雨が上がる時⑦
「取り敢えず何か軽い食べ物を」とテーブルに着いた彼に食事を運びながら軽く話し掛ける。
「昨日のお酒は残って無いんですか?二日酔いとか身体は大丈夫?」
「あぁ。おかげさまで…──────!」
そう言って席に近付いた瞬間に腕を取られる。驚いてレザファさんを見ると目を大きく見開いていた。
「な、あのっ」
「ラム、ちょっと来てくれ」
そのままレザファさんに店の外に連れていかれて裏側の人気の無い所で壁を背にする形で向かい合う。
「あの…何なのでしょう。私仕事が……手、も痛いですし…」
「あっ、す、すまない」
困惑した瞳を向けるとパッと手を離してくれた。
(突然どうしたの…?ま、まさか………)
「こんな事を聞くのは可笑しいんだが、昨夜おれの部屋にいなかったか?」
ドキン、と一瞬心臓が止まった気がした。
嫌な汗が流れる。
「い、いいえ?私がですか?そんな事ある訳無いじゃないですか」
「………………………………………」
「あ、あの……?」
その瞳は私を真っ直ぐに見つめて何かを一生懸命に探っている様だった。
(彼が探る─それはきっと昨夜の記憶)
「あの、私、そろそろ仕事に戻らないと……」
その横を強引に擦り付け様とした時に微かに触れただけで熱を帯びそうになる肌を必死に隠した。
(レザファさんが気付いたかは分からないけれども、私からそれを言う事は絶対に無い。あれはお互いに一夜の夢だったんだから)
(15/11/28→24/03/11)