人と魔族
数十分後…
2人はめちゃくちゃ離れていた。
ここに来て、色々と恥ずかしさが出てきてしまったのだ。
「あの…勇者様…出来たら二人に聞いて欲しいのですが…」
「悪い、ちょっと待ってくれ」
「……」
「ねぇってば!早くー!」
「待ってってば!///」
(あー!!恥ずかしー!勢いで色々言っちゃったし!さっきも…あーー!!!)
キュリアは顔を真っ赤にして、頭をブンブン振っている。
「もー!めんどくさいなー!人間ってー!」
(あー、本当に恥ずかしい!)
地面に頭を付けてグリグリしているキュリアに対し、カインが警告をする。
「あんまりそんな事すると、ハンナが怒るよ?」
「ハンナ?」
「この子だよ」
と、下を指さす。
「ドラゴン、今乗ってる」
「…え?」
すぐさま左右を確認する、すると遠くの方に大きく動く翼…の様な物が見える。
(そういえばダンジョンにドラゴンが入ってた様な…)
「…こんな大きかったっけ?」
「狭いところ行く時は小さくなってもらってるの!」
「そんな能力が…?」
「うん、普段はこのサイズだよ、この辺も良く飛んでる」
「えぇ!?見た事無いよ!?」
「いつも姿隠す魔法使ってるからね、無いと攻撃されそうで怖いもん」
(そういえばそんな呪文あった気がする…覚えてないけど…)
キュリアは攻撃呪文しか覚えてこなかった事を、ちょっと後悔した。
そんなこんなで二人は落ち着き、エリスが三人を集めて話を始める。
「では、改めまして、私はエリス、この子はカイン」
「いえーい!」
「悪魔の末裔にして、魔王軍の幹部、そして魔王様の側近です」
「え!?魔王の!?」
キュリアが驚きの声を上げる、まだその話は聞いていなかったのだから当然だろう。
「て、敵…?」
「いえ、違います、その逆
我々は貴方達に協力して欲しいんです」
「協力…?何でだ?」
色々助けてもらったが、魔王軍という事でカルロスはまだ警戒を解こうとはしない。
それをエリスも当然見透かしている、しかし「そんな事してる場合では無い」と言うかの様に口を開く。
「…貴方達はこの世界の本来の姿を…知っていますか?」
「…本来の姿、この世界に何か隠されてるの?」
エリスは暫く沈黙し、ゆっくりと口を開く。
「この世界は本来、貴方達人間、我々魔族、その二つのバランスに寄って成り立っていました」
「…バランス?」
「本来、魔法と言うのは我々魔族だけの物でした、貴方達が使うファイヤやアイス、ヒールすらも元々は我々の祖先が人間に教えたものです」
「教えたって事は…つまり…」
「そうだよ!昔は二つとも仲良かったの!でもねー!」
カインがと話に割って入る。
「こら、カイン、ややこしくなるから」
「ぶー!」
不貞腐れながら、またエリスの足元で三角座りをしている。
「…その二つの種族は協力関係にあった、魔族は魔法と魔力を持てる技や肉体を人に与え、人は道具や知恵を魔族に与える
そうやって世界は成り立って来た」
「……」
(つまり…俺達にも僅かに魔族の血が流れてるかもしれないのか…?)
「しかし、ある日
人間が魔族を裏切り、侵攻を始めたのです」
「人間が…?」
「酷いよねー!人間!ちょっと力付けたら自分のだって誤解してー!」
またまた割って入るカイン、エリスは少し制止するがその言葉を否定はしない。
「…その通り、人間は得た魔力、魔法を使い、魔族を大量に殺した
我々は人間より肉体は強いです…が、最先端の文明と魔法を駆使する人間達には流石に分が悪く、じわじわと追い詰められていきました」
「え…じゃあ…そのまま滅びたんじゃ…」
「…いえ、魔族は滅びませんでした
何故なら"勇者"が現れたのです」
「「勇者が…!?」」
「はい、この場合は魔族に生まれた勇者、言うなれば"魔族にとっての勇者"です」
「ねぇ、エリス…!」
遠くの方でカインが呼びかけているが、エリスはいつものだと無視し、キュリアとカルロスは驚きからその声が聞こえていない。
「な、何故魔族の方に生まれるんだ…?伝説じゃ勇者は全員人間の方に生まれるって書いていたのを…本で…」
「それが勇者の本来の役割なんです」
「…勇者の役割?」
「…本来、勇者とは…」
「ねぇ!エリスってば!」
と大声でカインが叫ぶ。
「はぁ…!カイン!今、大事な…!」
「下の方で村が燃えてるよー!」
「はぁ?今はそんな事…」
「違うの!」
「勇者の住んでた村が燃えてるの!!」
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