第179話 ささやかな宴 後編
ユーリ・クロイスの婚約者は、ミアリーゼ・レーベンフォルンだった。
恐らく、姫本人もそれを知らされておらず、恐らく親同士が内密に話を進めて十六の歳を迎えた際に、発表するつもりだったのだろう。
それなら母、セリナがサプライズしようとしていた理由が頷ける。
けれどそもそもの話、ユーリが軍に入隊したきっかけは、ミアリーゼに婚約者がいると耳にしたからだ。
それが自分だとは露ほども知らずに、勝手に隣に立つのは相応しくないと思い込み、姫に見合う何かが欲しくてグレンファルトに相談したのが全ての始まり。
つまり、グレンファルトは全部知った上で、ユーリに道を提示していたということになる。
あの時の言葉がなければ、今のユーリはここにはいない。もし仮に、ナギたち異種族と出会わずに、婚約者がミアリーゼだと告げられていたら、そのまま結婚していたのだろうか?
「そっか……」
叔父であるウィリアムから、ミアリーゼの名が出た瞬間、ストンと心の中に納得の気持ちが収まっていくのを感じた。
ちなみに他の面々は、未だに動揺して騒ついていた。そして、ウィリアムはミアリーゼ婚約の件について補足を入れる。
「ミアリーゼ様の婚約者選定は、父君であるエルヴィス様がお決めになられたそうだよ。
その一番の理由は、ユーリがグレンファルト様と、ミアリーゼ様両方と懇意にしていたからだとか。
つまり、能力関係なく人柄を重視したのさ。エルヴィス様は、御子息のグレンファルト様とは上手くいってなかったそうだからね」
だから、グレンファルトとミアリーゼ。裏表なく純粋に両方と仲が良いユーリが選ばれた、そういうことか。
「そうだったんだ……」
エルヴィスとは過去に何度か会ったことがあるが、他愛のない挨拶しかしてこなかった。
エレミヤと行った種族会談の顛末を聞いた時、もう少しきちんと話をしたかったと悔しさが込み上げた。彼を殺したのは、ダリル・アーキマン。けれど間接的にグレンファルトが関わっている。
直接手を下していないとはいえ、実の親を殺すなんてユーリには信じられない。だからこそ会って確かめて、グレンファルトの真意を問いただす必要があるのだ。
「既に白紙になった婚約話だ。今の情勢下で言うのもなんだが、ユーリは自由に恋愛していいんだ」
家柄に縛られない、恋愛の自由。ウィリアムの言葉に、ユーリは自身を好いてくれているナギとエレミヤを同時に見つめる。
「「…………」」
二人は、ゴクリと生唾を飲んで見つめ返してくる。
恋愛事は、誰も傷つかずに丸く収める方法はない。サラとフィオネ・クルージュの二人は、オリヴァーのことを好いていて、前者は選ばれ、後者は選ばれなかった。
失恋は、その人にとって世界そのものが憎むべき対象へと変わってしまう程に重たい。たかが恋愛だと侮ってはいけない。
オリヴァーは、選んだ。サラと添い遂げ、フィオネと決別することを。ユーリには絶対できない凄いことをやってのけたのだと今なら分かる。
「ナギ、エレミィ」
ナギやエレミヤも、ユーリには勿体無いくらいに素敵な女の子だ。なのに、恋愛対象として見ることができない本当の理由が今分かった。
「俺……初めて会った時から、ミアリーゼ様のことが好きなんだ」
そう……それこそが、本当の意味で使命の奴隷から脱却するための理。
勿論、戦いを終わらせることは重要な使命として残っている。だけど、それ以上に自分の幸せのために我儘を貫き通したいという、個人の欲望も同じくらい大切なんだと気付いたから。
「「うん、知ってた」」
ナギとエレミヤは、口を揃えてそう言い。
「「けど、それが何?」」
「へ?」
ユーリがミアリーゼに対して恋愛感情を懐いているなんて、初めから分かりきっていた。その上で好きになった。それがどうしたと、二人は突っぱねたのだ。
予想外の返答に、ユーリは面食らっていた。
「そもそも、一度フラれてるわけだし、改めて言われても私が諦める理由にはならないわ」
「エレミヤの言う通り。私はもうユーリ無しには生きられないくらいに好きなの! ユーリがミアリーゼのことを好きだとしても、何度フラれても諦めたりしない!」
「いやいやいやいや!?」
エレミヤはともかく、ナギの愛が重すぎる。つまりユーリがいなくなったら死ぬと言っているのと同義だ。非常に困るが、あまりにもドストレートの好意を向けられ、内心ドキドキしている自分もいる。
動揺するユーリに対して、シャーレがエレミヤとナギへ援護射撃を行う。
「うふふ、兄さん顔が真っ赤ですよ? 実はミアリーゼ様だけじゃなくて、エレミヤさんやナギさんのことも想っているんじゃないですか?」
「急に何を言い出してるんだ、お前は!?」
ユーリを修羅場という名の混沌に堕とす妹を止められる者は誰もいない。
というより、止めようとしているのはユーリだけで、叔父含めて皆興味津々といった様子だった。
「結論を言います。全てが終わったら、兄さんはお二人と幸せな家庭を築くべきです。
そこにミアリーゼ様も加わってくれたら、尚のこと良し。うふふ、殿方が一度は夢見るハーレムエンドが実現しますよ?」
「現実でそんなことしたら、俺がただの三股クズ野郎になるだろうが!!」
ユーリの婚約者は誰なのか? という会話から、話の方向性がおかしくなってしまっている。しかし、それを修正できる力はユーリにはない。
「でも、一番現実的な解決方法ですよね?」
「重婚は認められてないだろ。それにお前、さっき俺に酒は二十歳までダメって注意してなかったか? ルールにうるさい癖に、何でそこだけ破るんだよ」
法律がどうのと注意していたシャーレが、法で認められないことをしろと言うのは、おかしな話だ。
「何を言ってるんです兄さん? それは人間同士の話で、種族間についてはまだ何も決められていないじゃないですか。私、何もルールを破ってませんよ?」
「言われてみれば確かに――って違う!?」
一瞬納得しかけたが、妹の理論は暴論に等しく、即座に否定する。
「そもそも、エレミヤとナギの気持ちはどうなるんだよ。恋愛ってのは何ていうかこう……予想ができないくらいに複雑で、サラとフィオネさんみたいに、泥沼化する可能性だってあるかもしれない。
俺は、自分が原因で二人が不仲になるのが一番嫌なんだ」
だからこそ、ユーリは二人を選べない。もしも逆の立場だったら絶対に嫌だと思ってしまう。もしかしたら相手のことを嫌いになってしまうかもしれない。
そもそもの話、ようやくミアリーゼのことを想っていると自覚したばかりなのに、他の女性に気を取られるなど、不誠実極まりない。
エレミヤとナギの想いを頑なに受け入れなかった本当の理由に気付いた今、シャーレの言うハーレムとやらは、絶対に実現しないのだ。
「って、何で二人ともさっきから何も言わないんだ?」
「「………」」
エレミヤとナギは、互いに顔を見合わせていた。彼女たちは、過去に何度かユーリを巡ってぶつかった恋敵でもある。
けれど、都市タリアで二人とも撃沈し、シャーレのおかげで立ち直ることができた。そして、ユーリがエレミヤとナギに対して、不誠実な対応をしないと分かったのなら。
「ちょっと来てちょうだい! ナギは後でね」
「エレミィ? ちょっ」
そう言ってエレミヤは、ユーリの手を取り、無理矢理引っ張っていく。恐らく皆に聞かれるのは恥ずかしいのだろう。待機室内に個室があり、その扉を開けて、ユーリとエレミヤは中に入っていく。
そのままユーリは、都市アージアの夜景が見えるガラス張りの窓に背中を押しつけられる。中は当然無人で、完全に二人きりの状況となってしまった。
ナギたちが追いかけてくる気配はない。エレミヤは、そのまま左手をドンッ! と、強くユーリの顔の真横に押し付けて、壁ドンの姿勢をとる。
「あ、あの……エレミィ?」
正直言うと、殴られるかと思ってビックリしてしまった。
これ、男女の立ち位置逆では? と、思いながらおずおずと情けない声で問いかけるも。
「私、本当の本気でユーリが好きよ」
「…………」
今までのように運命の殿方なんて冗談めかした言い方ではなく、本気の本音の想いが込められたエレミヤの告白。
「国や焼かれ、家族も亡くして、挙げ句の果てにはイリスが向こうに寝返っちゃって。それでもめげずに前を向いていられるのはユーリたち皆がいてくれるから。
もし皆の中で一番大切な人は誰かと聞かれたら、迷わずあなたを選ぶわ。そのくらい大切で大好きだから――」
「エレミィ……」
ドキドキドキと、自分の心臓が高鳴っているのが伝わる。オフィス内の夜景の中だからか雰囲気に充てられてしまっているかもしれない。
「本当は、私を選んでほしいし、私だけを見ていてほしい。ミアリーゼにもナギにも、それこそ誰にも負けたくない。
だけど、それ以上にユーリが私をどう思っているのかが、重要だから」
「………」
「私ってば、本当単純よね。以前、あなたにチョロインって言われたのを思い出したわ」
まだエレミヤの素性を知らずに千里眼の幻想空間内で会っていた頃の話だ。あの時は、冗談のつもりで言ったが、まさか本当になるとは思ってもいなかった。
「だから……うん。例え他の女性のことが好きでも、同じくらい私を想ってくれたらそれでいいの。言いたいことはそれだけよ――だ、か、ら!」
「!?」
「ミアリーゼ・レーベンフォルンに、ちゃんと想いを伝えなくちゃね。ハーレムの話は冗談として、ユーリがきちんと告白して、全てはそこから始まるわ。
私だって諦めたわけじゃない。でも、ユーリがどうしたいかが重要だから。半端な気持ちで女の子に手を出すのは許せないんでしょ? 本当、真面目なんだから」
シャーレの提案したハーレム云々《うんぬん》を本気で考えているわけではない。エレミヤはちゃんと現実を理解している。
「ありがとう。エレミィには本当いつも助けられてばかりで、俺には勿体無いくらいに素敵な女の子だよ」
「ふっふーん、でしょ?」
エレミヤは、諦めたわけではない。ミアリーゼやナギよりも魅力的な女の子だと思わせると改めてユーリの前で誓ったのだ。
「ふう……シャーレも私たちのことを想ってくれてるって分かってるんだけど、感性がズレてるのよね。多分だけど、恋愛のこと知識としてしか分かってないのよ」
「まぁ、悪気はなさそうだし、本人にきちんと説明すれば分かってくれるさ」
「そうね」
シャーレは、善意でエレミヤとナギを応援している。本気で恋が報われてほしいと願っているから、多少強引な理論を捩じ込んででもユーリと添い遂げさせたいのだ。
「それじゃ、次はナギを呼んでくるわね! あの子は多分、ハーレム云々《うんぬん》の話に乗り気みたいだし、ユーリの方でフォローしてあげてね!」
言葉を返す間もなく、颯爽と背を向けて扉を開けて出ていくエレミヤと入れ違いでナギが入ってくる。
恐らく扉の前で聞き耳を立てていたのだろう、先程のハーレム云々の話に承諾しないと知って、不安そうな表情に揺れていた。
扉が閉まり、今度はナギと二人きりの空間。
「ナギ……」
「ごめん、どうしても気になって全部聞いちゃった」
ユーリは、二人以上の女性と深い関係を築くことは不誠実と捉えている。けれど、それでもとナギは縋るような潤んだ瞳を向けて言う。
「私は、いいんだよ? 例え他の女が好きでも、私のことも愛してくれれば……愛人、とかでも全然大丈夫だから」
「駄目だ。そんな不誠実なことをしたら、俺が俺を許せなくなる。
それに、一時は良いとしても、いずれ何処かで限界がくる。オリヴァーたちを見て、尚のことそう思った」
「…………」
ナギの獣耳が、しゅん……と垂れ下がる。
「俺、ミアリーゼ様に裏切り者って言われながら銃を向けられて、頭が真っ白になって何も言えなくなったんだ。
ようやくこの想いを自覚して、それが届かなかったらと思うと死にたくなる。多分、一生引きずるし、ミアリーゼ様に好いてもらうために、自分の意志を捻じ曲げてしまうかもしれない。
恋愛という感情の恐ろしさを、今さっき、ようやく理解できた」
ミアリーゼの憎悪に満ちた視線を思い出す度に胸が痛くなる。自分の想いを否定されることの辛さを分かっているのに、エレミヤとナギの想いに応えてあげられないというもどかしさ。
「ユーリは、例えフラれるかもしれないって分かっていても、それでもミアリーゼを選ぶんだね」
「うん」
「私、諦めないよ? エレミヤもそう。人の想いは移りゆくものだから。ミアリーゼにフラれて、私のことを好きになる未来もあるかもしれない」
「…………」
ユーリは否定も肯定もせず、無言を返した。未来のことなんて誰にも分からない。エレミヤとナギに特別な感情を懐いている以上、そっちに意識が向くこともあるかもしれない。
「うん。私、決めた。これからはユーリの方から好きだって言ってもらえるように頑張る。
でもその前に、皆で生き残ってこの戦いを終わらせなくちゃね」
「そうだな。ありがとう、ナギ」
何はともあれ、全ては戦いを終わらせなければ始まらない。
こちらがどれだけミアリーゼのことを想っていても、向こうはそうとは限らない。次に邂逅した際は、間違いなく殺しにくる。それだけじゃない、悪という概念そのものすら滅ぼそうとしているのだ。
「私からは、それだけ。皆を待たせてるし早く行こ」
もっと言いたいことがあるだろうに、ナギには本当頭が上がらない。
二人で並んで扉へと向かい、僅かにナギの手の甲がユーリの手の甲に触れる。僅かに感じる体温。そこから溢れんばかりの想いが流れ込んでくる。
けれど何も言わず扉を開き、部屋を退出した瞬間――。
「ふぇぇええぇーーん! ごめんなさい、兄さぁぁああぁーーーーん!!!」
何故か泣いているシャーレが、勢いよくユーリの胸に飛び込んできた。彼女を受け止め、おっかなびっくりな様相で尋ねる。
「シャーレ!?」
「ぐすっ、エレミヤさんから聞きました! 私、一人で勝手に暴走して、兄さんたちに迷惑をかけてしまいましたーーー!!」
成る程。シャーレは、ハーレム云々《うんぬん》の話を、良かれと思い提案した。
けれど、返ってそれが状況をややこしくしてしまったことに対して、罪悪感を懐かせてしまったようだ。
だから安心させるように抱きしめ返して、妹の背中を優しく、愛情を込めてポンポンと叩く。
「迷惑なんて思っ……たけど、シャーレが深刻に捉える必要なんてないよ。それに妹は、お兄ちゃんに迷惑かけてなんぼだ。だから気にしなくていいんだ」
シャーレが少しだけ身体を離して、潤んだ瞳でユーリを見つめてきた。
「本当? 嫌いになったりしてないですか?」
「もちろん。俺はシャーレのことが大好きだし、今も変わらず、心から愛してるよ」
「兄さん……私も大好き、愛してます!!」
ガバッと強く抱きしめ合うクロイス兄妹。最早、不変の兄妹愛に割り込める者など存在しない。
恋愛とは違う、暖かく微笑ましい兄妹愛の姿――の筈なのだが、見ていたエレミヤとナギは、二人揃って「「なんか狡くない!?」」と、叫んでいた。
「シャーレおねーちゃんばっかりずるーーい!! ユーリおにーちゃん、シオンもギュッてしてーー!!」
そう言いながら、もう一人の妹であるシオンが、ユーリの背中に飛び込んでギュッと抱きしめる。
「あはは! 甘えん坊だなぁ、シオンは」
ユーリは超が付く程のシスコンで、シャーレもまた超が付く程のブラコンだ。シオンが嫉妬してしまうのも否めないが、この光景を見ている他の皆は、若干呆れていた。
◇
その後、グレンファルト・レーベンフォルンから届いた手紙を開封し、中身を見たところ、面会の日時と場所だけが簡潔に記されているだけだった。
「明日、か。グレンファルト様と面会した後に、ミアリーゼ様ともう一度会えないかな?」
与えられた空白の期間を無駄に消費するわけにはいかない。可能であれば、もう一度ミアリーゼと接触して対話の機会を設けられないか? そう思っての発言だったが、叔父であるウィリアムが神妙な顔で頷く。
「そうだな、とはいえ実現するのは難しいかもしれない。公式ではないが、ユーリにはフリーディア反逆罪として指名手配がかかっている。
こちらで目撃情報を撹乱しているおかげか、今のところユーリたちがアージアにいることは気づかれていない。すぐにとはいかないが、こちらもミアリーゼ様に働きかけて、何とか交渉のテーブルに着いてもらうよう説得するよ」
「ありがとう叔父さん……指名手配、か。やっぱ、かからない方がおかしいよな」
叔父に会った時の対応で、何となく分かってしまった。社会的立場でいえば、死んだも同然。なのにウィリアムは、甥の立場を守ろうとしてくれている。
「叔父さん、俺たちを匿うのは、やっぱり危険じゃないか?」
「安心しなさい。表向きだが、ユーリをクロイス家から勘当し、捜索に全面協力すると言ってある。証拠がない以上、ミアリーゼ様も表立って、クロイス家を罰することはできないよ」
あくまで叛逆は、ユーリ自身の意志であり、クロイス家は関与していない。
実際にその通りなので、ミアリーゼも納得せざるを得ないのだろう。表向きとはいえ、ユーリはもうクロイス家ではなくなってしまった。
「革命軍ルーメンの存在を隠れ蓑にすれば、暫くは安全だろう。それに、統合連盟軍側も治安維持部隊総本山である都市アージアを敵には回したくない筈だ」
「そっか。それで、この後俺たちは何処で匿ってもらうの? いつまでもここにいるわけにもいかないし、時間も時間だからそろそろ移動した方がいいんじゃ……」
今いるアージア市庁舎内で、寝泊まりするわけにもいかない。
「確かに、良い子はもう寝る時間だ。頃合いだし、そろそろ出立しようか。君たちを匿う場所にも宛がある――というより我が家……クロイス本家しかないのが現状だけれどね」
クロイス本家、つまりユーリが住んでいたクロイス邸とは別の、ウィリアムが現在住居としている場所のことを指す。
「叔父さんの家って、確かに広いしセキュリティは万全だけど、バレたらマズいんじゃ……というか叔母さんやヒナミ、アイリまで巻き込むつもりなのか!?」
「家族は今、妻の実家に預けている。それに私の家なら、治安維持部隊本部と地下が地続きに繋がっているから、万が一の場合はそこから逃げ出せる。
今、本部に駐在している兵士たちは、殆どがクロイス家の私兵だ。異種族である君たちのことも既に報告を済ませてあるから安心してくれ」
治安維持部隊本部。そこは、元生物学研究所であり、ユーリとシャーレが出会った場所。二人は思わず顔を見合わせる。
「とはいえ、外に出ることはできない。動く時は、必ず家の者に一報を入れ、エレミヤさんの転移を用いることを徹底してくれ。
皆には不便な生活を強いることになるが、必ず私が何とかしてみせよう。だから君たちも、万が一が起きた場合に備えて準備をしておいてほしい」
「「「「「はい!!」」」」」