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二人の少女

今更ですが、世界観は皆さんご存知の感じのThe・異世界です。

「…カ…ロス…!」

誰かの声だ、さっき聞いたような…

「……きこえ……目を…ま…て!」

急激に目の前が明るくなり、声が鮮明になり始める。

「カルロス!!」

「!!」

驚いて、目を開け声の方を見る。

「良かったぁ…目が覚めた…!」

と心底安心した様なキュリアの表情が目に映る。

嬉しさもあるが、それ以上に

「キュリア…お前…逃げてなかったのか!?」

驚きと心配の方が勝ってしまう。

当然だ。

飛ばされる直前は、重いからとアイテムは殆ど俺が持っていた。

しかもそれらは全て、粗雑な強制転移によって転移に失敗し、全てバラバラになってしまっている。


確か落ちる寸前にキュリアが持っていたのは拾った低級の回復薬が2本と、毒消し1本、魔法回復薬の飲みかけが1本と満タンが1本だ

この状態で、しかも魔法使いが一人でダンジョンに取り残されているのに、帰らないのははっきり言って自殺行為だ。


何回層進んだのか…それ以上にどのくらい経ったのだろうか、心配事と疑問が尽きない状態だが、今はそんな事を行ってる時間は無い。


「…ごめんね…ここに来るまでに魔法回復は…全部飲んじゃった…あったら貴方のヒールで…もう少しは楽になれたのに…」

と、申し訳なさそうな顔をしてキュリアが倒れる。


「…おい!回復薬は…!?」

咄嗟にそれを受止め、何かないかと当たりを見渡す。

近くに落ちているのは空の毒消しが1本…そしてこちらも空になった回復薬が…2本。

「…もう…無いや…カルロスを助けたくて…急いで来たから…えへへ…」

つまり、魔法使いがダンジョンを一人で、尚且つ回復もせずに…

よく見たら、右腕から血が流れ、だらりとしていて動いていない、足も貫かれて血を流している、ここまで歩くのも辛かった筈だ…

「…馬鹿野郎…何で…!」

情けなさと申し訳なさが入り交じった慟哭に近い嘆きが口から漏れる。

「だって…」

キュリアは一瞬言いよどみ。


「…だって…好き…だから…」

「…!」

「…大好きだから…助けたくて…」

キュリアの顔色が少しずつ血の気が失せていく。


ポーチもポッケも全部何も入っていない、恐らく毒を受けて薬を飲んだ、だけど回復が出来ていないから、身体中にダメージが溜まりに溜まって、限界が来たのだ。


「…キュリア…!」

「………ねぇ…最期に…」

「馬鹿野郎…最期とか言うな…!」

「……カルロス…お願い…私の望み…聞いて…」

「…後で…死ぬ程聞いてやる…だから今は…!」

と言いかけた所で、キュリアが入ったであろう入口らしい方から足音が鳴る。

ドシン、ドシン…

(ゴーレム…!?いや…それにしては…)

思考が上手く回らない、だが一つだけ分かる。


俺では勝てない。

例え万全でも怪しい相手であるという事だ。

大きい入口を更に無理矢理広げ、怪物がその姿を見せる。


「………マジ…か…」


…ドラゴンだ。


一対の大きな羽を無理矢理折り畳み、窮屈そうに広げた穴を通る。

「ちょっと待ってろ…キュリア…すぐに片付ける」

腕に抱えていたキュリアを下ろし、がたつく体で剣を持つ。

「カルロス…駄目だよ…あんなの…」

起き上がろうとするが、起き上がる力もないキュリアは、身を捩ってうつ伏せになるのが精一杯で、もう戦える状態では無い事を示していた。

「そうだよー、君じゃ無理だからやめなって」

「…!!」


うつ伏せで倒れるキュリアの横にいつの間にか褐色肌、赤黒い髪色の黒色の妙な服を纏うキュリアより少し幼めの少女が屈んで、キュリアと共にカルロスの方を見ていた。


「ま、とりあえず」

そういうと少女はキュリアの頭に手を当て、その瞬間、キュリアは糸が切れた用に意識を失う。

「貴様!!」

怒りに支配され、気力を振り絞って少女の元へ向かうが、足がフラフラでまともに走れていない。

ようやく少女に近づき剣を振るが、軽く避けられる。

「だから、やめなってば」

「キュリアに何をした!」

「寝かせただけだよ!君達を助けに来たの!!」

「騙されないぞ!キュリアに何をした!?」

「あーもー!今どうしようも無いからこうするしかないの!!」

一心不乱に振る剣を全てかわされていく、こちらは必死だが向こうは喋りながら軽々とかわしていく。


「……はぁ……はぁ…」

数分間その状態が続くが、当然こちらの方が体力の限界を先に迎え、倒れてしまう。

「…落ち着いた?」

俺は動かなくなった体で必死に頭を下げて頼み込む。

「頼む…彼女だけは…!」

「だーかーらー!」

「やめなさい」

冷たく、轟くような声が少女を制止する。

声の方を見ると、ドラゴンの居たはずの場所に立っているもう一人の少女が立っていた。

肌も髪も白く、耳があるはずの部分には後ろに向かう角が生え、黒いヴェールとドレスを纏ったさっきの少女と同い年位の見た目をしている。


「止めなさい、"カイン"、彼は大事な客人なんですよ」

「私だって止めようとしたんだもん!でも全然止まってくれなくてぇ!」

「だから、必要な物は持っていきなさいとあれほど…」

「エリスが離れなければ良かったのにぃ!」

「勝手に進んだのはそっちでしょ?"私が勇者様を助ける!"とか息巻いて…」

「ぶぅ…そうだけどさぁ…」


最早カルロスの耳にはそんな口喧嘩は入らない。

瀕死である肉体を文字通り引きずり、這いながらもキュリアの傍に生き、手を握る。

まだ微かに温もりを感じるその手に、ゆっくりと安堵し、諦めるように静かに目を瞑る。

その様子を見た少女達は瞬間的に口喧嘩を止め、慌てて2人の元へ駆け寄る。


「"エリス"!早く!」

エリスと言われた少女は素早く杭の様なものを何処からか取り出し、勇者に近づける。

「分かっています!"勇者様"!今すぐにお救い…」

とカルロスの体に近づけると、突然腕を捕まれる。

「俺…より……彼女を…!」

「は?馬鹿なの!?何言ってるの!?あんたの方が死にかけだよ!」

「黙ってなさい!カイン!分かりました、彼女の方から先に救います、それまで耐えて下さい」

「頼む…!」

「カイン!"魔血の契約"の準備を!急いで!」

「え!?でも…!」

「早く!」

「あー!もー!人…じゃなくて"魔物"使い荒いんだから!」


(…キュリア…どうか…生きて……くれ…)

カルロスの意識は、そこでプツリと途絶えた。

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