクなことにならないので護衛対象とマッドプロフェッサーとの出会いはなんとしてでも阻止せねばなるまい。


 そんなことをつらつらと考えていたばかりに陽葵のでっち上げの自損事故についても殆ど耳に入っておらず、しまいには忌々しいとばかりに汚れをこそぎ落とすように残滓の痕を撫でてしまったせいで、プルプルと震えられることになってしまった。





 陽葵との追跡劇は思ったよりも呆気なく、居酒屋から10kmも離れていないコンビニで蹴りが着いた。


 途中でタクシーでの追跡が困難になったので生身での追跡に切り替えたくらいのハプニングがあったが、これくらいは折り込み済みだ。


 ただ、神力を使用した追跡は陽葵にはかなり刺激的だったようで、コンビニに到着する前にすっかり伸び切っていることが予想外ではあったが。


 あまり陽葵の身体が丈夫でないことを脳内にメモし、コンビニに停められているタクシーに寄りかかって電子タバコを吹かすチンピラを大通りを挟んだビル前から眇める。


 案の定、チンピラは真宵 遊理だった。






 遊理と対峙し、そこでかなり腹に据えかねない出来事も起こったが、陽葵の目的は達成されたといっても良いだろう。


 駐車場に贔屓のタクシー会社からタクシーを呼んで陽葵を送り出す。


 陽葵は一緒に乗車しない守に不思議そうな顔をしていたが、守にはまだ用事が残っていた。用事が詰まっているスマホを思い出すと少し億劫になるが、この厄介事を邪険にしてしまうと面倒なことになるのは間違いない。


 陽葵を乗せてコンビニを勢いよく出ていくタクシーを見送る。

 タクシー代はいつも通りに我が家へ請求するように言ってある。彼等もプロだ。女子大生だけを乗せて送り届けることに違和を抱いても詮索するほど落ちぶれてはいない。


 そろそろ厄介事を片付けるかと、コンビニの雑誌置き場の前に設置されている喫煙所前に移動する。歩きながら背広の内ポケットから取り出したのは、愛用しているウインストンという銘柄の煙草だ。


 守が愛用する前に無くなったキャスターという銘柄の後継に選ばれたそれの箱の中に入っている一本とライターを摘みだす。


 設置式の灰皿前に陣取ると慣れたような手付きで火を灯し、深く肺に煙を入れた。


 味は兎も角、匂いは糸乃神社の拝殿前に設置された上香炉で炊くお香と瓜二つ。

 糸乃神社で使用されるお香は別の家門が秘密裏に作製しているので原料までは分からないが、間違いなく葉たばこではないだろう。


 だが、匂いは一緒。

 そして古今東西、魔物や厄は煙を嫌う。


 守の喫煙理由はそんな他愛のないものだ。


 煙草を吹かしつつ、スマホを起動させて着信履歴を呼び出す。


 起動させた際に表示された通知は見なかったことにしたい。

 何十件と入っている着信とメッセージがあの男からによるものだというだけでも胃が重たくなる。


 真っ赤に染まっている着信履歴の一番上の履歴をタップし、守は溜息混じりに紫煙を吐き出してから耳につける。


 四コールもしないうちにぷつりと音を立てて、とんでもなく不機嫌な「はい」が鼓膜を震わせた。


「陽葵様なら、さきほど手配したタクシーに乗り、寮へと戻られた」

「何処?」

「店から離れた所にあるオフィス街の端っこにあるコンビニ。駅から少し歩いたところにある所だ」

「なんで?」

「本日の会合に出られている錫子様をご心配されて、鋼太郎様が遊理を迎えに行かせたらしい。錫子様を迎えにきたところを陽葵様がチンピラに襲われていると勘違いされて、ここまで一緒に追跡してきた」


 守の電話の主は不機嫌になると必要最低限の言葉しか用いない。普段は感嘆するほどに口が回り、都合が悪い時はあっという間に煙に巻いたりするくせに、機嫌を拗らせると口数が減る。


『そういう所が可愛い』のだと言っていた友人の気持ちがこの歳になっても未だに分からない。


 分からないが、今、台風の目に最も近い彼をこれ以上、逆上させないことも守のお務めに入っている。


「僕は、お前がそこまで怒る理由がわからない」

「·····は?」

「お前にとって陽葵様はもう価値の無い存在だろう。僕達はまだ悲願を諦めていないが、お前はあの時に見切りをつけてあの方をオモテへと帰した」


 僅かに視線を上げて、薄墨を引いたような雲に覆われた朧月を見上げる。

 こんな日は神力の力が弱い。守達が信奉している神から授かった力は月から頂戴しているために。


 ただ、あの日。

 守達の悲願の形をした女性と出会った日は月齢が満ちていないにも関わらず、急激に本来の姿を地球上に晒した。


 手折れそうなほどに細い三日月が人の目で分かるほどに満ちていく様は、あまりにも非科学的な出来事で暫くお茶の間のニュースを大層賑やかせたものだ。


 だからこそ、彼女が我等の長だと確信した。

 彼女が『糸乃家』を再興してくれる、この島で最も価値のあるプリンセスなのだと。


 しかし、その高貴な存在を頭から否定したのはこのスマホの向こうにいる男だ。


「由威、僕には今のお前が何をしたいのかが分からない」


 守には分からない。

 どうして、自分達を救ってくれる彼女を彼が手放したその理由が。


「お前は自らの悲願を達成するために陽葵様に近づいたはずだ。陽葵様との関係は打算ありきだろう。そもそもとして──お前には人と馴れ合っている時間は無い」


 時間が無い。

 それはどの家だってそうだ、鋏慈はちょっと違うだろうが。


 しかし、守と由威に残された時が少ないのは共通している。


 守の言に対して、電話の向こう側にいる男からの返答は無い。

 重苦しい沈黙が回線を通して此方にまで届いたが、守も守でここで追求の手を緩めるつもりは毛頭無かった。


 暫く無言の時間が続いたが、何かしらの決心でもついたのか漸くスピーカーから由威のかったるそうな声がした。


「知ってるよ、そんくらい。だから無駄を省いてやってるんだ。あの子は確かに糸乃の次期当主の条件を揃えている。けど、虎丸が証明したんだろ。あの子が糸乃の血を引いてないって」

「相変わらず耳聰い·····」

「虎丸が試金石になってくれたのは有難いよね。俺達みたいな凡ウラ人間では血統の有無は分かんないからさ。アイツが違うって言うんなら違うんだろう。この科学社会で絶対の信頼を得ているDNA鑑定より余っ程正確だ」


 どうやらこの男、遺伝子検査で陽葵と糸乃の関係性を先に洗っていたらしい。


 一体何処で入手したのかは分からないが、糸乃のDNAと陽葵のDNAを照合したのだろう。


 守も少し前に知り合いの研究所から調査結果を貰ったが、結果は芳しくなかった。

 用紙に記載された0を睨み、己の研究分野をゲノム解析に変更しようかと本気で悩んだことも記憶に新しい。


「心地好い夢をずっと見ててもしょうがない。俺達の破滅は刻一刻と近付いているんだから。だからさ、あの時も言ったけどヒマちゃんからはもう手を引いた方が良い──俺らには時間が無いんだからさ」


 そしてやはり、どうやっても由威が相手になると口下手な守では攻守逆転してしまうようだった。

 さっきまで子供のように不機嫌だったのに、彼は会話している間にいつもの調子を取り戻していた。


 これが狙いだったとはいえ、本音を綺麗に覆い隠されてしまったことには少しばかりの惜しさを感じる。

 こうして、この男と一対一で腹を割って話すことももう随分と遠くの記憶だったから。


「あ!やっとひまちゃんの奴、連絡返してきたな〜。って、ヤダヤダ!なんか俺、次同じことやったらブロックするって言われたんだけど!?え?どれのこと!?」


 名残惜しんでいると、唐突に由威が声色を変えて騒ぎ出す。

 内容的に陽葵が由威からの連絡に返信したのだろうが、どうも彼女の不興を買った様子。


 なんとなく守には陽葵がどうして由威をブロックしようとしたのかの理由が分かったが、手を貸してやる義理もないだろうと「じゃあ、また」と別れの言葉を告げて、終了ボタンをタップする。


 最後は呆気なかった由威との通話(面倒な業務)が無事に終了し、暫く初期設定の背景のままにしているホーム画面をなんとなく見下ろす。


 スマホには必要最低限のアプリしか入っておらず、娯楽類は搭載されていた音楽アプリとソリティアの二種類という大学生にあるまじき枯れ具合で、流行の最先端を行く親族兼友人には「アンタ、そんなんで人生楽しいの?」と言われる始末だ。


 昨今ではインターネットを通じた娯楽が山とあり、SNSを通じて顔も知らぬ人と繋がったり、スマホ一つで本格的な操作性で遊べるソシャゲや動画サイトなどがあるらしいのだが、準機械音痴な守は全く手を出せそうには無い。


 由威とのやり取りですっかり気力を削がされてしまったせいか、今日はもう何も手がつきそうもないので、メールアプリとメッセージアプリの残った通知の数字は見ないことにした。


 それに、これ以上の脳の酷使は明日に響いてくるに違いない。

 こんな日くらいは息抜きをしたって良いだろう。


 元々、彼自身はそこまで勤勉な性格では無いのだ。


 周囲には『よく働くね』と声を掛けられるが、それは今やっている役目を担える人物が自分以外に居ないからという消去法によるもの。

 そして、月呼自らの指名の為に拝命したという経緯なだけで、本来は縁側でのんびりしながら一日中お茶を啜っていたほどには怠け者だ。


 灰皿に煙草を捨て、ふと喉の渇きを覚えた守はコンビニの自動ドアを潜る。


 居酒屋で日本酒を嗜んでから何も口にしていなかったため、喉はすっかりカラカラだ。


 自宅までの帰途のお供にしようと飲料コーナー前へと陣取って、満遍なく隅から隅まで見渡す。

  アルコールコーナー、お茶や水といった無難なコーナー、ジュースコーナーへと視線を走らせ、彼がいそいそと向かったのは紅茶やイチゴオレなどが並べられた甘いジュースが詰まった冷蔵庫前だ。


 その中でも特に甘そうな『脅威の練乳80%!』と銘打たれたイチゴオレを手にする。


 守はよく驚かれるが、どの雑誌でも表紙を飾れる正統派な俳優顔と隙のない生真面目な性格から予想もつかない子供舌の持ち主だ。


 こうしてお眼鏡に適う帰途のお供を入手した彼は、決意した通り一切の連絡を経って自宅に帰宅した。








実は全ての方角から板挟みな人です。

『繋げてはいけない運命』の裏側が垣間見えたような仕上がりになっていれば幸いです。


『合コンに呼んではいけない人』はこれにて終了となります。

ここまで読了いただきありがとうございました。


宜しければ忌憚ない感想やポイントを頂けますと幸いです。

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