『どうぶつのおうち』〈アモン〉…………デビルマンとの関係性。
2017年3月7日の夜。
加藤が『どうぶつのおうち』前で夜空を見上げると、異変に気が付く。
よく見ると、星の一つ一つがゆらゆらと揺れており、パチパチと火花を散らしているので、線香花火のようにも見える。星の代わりにそれが浮かんでおり、逆に普通の星が全く存在しない。
春頃なら、観測することが困難なはずの『オリオン座』がハッキリと浮かんでおり、その全ての星が真っ赤に輝き、揺れ動いている。もしかしたら、未確認飛行物体ではないかと考えるようになった。
星だけではなく月にまで変化が見られる。最初は見た通りの普通の三日月かと思えば、満月へと早変わりする。そしてビクンビクンと収縮を繰り返し続ける。
この一連の現象を加藤はスマホで動画撮影しており、後で確認したが、見間違いなどではなく、実際に月が変容する過程が撮れているし、これが何らかのサインであることは間違い無い。
その理由を突き止めるために、「サイエンスエンターテイナー」と呼ばれる専門家、飛〇昭〇に直接コンタクトを取って相談することになったのだ。
*
飛〇昭〇氏には公式サイトから今までの経緯を説明したEメールを送ってみたのだが、加藤の体験に向こうも興味を持ってくれたようだ。
喫茶店で待ち合わせることになり、出会った瞬間、早速、握手を求められる。彼とは全くの初対面なのだが、加藤のことを一目見た瞬間から、ただ者では無いと気が付いたらしく、かなり気に入ったようだ。そして、『どうぶつのおうち』にも興味を持っているらしく、「今度お店に遊びに行きたい!」と何度も言われた。
「……加藤さんの場では月の満ち欠けの周期が通常とは違い一瞬で行われる。惑星もまだまだ解明していないこともあり、予測不能の動きを見せることもある。それは加藤さんだから捉えることも出来るし撮影も可能なのでしょうね。本物には必ず物証が伴うんですよ」
加藤のスマホで動画を見ていると、真剣に考え込んでいるようだった。
「『ロズウェル事件』というものがありまして、1947年にニューメキシコ州ロズウェル近郊でアメリカ陸軍航空軍の気球が未確認飛行物体に墜落されたので、アメリカ軍が撃墜したUFO内部の死者を調べると、そこには日本人に酷似した人間4人の死体があった。最初は、日本軍がアメリカに復讐しに攻めてきたと思ったそうだ。アメリカ軍が調べると、UFOに乗っているのは宇宙人ではなく、僕らと同じDNAを持つ人間、東洋人だという事実はC〇Aが公開済みなのです。このDNAを持つ者達は『アルザル人』と呼ばれています。東に向かって日本列島に辿り着いたのが日本人、北に向かったのがアルザル人と分析した。日本人特有のDNAであるYAP因子をUFOのアルザル人は持っており、日本人以外にはユダヤ人のような一部の少数民族しか持っていないからだという。つまり、イエス・キリストの子孫こそが天皇陛下であり、本当のユダヤ人は我々日本人なんですよ」
やはりというか、元C〇Aの内通者でもあるために、その知識量は凄まじいものがある。
一般人からすれば「トンデモ話」として片付けられてしまいそうだが、彼の言葉は事実なのだろう。
日本人こそがユダヤ人であるという、『日ユ同祖論』という話は有名だが、目の前に現れたUFO内部に同じDNAを持った人間が入って操縦しているとは考えていなかった。
「北極・南極の極点近くには、地球内部の亜空間への入り口がある。地球内部の亜空間には緑の豊かな大地が広がり、高度な文明を持った人類『アルザル人』が住んでいる。アルザルは月とほぼ同じ大きさで地球の内部に存在する。近い将来、アルザル人たちは地上に出てくる。旧約聖書にもそれを予言していることが記載されています。今後、僕たち日本人と一緒にやる仕事がある為にメッセージを送ってくれています。まあ、そのUFO機体は燃料が勿体ないので、ホログラム映像のようなものを見せているだけだとは思いますが」
「UFOを最初に見た時、僕はてっきりグレイ型宇宙人が乗っているのかと思っていたんですよ」
「実はグレイは宇宙人ではないんですよ。あれはUMAの一種で、その両生類は、日本では『河童』と呼ばれている。二人の米兵がグレイ型宇宙人を連れている写真が有名だけど、あれは真実を覆い隠すためのカモフラージュなのです。米軍はプラズマ兵器実験を隠すために、UFO騒動・宇宙人騒動を起こしている。UFOの多くは米軍の実験機なのです。これは内緒なんですけど、僕は『河童』のメスを所持しているのです」
「河童をですか?」
加藤が驚く姿に、彼はニヤリと笑った。
やはり自慢したくて仕方ないらしい。
「アルザルの空がピンク色をしていることから、この世の楽園を桃源郷と表される様になったとのこと。この地では1000年生きられる。この地に迷い込んだ米軍将校が巨人やマンモス、サーベルタイガー、恐竜等を撮影している。ノアの方舟にも肉食獣と草食獣が乗り合わせていられたのは食べる必要も、争う理由もないからでしょうね。そういう世界なんですよ」
加藤は『どうぶつのおうち』で起きた悪魔絡みの事件を説明した。最近になって悪魔本体を祓うことが出来るようになったこと。憑依者がどんな事件を起こしてしまったのか。その残虐性。異常な死体の数々。それが日本各地で起き始めていることも。
「……アメリカにはゴーストバスターは存在するけど、日本では唯一ではないかな? 大手宗教組織にも堕落は蔓延しているそうで、『あの世は無い』と言う僧侶、宮司、神父が8割ほど居るそうです。悪魔祓いを依頼されたのに、全く祓えない神父さんもたくさんいるんですよ。加藤さんご自身の天命の意味がよく分かるんじゃないでしょうか」
「やはり、自分が悪魔と戦うことが決められていたのでしょうか?」
「それなんだけど、今度発売される雑誌を読んで欲しいんだよね。付録マンガに全部書いてあるから!」
*
加藤と廣瀬は『どうぶつのおうち』の閉店後、近所のファミレスでオカルト雑誌を開くことにした。
こんなにタイミング良く雑誌に紹介されているなんてことがあるのだろうか?
流石に疑問に思ったのだが、彼が担当したページには北斗七星、あるいは悪魔に関連する神話などが記されている。まるで加藤の動きを先回りするかのように、すでに『答え』が用意されていたことになる。やはり全ては神の計画通りなのだとしか思えなかった。
加藤が『悪魔』というキーワードから、真っ先に連想したのは、テレビアニメ『デビルマン』のことだった。
『デビルマン』の原作漫画では、主人公の不動明が勇者アモンに憑依されたことから物語が始まる。それを見守るのが、親友の飛鳥了であり、その正体こそが『ルシフェル=ルシファー』である。
ルシフェルは史上最も美しい天使だとされており、自分が神へとなり替わろうと、神に戦いを挑んだ際には、3割の天使がルシフェルに付き従い、天上での戦いが開幕。
№2である、大天使ミカエルとの戦いに敗れたルシフェル達は地上に落とされ、神の呪いにより、二度とは肉体を持てないようになったとされている。天から追放され、地球に流地刑された。一般的にはあまり知られていないが、堕天使と悪魔は同じものである。
ルシフェルは神を表す『エル』を剥奪されて『ルシファー』へと改名された。ルシファーが悪魔でありながら、『光り輝く者』、『明けの明星』と呼ばれているのにはそんな理由がある。堕天使として地に落ちたその後も、その美しさは変わらなかったのだろう。
またアモンのことも記されている、その堕天の理由についてはルシファーが神に反逆した際に、友人として義勇軍を率いて参戦。共に敗れるも、何も言わずに地獄への堕天に付き合ったと云う義侠心に溢れた説が伝わっている。
悪魔達は、神の祝福により肉体を持つ人間達を呪い、様々な誘惑、妨害、破壊工作をしていると言われている。 因みにサタンの意味は〈妨げる者〉〈試す者〉〈敵対する者〉であるという。肉体を持ち、成長することが出来ることが妬ましくて仕方ないのだ。
少し前に、第73代武〇宿禰からも同じく『悪魔』や『ルシファー』に関するアドバイスを受けていた。ここまで来ると偶然では済ませられなくなってくる。
昔、師匠から、「あなたは闇組織の住人なのよ」と指摘されたことを思い出す。あれは遠回しに加藤自身の中身が悪魔だったことを伝えていたのだろう。
子供の頃から憧れていた『デビルマン』が、実は自分自身だっただなんて、あまりにも出来過ぎていたし、自分とルシファーがこのような繋がりを持っているとは思わなかった。
「薄々は分かっていたけど、やっぱり俺自身がアモンだったんだね。何故俺だけが悪魔に憑依されないのか、ずっと不思議だったんだ。同種だったからなんだよ」
「まさか、加藤さんが悪魔だっただなんて……。それもアモンだったなんて……『デビルマン』そのものじゃないですか……」
ネットで調べてみると、ソロモン王に召喚されたアモンが詞を披露した際、それを聞いた者が感動のあまり涙を流したというエピソードが紹介されている。
「……悪魔って人を殺したり、呪ったりするイメージがあるけど、何だか、詩人みたいですよね」
「俺の生徒には芸術家や音楽家など、アーティスティックな才能を持つ者が多いけど、これも関係していたんだよ。実際、有名なアーティストは、明らかに『下』からの情報で作品を作っている場合が多かった。ハッキリ言って狂人や変態が多い。『ひまわり』のゴッホが自分の耳を切り落としたエピソードもそれを裏付けているはず。悪魔と繋がりやすいからこそ奇行に走ってしまうんだよ」
廣瀬もその逸話を知っていたらしく頷く。
「良くも悪くも、悪魔に近い人が、加藤さんの元に集まって来ていたんですね……」
「船〇俊〇さんも、癖のある顔つきを見ればすぐに分かったんだけど、彼の魂の出所もやはり『下』からなんだろうね。俺と同じく、一度は天を裏切ったけれど、もう一度、神に仕える人間としてチャンスを与えられたんだよ」
「だから、今生では、多くの人を救おうとするようなセミナー活動をしているんですね」
「『デビルマン』も『NARUTO』も、最近、週刊少年ジャンプで始まった『ブラック・クローバー』も、主人公たちは皆、悪魔の力を使って、他人のことを助けようとするんだよ。少年漫画の主人公なのに、天使の力では無くて、悪魔の力を使うところがポイントなんだ。この地球という悪魔に支配された星では、闇の力を使うことが重要だと、作家の人達は受け取っているんだよ」
「少年マンガのヒーローなのに、天使ではなく、悪魔の力を使っているんですね……。ちょっと意外かもしれないです」
「とある先生では、俺の生徒の情報を『重くて動かせなかった』と話していたことがあるんだけど。あれは先生が『上』からの力を使っているからなんだよ。俺が他人を変容させられるのは、『下』側、つまりは悪魔の力を使えるからだったんだ。俺の生徒達は俺の魔術でしか変容させることが出来ないんだよ」
加藤の説明に、廣瀬は驚いているようだった。
「ここ最近はコーチングセッションで、『UFOが見えるか見えないか?』が、異次元からのジャッジであるために、生徒と共に試してみることがあった。俺の床屋の店長は金を盗みまくっていたからUFOが全然現れなかったからね。トライアルセッション(お試しコース)だけで、悔い改める気が無い子も見ることは出来なかったんだ」
「向こう側もこちらを選別しているのですね」
「そう、その通り。あれから色々調べてみたんだけど、俺の娘が亡くなったのは、1999年7月18日。『ノストラダムスの予言』を思い浮かべるかもしれないけど、娘の死から俺の活動が始まった。俺にスイッチを入れたのは間違いなく娘なんだ。娘の名前には天と地と人を結ぶという意味があったんだよ」
加藤が窓越しに夜空を見上げると、たくさんの『UFO』が浮かんでいる。今もこちらの様子を伺っているのだろう。生徒達を救うために、別の次元へ携挙(神隠し)されることを目指してきたが、最終的にはあちらに行き着くのかもしれない。アルザル人の彼らが臨場感を持てるようにUFOを見せてくれている。そこに導こうとしてくれているのだろう。
争いも捕食も無い世界。
楽園のような場所。
生徒達を守るために活動してきたが、最終到達地点こそが『桃源郷』なのかもしれない……。




