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赤と青の空

ヒュォォ…

「ん……ぅ…」

風切り音を目覚ましに、目を覚ます。

青い空、雲ひとつ無い清々しく綺麗な晴天。

ここは、天国だろうか…

そんな事を寝ぼけた頭で考えていると、徐々に背中に違和感を覚える。

ちょっとザラザラしている、砂利と言うには粒が少し大きいし、動かしても粒が動かない。

それにやたらと風が強い、頭が覚醒するにつれて、風切り音も大きさを増している。


「ん?あ!起きた!」

またどこかで聞いた様な声が耳に入る。

「ねぇねぇ!エリス!勇者様起きたよ!」

声の主はさっきの褐色肌の少女、目が覚めたのをみるや嬉しそうに遠くに手を振り、呼びかける。


「ねぇ!聞こえる!?自分の名前は分かる!?私のは!?私の名前は!?」

まだ眠気が残る頭で怒涛の質問攻め…と目の前の知らない少女の名前を聞いてくる、多分言ってた気がするが思い出せない…


「分かるわけ無いでしょ、貴方はあっちの方を見てなさい」

そう言って、どこからともなくもう一人の少女が現れる。

「はーい!」

そのままどこかに走り去る褐色肌の少女、それを呆れつつも黒装束の少女が話しかけてくる。

「…ったく、ごめんなさい…あの子初めて人間に会うもので…距離の取り方を知らないんです…」

「……い、いや…気にしていないが…」

「根は良い子なので、大目に見てあげてください」

そう言って、横に座り額を触り、目を瞑る。

「……良かった、記憶も問題無さそうですね」

何をしたかは分からないが、どうやら記憶を見る力を持つらしい

「あ、ご紹介が遅れました

私の名はエリス、あの子はカイン

悪魔の末裔にして、魔王様の側近です」

その言葉を聞いて、身体中に衝撃が巡った。


悪魔の末裔…それと魔王の側近という事は恐らく敵…

それを倒すのが俺の目的…敵も俺を倒すのが目的のはず…なのに何故向こうは俺を助けた?


「…混乱しているみたいですね、無理もありません」

「……キュリアに…何もしてないだろうな…!?」

言った てることが本当なら、キュリアは人質になる筈だ、すぐに殺されはしないだろうが何をされるかまるで分かったものじゃない。

「キュリア…あぁ、貴方が手を握った方ですね、あの方は無事です、まだ目覚めていませんが直に…」

「起きたよ!!エリスってば!」

「噂をすれば…」

「自分の名前分かる!?私のは!?」

「コラ!カイン、止めなさい!そっちに行くから待ってて!」

「キュリア…!」

「駄目!」

急いで起き上がろうとするが、身体中に痛みに襲われ、上半身をちょっと上げることしか出来ず、立つこともままならない

「お前達…キュリアに何かしたら…!」

仰向けで動けない中での、精一杯の去勢、きっとこれ以上無いほどに滑稽だろう。

「大丈夫です、寧ろ貴方の方が危険な状態なんです、落ち着いて下さい…!」

「くっ…!」


自分の不甲斐なさが嫌になる、こいつらは助けてくれたが目的が分からない以上…キュリアから目を離す訳には…


「ゆっくり、危ないからゆっくりね」

向こうから別の少女の声が聞こえる、少し聞き取りずらいが、こちらに近づいている様だ。

そして…



青空を遮るように、視界の端に綺麗な赤髪が視界に入る。

「カルロス…!」

聞きなれた声に、見慣れた顔。

少女に体を支えてもらいながら、一歩一歩こちらに歩いてくる。

こちらも支えてもらい、徐々に上半身が起こして手を伸ばす。


二人の目は決してお互いから離れず、涙が潤み、口からは喜びの声が漏れようとしていた。

だが二人は耐えている、その手が振れるまでお互いの生きている証を感じ取るまで、その感情を出そうとはしない。


ゆっくりと、着実に距離を詰める。

ザラザラした地面の感触、吹きつける風。

今の2人には、そんな事を感じる余裕はなく、ただお互いの顔を見つめ合う。


残り…三歩…

……二歩……一歩…

そして


その指先が触れた瞬間、キュリアは崩れ落ち、先程までまともに動かなかったカルロスの体が起き上がり、キュリアを全身で支え、抱きしめる。


そのまま座り込んだキュリアもカルロスの首元に手を回し、溢れるように涙を流す。


「…良かった…生きてて……本当に良かった…!」

「うん…!うん…!」

互いの心を互いへの想いが埋め尽くす。

痛い程抱きしめようと、その痛みこそが生きている証であり、二人の思いの強さでもある。

人目もはばからず泣く二人、周りにいる二人の少女の事すらも忘れ、数十分間、お互いの存在を感じあうのだった。

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