第143話 終焉の光
――魔術機仕掛けの神。
ユーリ・クロイスが、人類の祖について分かっていることはその諱だけ。緋色の亡霊を介してではあるが、こうして目の当たりにした今、人間とも異種族とも違う、一種の高次元的存在なのだと思い知らされる。
生きている次元が違う。二次元が、三次元に干渉できないように、どうしようもなく手の届かない遠くにいると感じる。
だからだろうか? 母なる神が現れた瞬間、無意識に膝を折り頭を垂れてしまったのは。オリヴァーとアリカも自身の行動に驚いていながらも、立ちあがろうとはしていない。アリカは特に制限解除を発動した反動が返っているだろうに。
エレミヤ含めた異種族たちも、口を開くことは憚れると感じたのか、固唾を飲んで状況を見守っている。
『私を神と崇める必要はありませんよ? こうなる術しかなかったから、そうなったまで。ファルラーダが言ったように、神など所詮偶像に過ぎませんから」
テスタロッサの目を介して、担いだままの瀕死のイリスを見やり、次いでエレミヤたちへ視線を向けてデウスは言う。
『正直、あなた方異種族のことを侮っていました。神がいない以上、文明……技術力で勝る子供たちに一矢報いることは不可能だと』
予想外に種族連合がフリーディアを追い詰めてしまった結果として、魔術機仕掛けの神自らが表舞台に立つことに。
『本来であれば、このままエレミヤ討伐をテスタロッサに任せようと思っていましたが、ミアリーゼに止められました。
もちろん、あなたを慮ってのことではありませんよ? 直接自分の手で殺さないと気が済まないようなので、あの子を気遣ってのこと』
「………気が合うわね。私も丁度、ミアリーゼ・レーベンフォルンを引っ叩きたいと思っていたところよ」
イリスを人質に取られて尚、強気かつ毅然とした態度で返すエレミヤだが、内心疑問で溢れ返っていることだろう。
『そうですか。ミアリーゼにも伝えておきましょう』
判明したことといえば、この場でエレミヤは殺されないということだけ。フリーディアの祖が直接戦場に出てきた以上、警戒せずにはいられない。話して帰るだけなんてことはない筈だ。
『ユーリ、そしてオリヴァー、アリカに対してもこの場で処するつもりはありません。テロリストもそうですが、私は、どうにも子供たちに甘いところがあるようで、未だに反抗期程度に捉えている節があります』
エレミヤたち異種族とは違い、ユーリたちに対しては慈しみを込めて言葉を投げかけるデウス。
「なら、あんたは何しに表に出てきたんだ?」
誰もが思っているであろう疑問を、ユーリは無理矢理頭を上げて問いかける。
「俺たちの背信行為に怒っているわけでもない。テロが子供の反抗期だって? 母親気分なところ悪いけど、こっちは命懸けで戦ってるんだよ!
答えろ、デウス・イクス・マギア! あんたはどうして異種族を滅ぼそうとするんだ! 何故手を取り合おうと考えない!?
あんたが俺たちのトップなら、一言命令すれば全ての片が付く筈だ!!」
ミアリーゼが、エレミヤを殺す? そんなこと絶対にさせない。これ以上、戦火を広げないためにも、このチャンスは絶対に逃せない。一縷の望みにかけて母なるデウスに問いかける。
『ユーリ、あなたはシャーレにとてもよく似ていますね。あの子も私に問うていましたよ、何故人は悪を忌避するのか? 悪は誰もが持ち得る感情だというのに、曝け出すことの何がいけないのか、と』
「シャーレ、だって?」
ユーリ・クロイスと、シャーレ・ファンデ・ヴァイゼンベルガーが似ている? シオンを陥れ、数多の異種族を不幸にした最厄の化身たる彼女が、自分に?
『甚だ遺憾だと態度に現れていますよ? 正直、私には同じに聞こえます。
悪いことをいけないことだと人々の常識として成り立つ社会においての異端。私は、子供たちの善悪全てを受け入れますが、子供たちにそれを強いることはしません。
ユーリ、何故我々が異種族と手を取らないのか答えは簡単です。愛する子供たちの庭を荒らす盗人に手を差し伸べる、そのような事態を認めるわけにはいかないからです』
「…………」
子供に分かりやすく噛み砕いた説明をする人類の祖に、ユーリは絶句する。
『テロリストに手を差し伸べるのなら一向の余地がありますが、異種族はあり得ません』
「どうして、テロリストは例外なんだよ……?」
『犯罪を犯した子供たちを嫌いになれないからです。あの子たちは、あの子たちの考えのもと行動している。とはいえ家を荒らされ続けるわけにもいきませんので、正義感のある子供たちに対処をお願いしているだけのこと』
あぁ、ようやく分かった。人類の祖の価値観は、この世界で生きる誰よりも違うのだ。そもそも世界を見ている視点が違うのだから当然か。説得は無意味だと悟った。
「そうか……あんたはこの世界から異種族を一掃して、世界を綺麗にしたいだけってことか。これまで二千年以上の時をかけて、これからも続けるつもりで!」
『その通りです。例え億年の年月がかかろうとも、世界を元の姿に戻さねばなりません。それを私の子供たちが成し遂げる。その過程を見届けるために、私は魔術機仕掛けの神として君臨し続けているのです』
「「「「「…………」」」」」
途方もない遠い年月を、さも当然のように語る人類の祖。ユーリたちからしたら感覚が違いすぎて――だからこそこの人は神として君臨し続けていられるのだ。その精神力と渇望は、この世界の誰よりも凌駕していた。
異種族の歴史に出てきた神は、途方もない年月を生きて、最終的には耐えられず自殺したというのに。
『本来、私が出る予定はなかったのですが、西部大陸における異種族たちは、"地下都市国家アーガルダ"が遺した負の遺産が殆どのようです。
よって、"地下都市国家フリーディア"である我らが矢面に立ち、女神の審判を下す必要があるのです』
「「「「「!?」」」」」
デウスの言っている意味の殆どを理解できなかったが、女神の審判というその言葉に、何か恐ろしい事態が巻き起こるのではと、悪寒が奔り抜ける。
フリーディア統合連盟軍は、歴史上最大の被害を被った。六万を超える我が子を失ったデウスの怒りは計り知れない。罪を犯した異種族に罰を。贖う暇すら与えず、審判は下される。
『聞こえていますね、グレンファルト。あなたに一度だけ、光核衛星兵器の使用権限を与えます。照準はエルフ国へ――断罪の極光を以て、世界中にフリーディアの偉大さを思い知らせなさい』
その瞬間、この場に集うユーリ含めた種族連合の面々は、エルフ三千年の歴史の終焉を垣間見た。
◇
「御意」
そして、人類の祖――デウス・イクス・マギアの主命を賜ったグランドクロス=グレンファルト・レーベンフォルンは、果てのない死が散乱する荒野で静かに寿いだ。
「光核衛星兵器・起動」
魔術武装とは根幹が異なる、旧時代の衛星兵器を解き放つ時がきた。グレンファルトの隣で、肩に腕を置いて状況を見守る反統合連盟政府組織ルーメンの主犯格たるナイル・アーネストは、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「ようやくだな、グレンファルト。思った結果とは違うが、魔術機仕掛けの神を表舞台に引き摺り出せただけでも上々だろ。
加えて厄介なエルフ国も一掃できるなら、俺らの勝利は確定じゃね?」
「そうだな」
グレンファルトは頷くと同時、遥か彼方の上空――大気圏すら突破し、静止衛星軌道上に存在する巨大な衛星兵器へ目を向ける。
――光核衛星兵器。
魔術機仕掛けの神が開発した衛星兵器。未だ人類がこの世界に誕生する前に製造されたとされる兵器が何を齎すのか? それを知るのは造ったデウス本人と、グレンファルト、ナイルしかいない。
「光核衛星兵器は、魔力の必要のない禁断の兵器。これを発動したら最後、大地は永遠の死に呑み込まれるだろう。
恨みはない……咎は背負う。俺の目的を果たす為に、お前たち妖精人族には犠牲になってもらうぞ」
グレンファルト・レーベンフォルンにとって、エルフは目的の最大の脅威となるであろう敵だ。彼らを滅するには、禁忌の力を解き放つ方が手っ取り早い。
「――核破壊光線」
それは、終焉を告げる破壊の狼煙。光核衛星兵器地表へ向け照射された大光柱がエルフ国を、半径百キロメートルに及ぶ大地を呑み込んだ。
刹那――世界そのものが、阿鼻叫喚の地獄に包まれた。
終末と終焉を告げる核の光が、空を覆い尽くし、地上にいるすべての命を一瞬にして根絶やしにした。炎々と天に昇るキノコ雲を遠目に、グレンファルトは戦慄する。
「禁断の兵器とはよく言ったものだ。これで六十パーセントの出力だと? こんなものが二千年も前から開発されていたなど、末恐ろしい限りだ」
核破壊光線の影響範囲外に逃れているとはいえ、遠目からでもその威力と恐ろしさは充分すぎる程この身に伝わる。
禁断の兵器を解き放ってしまったことに後悔はないが、デウスが太古の昔に造り上げていたという事実を改めて認識し、戦慄する。
「だからお前が、世界の歪みを破壊するんだろ? お前の父親は、老害で変化を恐れていた。他にできる奴も、やろうとする奴もいないから、お前が立ち上がった。
後はみんなの目を覚させて、首都エヴェスティシアを堕とすだけ」
そうしてナイルは、勿体ぶるように真実を口にした。
「そうだろ? 我らが革命軍ルーメンのリーダーさんよ」
そう、反統合連盟政府組織ルーメンを率いていたのはナイル・アーネストではない。あくまで設立に関わった主犯格――実行役が彼というだけで、真の黒幕は他にいる。
「あぁ、そうだ。そのために、俺は極光の英雄になったんだ」
グランドクロス=グレンファルト・レーベンフォルン。
ユーリ・クロイスも、ミアリーゼ・レーベンフォルンも、ファルラーダ・イル・クリスフォラスの目すら欺いた真実が此処にはあった。
「で、こっからどうするよグレンファルト?」
「このまま勢いに乗せて行きたいところだが、想定よりミアリーゼたちの動きが早い。ユーリがいる以上、暫く西部戦線に居座ると読んでいたが、アテが外れたようだ」
「この状況に持ち込めたこと自体ラッキーのオンパレードだからな。本人には悪いが、ユーリ・クロイス様様ってわけだ。
あいつ聡いから多分気付くぜ? 下手したらお姫様含めて、三つ巴の大混戦だ」
ナイル・アーネスト、ダリル・アーキマンと接敵したユーリ・クロイスは、間違いなく裏にいるグレンファルトの存在に気付く。
「元々、ルーメンに勧誘するつもりで軍に入れたんだが、寄りにもよって異種族との共存共栄を目指すとは思わなかった。
本当、あいつは昔から俺ですら予想の付かないことをする。油断は禁物だが、エレミヤが生きている以上、彼女の千里眼を利用すれば、こちらの優位に働く筈だ」
「うへぇ、また俺がやんのかよ」
「そうだな、できるのはお前しかいない。だから頼んだぞ、ナイル」
「俺たちの誓いを果たす為に、だな」
二人のやり取りを、その意味を知る者は誰もいない。彼らは常に盤面外で勝負を行なっている。だからこの戦いは謂わばルーメン――グレンファルトとナイルの勝利という形で幕を閉じる。
「俺は、この世界の歪みを破壊し、0から新たな新世界を創造する。それが為された暁には、ナイル――今度こそお前の存在を終わらせる」
「へっ」
分かってんじゃん、とナイルは嬉しそうに鼻を鳴らす。彼ら二人は強い絆で結ばれている。それは友情からくるものなのか、宿命なのか本人たちすら分かっていない。
「んじゃ、俺ももう一頑張りしますかね。自由闊達、自由気儘、自由奔放、自由放任なまま終わりを迎えるために」
「頼んだぞ」
グレンファルト・レーベンフォルン、そしてナイル・アーネスト。彼らの歩みは世界を滅ぼすまで決して止まらない。正義も悪も関係ない、歴史という歪みそのもの全てを壊して0にする。
それが、革命軍ルーメンの――二人が築き上げた理念だった。
◇
人間と異種族が手を取り合い、共存共栄していく世界。たった一人の少年から始まった一滴の雫が世界に零れ落ち、いつしか大きな波紋となって広がっていった。
エルフの姫巫女、エレミヤの協力のおかげもあって、前人未到の種族会談へと持ち込んだというのに……。
「その結果が……これ?」
遥か彼方の天から降り注ぐ、終焉の光。エルフが三千年にも渡り、築き上げてきた過去、現在、未来、その全てが一瞬でこの世から消え去った。
周囲に轟く慟哭の嵐は留まるところを知らず、現実離れしたこの光景が、悪夢ではないのだと嫌でも思い知らされる。
「そうだ、奴は……今のあれが何なのかデウスに――」
壮大且つ、規模が大きすぎて逆に冷静になってしまっている自分がいる。一つの世界の終わりを呆然と瞳に焼き付けて、ユーリは元凶たるデウス・イクス・マギアへ詰め寄ろうとするが。
「………」
気が付けば、誰もおらずぽっかりと荒んだ虚無が広がっていた。デウス・イクス・マギア、テスタロッサが、イリス共々忽然と姿を消していたのだ。
「いつまでもここにいる意味はない、か。だからってッ」
イリスごと消えたということは、彼女は連れ去られてしまったのだろう。世界のことを何も知らず、ただ分かっている者だけが勝利を掻っ攫っていった。
デウス・イクス・マギアは、撃てと指示した。誰に?
「グレンファルト様……」
そうだ、グレンファルト・レーベンフォルン。彼女が命を発してから、殆ど間がなかった。一切の躊躇なく、大量破壊兵器を実行できる精神性は、本当に英雄といえるのか?
「あの人の性格を考えると、デウス・イクス・マギアの思想に同意しているとは思えない……だって、グレンファルト様は俺に言ってくれたんだ。
"昔の俺は、レーベンフォルン家の力に頼らず自分の力だけで世界を変えてやろうと思っていた。頭の固い父に反抗して、一から自分の力でやり直したんだ"って、そう――」
そう、だから絶対にあり得ない。身の程知らずと言われるかも知れないが、グレンファルトに対してある種の親近感が湧いていたのだ。
どうしようなもない何かに抗いたくて、親に反抗して家を飛び出したことからも二人は共通している。
だから、彼の助言に従って軍に――。
周囲に飛び交う激しい慟哭の渦の中で、ユーリだけがバラバラになったピースを集めようとしている。
ユーリへ軍に入るよう推薦したのは、他ならぬグレンファルト本人。まさか自分に神の因子が宿っていることを知っていたのか? 戦闘経験のない素人を、最前線へ送っても死なないと確信していたんだ。そうじゃなければ、辻褄が合わない。
「まさか、グレンファルト様とナイル・アーネストは、グル?」
あまりに突飛な発想だが、そうだという確信があった。
反統合連盟政府組織ルーメン。デウス・イクス・マギアの支配する人類たちを解放することを目的として設立された組織。
こちらから見ればただのテロリストだが、向こうからすれば、人類解放戦線として、デウスの支配から人々の目を覚まさせようとしている――という義が成り立つ。
そう考えれば、ルーメンのリーダーがグレンファルトであることは容易に辿り着く。いや、彼を知るユーリ・クロイスだからこそ辿り着いた答え。
「少し考えれば分かることだったんだ……。なのに無意識下で候補から外してた。
極光の英雄であるグレンファルト・レーベンフォルン様こそが、俺が倒すべき本当の敵だったわけかよ」
ユーリが、異種族と手を取り合うとまでは予想していなかった筈だ。グレンファルトは理想主義者ではないため、突飛な発想は絶対にしない。恐らく、ダリル・アーキマンを介してユーリたちをルーメンに勧誘するつもりだったと考えた方が納得がいく。
「本当、どいつもこいつも高みの見物決め込むのが好きなんだな。俺もファルラーダさんと同じ意見だよ、コソコソせずに堂々と姿を現せよ」
敵であることには変わりはないが、テロリストたちに比べたらファルラーダ・イル・クリスフォラスは分かりやすくてユーリの性格には合っているし、ダニエル・ゴーンが慕うのも納得がいく。
「これ以上、落ち込んでなんていられないよな……ダニエル」
ドクドクと背中から血を流しながら、揺ら揺らと立ち上がるユーリに視線が集まっていく。
祖国を理不尽に奪われ絶望する者、悲しみに嘆く者、憎悪の念を燃やす者、フリーディアの圧倒的力を前に心が圧し折れる者、数え出したらキリがない。エルフ、ドワーフの負の感情の向ける先は、この場にいる異端であることは当然な訳で。
「俺にできることはもう、戦うことだけ。魔術機仕掛けを、ナイル・アーネストを、ミアリーゼ様を、グランドクロスを潰す。あの大量殺戮兵器は絶対に撃たせちゃダメなんだ!
ナギ、アリカ、オリヴァー、サラ、シオン、ミグレット、そしてエレミィ!!」
「ひっぐ、ユー、リ?」
姫巫女としての矜持を砕かれ、近衛騎士を連れ去られ、愛する故郷すらも無くし、完膚なきまでに叩きのめされたエレミヤ。彼女だけじゃない、エルフもドワーフもこれ以上誰も悲しませたくないから。
そんなユーリの想いが伝わったのか、エルフ、ドワーフたちから放たれた敵意が霧散していく。
「行こう、人類始まりの地――首都エヴェスティシアへ!
イリスを連れ戻して、今度こそ全てを終わらせるために……弱くて情けない俺に力を貸してくれ!!」
傷の痛みすら無視して、ひたすらに頭を下げて懇願するユーリ。彼は、神や王など人を率いる器ではない。そもそも上に立つ者は弱さを見せてはならない、決して自分を晒してはいけない。そうでなければ臣民は憧れない、従わない。
しかし、ユーリは自分自身の弱さを全て曝け出して、己は弱者だと告げる。だというにも関わらず、エレミヤたちはこの人に付いて行きたいと思った。
「……神」
ポツリと、一人の異種族から言葉が零れ落ちた。何故その言葉が漏れたのか? 彼らが崇める神とは違うと分かっているのに、何故かユーリをそう呼ばずにはいられなかった。
彼は、彼こそが、我らの救世主なのではないか?
「いいや違う。俺はただの臆病な半端者だよ。
俺が救うんじゃない、皆んなで一緒に世界を守るんだ!!」
ユーリ・クロイスの宣言は、終焉の光を目の当たりにし、絶望した異種族たちの心に再び炎を激らせた。悲しみは消えない、憎しみは依然として心にあるが、それでもこのまま大人しく殺されてやるわけにはいかないから。
どんなに絶望的な状況でも、決して諦めない不屈の心。最後に勝ってやるために。だからこそ、ユーリたちは行くのだ。
エレミヤは涙を流し、何度も何度も頷いた。イリスを取り戻し、フリーディアとの戦争を終わらせる。ユーリと力を合わせればきっと叶うと信じてる。
ナギは、ユーリと一緒に戦えることに胸が熱くなった。彼が頼ってくれたことが嬉しい、どんなに絶望的な状況に立たされても諦めない。身も心もユーリに捧げると誓った。
アリカ・リーズシュタットは、自身の力の無さを悔いた。グランドクロス=テスタロッサ。彼の正体に確信を持った彼女は、次こそ必ず勝つと奮起した。
オリヴァー・カイエスは、たった一つのささやかな願いを叶えるために、命をかけると誓った。彼の心には、亡くなったダニエル・ゴーンの意志が強く受け継がれている。
サラは、そんなオリヴァーを支えると心に違う。もう守られるだけなんて嫌だ、今度こそ自身の手で皆を助けるんだと。
ミグレットは戦えない分、サポートでユーリたちを支援する方針だ。あの日、ユーリと共にシオンを助けたように、もう一度奇跡を起こしてやると奮起する。
シオンは、自分が足纏いだと自覚している。誰かに助けてもらわないとまともに戦えない。だけど、ユーリはシオンの名前を呼んでくれた。血は繋がってないけど、妹として彼を支えると心に誓う。
だから――。
「「「「「「「うん!!」」」」」」」
人類始まりの地――首都エヴェスティシア。そこに全ての解えが眠っている。今度こそ、完全無欠の大円団を迎えるために、戦い続けるとユーリたちは心に誓った。