表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

雨が上がる時⑧

本格的に雨の季節が始まってからは戦争をする事などはなくて、軍人のレザファさんもこの街にいる筈だ。


『いる筈だ』と言うのはあれからその姿をとんと見ていないからだった。


(ただ数日の事なのに。数日間姿を見掛けない事なんて今までなら『よくある事』と気にも留めなかったのに………あの日、自分で否定したのに彼の姿が見えないだけでこんなに落ち着かなくなるなんて。それでも気不味くなるよりはよっぽど良いよね)


「会いたいな………」と呟きながら開店の準備をしていると音を立てて入り口の扉が開いた。



「お父さん?」


「いや…」


「え…あ、」


そこに立っていたのはお父さんじゃなくてレザファさん。驚いた私は「いらっしゃいませ」とか的外れな事を口にしていた。


「ラム………少し話したい事があるんだが、時間を貰えないか?」


(どうするの私。レザファさんに会いたかった癖にこの展開は嫌だとか。でもどれだけ悩んでも迷っても結局、彼を拒む事なんて出来ないんじゃ……)




「………分かりました」


小さく返事をすると明らかにホッとして見せる。そんな心境を図ればなんだか可愛く思えた。






連れられて来たのはレザファさんの部屋だった。


(流石にそれは……)


あの日と同じ彼の部屋の匂い。


あの日と同じ……寝台。


瞬間的にあの日が記憶が甦って逃げ出したいのに私の足はまるで棒の様に動かない。なので『逃げる事が叶わないなら』と、もう誤魔化す事も出来ずにずるずると壁を背に崩れ落ちた。


恐らく勝負は部屋に入った一瞬だった。



(15/11/28→24/03/11)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ