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肉体

遅くなってすみません!


暫くは伐魔剣士の方に力を入れていましたがちょっと煮詰まってた時に気晴らしにちょこちょこ進めてみたら思ったよりも遅くなってました!


覚える人いるのかな…

「………」

唖然とする二人の前に、庇うようにヴァンが立ちはだかる。

その背中からは先程のゴブリンとは比べ物にならないほどの怒りが滲み出ており、怒りによる筋肉の膨張か、着ている服が部分的に破けてしまっている。


「邪魔だなぁ…そのおじさん」

アランは心底邪魔くさそうな顔をして、再び魔法を放とうと魔力を杖へと集中させる。


一度撃ったらフラフラになっていた彼だが、まるで当たり前かの様に二度目の魔法を放とうとしている事に二人は困惑と混乱で止まった思考が更にかき乱されてしまう。


「じゃ、おじさんごと…」

アランが嘲笑おうとした瞬間、彼の肩を何かが掴む。


「…!?」

急いで視線を向けると、そこには首の無いカインの死体が立ち上がっており、肩を握り潰さんとする勢いで掴んでいる。


一瞬の混乱の後、アランは集中した魔力を光の剣に変換しようとするが間に合わず、カインの拳を受けて吹き飛ばされる。


「うぐ…!」

ズザァ!

殴られたアランは飛ばされるが杖を地面へと突き刺し、何とかエリス達から数メートル離れた位置で踏み止まる。


「何で生きて…」

アランが顔を上げると、そこには信じられない光景が広がっていた。


エリスの落ちた首はいつの間にか消えており、残った体の方、首から上がパキパキと気色の悪い音を立てながら、顎から上に向かって再生している。


「……〜…」

口が再生される最中、エリスが何かを喋っている。

「…?」

「………す…」

「…あっそ」

何かを聞き取ったのかアランはカインへ杖を向け、何の詠唱もなしに再びヘルフレイムを放とうと構えた瞬間、目まで再生されたカインが一瞬で距離を詰め、腹を蹴りあげてクレーターから追い出した。


「ちっ…!」

「…殺す!!」

アランを追うようにクレーターから飛び出たカインは完全に再生された顔に殺意の表情を宿らせ、彼を睨みつける。

「さっき聞いたよ、それ…!」

ブォン!

再び杖の先から光の剣を生み出し、カイン共々お互いに向かって走り出す。


「エリス様!」

カインとアランがぶつかり合う中、クレーターへと降りたヴァンがエリスの元へ駆け寄る。


翼は丸焦げだが、体の方は辛うじて防御魔法のおかげで比較的軽傷だった様だ。

エリスを抱え、急いでキュリアとカルロスの元へと戻る。


「…エリス様は無事です、翼の方も数日あれば再生するでしょう」

「…良かった!じゃあ早くカインちゃんの方に…!」

「…いえ、足でまといになります」

「え!?でもアランの事は知ってるし…」

「貴方の知る彼とは違う筈です、あの魔力量と回復力…人間の域を完全に超えています」

「なら、カインちゃんはこのままじゃジリ貧に…!」

「寧ろ逆ですよ」

「え?」


「奴の攻撃はその殆どが魔力に寄る物、私は物理の防御には自信がありますが、魔法の方は並程度しか防げません」

「……!そうか、カインは魔力に強い体質なんだな?」

「…少し違います、カイン様の力は2つの異なる魔族、その奇跡の融合によって生まれた"大魔力喰らい"とも言うべき体質にあるのです」

「"大魔力喰らい"?何それ…」

「…彼女に取っての魔力は、人間にとっての食料と同じだと言うことです」


ヴァンが眺めるエリスとアランの戦い、アランの魔法を受けて傷付くが、その度に凄まじいスピードで回復し、怯むことなく攻撃を続けている。


「カイン様は、ダークエルフとサキュバスの混血、どの種族よりも多くの魔力を溜め込み、溜め込んだ魔力で強化した肉体を用いた肉弾戦を得意とするダークエルフ

体が魔力によって保たれ、触れるだけで敵の魔力を吸収する事ができ、魔力が尽きぬ限りは半不死と化すサキュバス

その二つの種族の長所のみを引き継ぎ、それぞれの特性をフルに活かしきっている、それがカイン様の強み」


「……えっと…つまり?」

「魔力を伴うあらゆる攻撃を受けるとそれを吸収し、強くなり続けてなおかつ死なない、と考えて下さい」

「強い!!私勝てないよ!」

「彼の父親のダークエルフとは…良く殴り合いをしていましたね…」

感傷に浸るヴァンを横目に、カルロスは二人の戦いを眺め、静かに拳を握る。


自らが勇者である事の自信と自負、その全てがこの数日間であっという間に覆され続けている。

選ばれたものであるはずの自分が、あの戦いに全くという程に付いていけない。

確かに驕りはあった、飛躍的に強くなる自分に酔いしれた時期もあった、それでも皆を守る為に強くなる事をモットーとしていたのは事実だ。


だが現実はどうだ、守るどころか守られている。

かつて自分が捨てた少年に殺されかけ、自身の身すら満足に守れず、魔族とはいえ少女の姿をした者に一方的に守られ続けている。


この一歩を踏み出す勇気が出ない、あの間に割って入る実力も持っていない。


それがただ悔しい、自分を殺したくなる程に悔しい。


戦いは激しさを増していく、カルロスはただただ歯を食いしばりながらカインの勝利を願う事しか出来なかった。


スパァ!

「ふん!」

カインの肉体を幾度となく光の剣が切り裂くが、それを上回る速度で再生し、その度に力もスピードも回復力すら増していく。


(…おかしい…魔力の消費が激し過ぎる)

今のアランは無尽蔵の魔力に満ちており、魔界という人間界よりも魔力の濃いフィールドという事も相まって、魔力切れで負ける事はまず無い。

強化魔法を全身へ掛けて、光剣で接近戦を繰り広げつつ攻撃を受ければ即座に回復魔法を使う。

"あの日"からここに来るまで何度もしてきた戦い方、それゆえ戦った時間とそれに伴う魔力の消費量は熟知している。

だが今回はおかしい、強化魔法と回復魔法は問題無いが、光剣の消費量が桁違いに多かった。


光剣は覚醒した時にふと思いついた魔法…と言ってもただ魔力を剣の形にして敵を切り裂くと言うだけの技だ。

長さや出力によって燃費が変わって、今は並程度の出力に抑えている、放出した魔力は大気へと溶けてしまうので形を保たせるには常に一定の魔力を放出し続ける必要があった。

だが…何故だろうか、普段の数十倍多くの魔力が光剣に消えていっている。


具体的には攻撃を加えた瞬間、不自然に光剣が弱くなり、元に戻す為に一時的に流し込む量を増やす。

それをこの戦いだけで無数に繰り返していた。


(…何故…こんなの始めてだ…)

ブォン!

再び光剣を振るい、カインの腹を切り裂く。

その時、アランは感じ取った。

「!!」

(今、光剣の出力が弱まった…!)

もう一度光剣を振り下ろし、カインの腕を切断する。


「……」

(間違いない…)

カインに触れた瞬間、出力が弱まっている。


(…戦えば戦う程に強くなっているのは分かっていた、そんな奴は初めてだったから少し驚いたが…分かってしまえばなんて事は無いな…)


ブォン!!

再び光剣をカインへ向けて全力で突き出す。

限界まで短く、一点へと魔力を集中させたそれは並の敵防御魔法も貫通して焼き貫くほどの威力を誇っている。

だがカインにとっては極上の食事であり、勝利へのピースには違いなく、嬉々として拳を合わせて迎え撃つ。


拳と光剣の先が触れる瞬間。


フッ…

ロウソクの火が消えるかの如く、光剣が杖先から消えた。


「!!」

カインが気づくがもう遅かった。

アランは魔力を一切纏わせていない杖をカインの拳にぶつけ、その瞬間光剣へ送っていた魔力を自身の肉体の、主に右腕の強化へと当てる。

ビキビキビキ!!

途端にアランの右腕が不自然に肥大化、破裂する様に膨張し、その強大な筋力を全力でカインへとぶつけた。


ズガァァァン!!

辺りに衝撃波と砂埃が巻き起こり、二人の姿を眩ませる。


少しづつ砂埃が無くなり、ローブを纏った人影がムクリと立ち上がった。

「………ふぅ…」

軽い溜息をつきながらアランが立ち上がる。

その右腕は腕の骨が肩から僅かに垂れ下がった状態になっており、彼の前方に見える木々には弾けたような血飛沫がべっとりと付いていた。

「…ほい、ブレシアと」

まるで挨拶の様にヒールの最上級魔法を唱え、見る見るうちに吹き飛んだ腕が再生していく。


「……しぶといですね…」

アランが煩わしそうに小さく呟くと、砂埃が晴れていき、その目の前にも不自然な形の人影が現れふる。


「……っ…ぅ…」

肉体の三分の二が吹き飛び、かろうじて残った左足でカインは何とか立っていた。

そんな状態でも歯を食いしばって怒りの眼差しをアランに向けながら体を再生している。

「ま、もう僕の勝ちなんで」

アランは杖を持ち直し、持ち手の先を両手で持つ。

次の瞬間、距離を詰めるとバットを扱う様な動きで杖を思い切りカインへと向けて、彼女の再生を待たずにフルスイングをぶつけた。


「!!」

ボゴン!!

と鈍い音立て命中するがカインは瞬間的に全身を再生し、杖のスイングを左腕で受け止め、防いだ手で杖を掴み、引き寄せながら右腕でアランへと拳を放つ

「はぁああ!!」

ドスッ!!

カインの狙い通り、その拳は腹へと突き刺さり、体を僅かに浮かせながらアランを数メートル飛ばした。


ズザザ…

飛ばされたアランは何事も無く着地し、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

「軽い…」

肉体へ当てた尋常ではない程の強化魔術の重ねがけ、そして大量に魔力を消費し弱体化したカインの拳。

「…やはり、僕の魔力を触れた分だけ食べていましたね」

「……」

「…それはサキュバスの特性ですが…それだけでは無い

魔力を蓄えればその分強くなるダークエルフの血も混ざっている、魔法を受ければ回復、強化を全自動で行う肉体

魔術師の天敵とも言うべきその体質、以前の僕なら手も足も出なかったでしょう」

「……」

「…しかし、種さえ分かれば攻略は簡単」

およそ魔法を使う訳が無い、相手を殴打する様な構えを取り、体はカインの方を向いている。

「杖に魔力を纏わせず、その上で強化魔法で限界まで強化した筋力で殴り殺す、そうすれば貴方は死にます」

「…やってみなよ」

カインは毅然と振舞っているが、少し震え冷や汗をじわりと流している。


ヒュゥゥと風が吹き、木々と共にアランのローブが揺れる。

右腕が一度吹き飛んだことでローブの右側も破け、僅かにその中が見えていた。

カインはそれに気づかない。

その"何者か"に誰一人として気づかないまま再び戦いが始まった。

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