勇者の一生
はい、何も考えずに見切り発車で出すシリーズです。
何か流行ってる追放系をちょっとアレンジしてみました、多分ちょっと思ってるのと違うと思います。
こっちも適当に描きます、伐魔剣士とか構想あるのに書く気が(ry
―あるダンジョンの中―
一人の男が倒れている。
(あぁ、これは…死んだな…)
全身から力が抜け、腹回りにできた血溜まりに体温を奪われている様な感覚に陥る。
視界はボヤけているのに、ハッキリとなにかの景色や人影が視界に映る。
(これが…走馬灯…てのか…)
その景色すらも直ぐに消え、目の前が暗くなってくる…
(…情けない……な…)
…何処から…間違ったんだろうか――
―17年前、俺は名も無き小さな村で、勇者としてこの世界に生を受けた。
数百年に一度生まれ、この世界の悪を全て滅し世界を救う存在。
名前はカルロス・ブレイブ
勇者が生まれた事を聞き付けた色んな人が俺の元へやって来て、色々と贈り物をくれた。
「この世界を救って下さい」「我々をお助け下さい」そんな感じの事を言ってた気がする。
毎日聞いていく内に、俺は自分が凄いやつなんだ、世界を救うんだ、そう本気で思って過ごしてた。
だけど
両親は俺が戦う事を望まなかった。
普通の子供として普通に生きていて欲しいと、そう願っていた。
贈り物も全て断り、俺がこの村から出る事を嫌がった。
そんな日々が続いたある日、俺は喧嘩した勢いで家を出てしまった。
そして、森の中を歩いてる最中に俺を王都の学校に入れたがっていた偉い人と出会い、俺は両親には何も告げずにそのまま王都「エデン」へ向かい、この大陸最高の冒険者教育学校「エデン統一冒険者学園」へと入学。
当時、俺は8歳だったが勇者としての才能を発揮しまくり、通常半年はかけて習得する初級魔法の「フレイム」を一ヶ月で習得したり、剣術の成績も常にトップ、その他の魔法、特に信仰心を持ち、素質が無いものは覚えられないはずの「ヒール」魔法を初級だけだが独学で習得した。
冒険者ギルドの重役である学園長からも「学園始まって以来、最高の逸材」とお墨付きを貰い、周りも俺を信頼してくれた。
それが嬉しくて自分も学べる事は全て学ぼうと積極的に学んでいった。
冒険者ギルドからも「卒業までしなくても、こちらで居場所は用意する」と言われていたが、「折角だから学べる場所と仲間がいるここで最後まで学びたい」と断り、卒業まで半ば無理矢理居座らせて貰い卒業、この時15歳、既に俺のレベルや能力は5年間毎日戦い続けてた冒険者程に上がっていた。
そして卒業した瞬間から色々なパーティからの勧誘を山のように受けるが、自分でしっかりと決めたかったので一度全て断り、仲間集め開始、というより元から決めていた。
まず一人目、魔法使いのキュリア。
長く美しい赤い髪と焦茶色の瞳、いつもローブと魔法帽子を被っているのが特徴の俺の学校の同期で、入学して緊張していた時からずっと優しく、引っ張ってくれた活発な女の子。
魔力量が尋常では無く、数値に表すと並の魔術師が80、俺が100ならば彼女は500はある。
在学中に、通常10年単位で習得する最上級魔法を独学で習得しており、その時にテンション上がりすぎて、学校で試し打ちしようとして死ぬほど怒られた事もある。
いつも明るく周りを引っ張り、その裏では誰よりも努力をしている努力家な一面もあり、周りからも好かれていた。
正直、魔法の才能なら彼女に勝てる存在は居ない、自分も含めてそう感じる程だ。
因みに攻撃魔法ばかり覚えたい欲が強く、脳内の9割が攻撃魔法の詠唱で埋まっているので、回復魔法は覚えていない
それを補う為の二人目は僧侶のシエラ・リィン。
信心深く、謙虚で美しい女性。
非常に落ち着いていて、少し大人っぽいが実は年下。
いつも優しく微笑み、困っている人を放っておけない心優しい性格だが、それが災いして一度酷い目に合いかけた所を助けて以降、縁が出来てパーティに入ってもらう事になった。
ヒールの最上級魔法、「ブレシア」を現代で唯一使える程の才能を持つ。
俺がヒールを覚える際にもお世話になった。
その他、あらゆる状態異常への回復技、更にチーム全体にバフを付与出来る魔法も持ち、あまりにも居たら助かるので頼み込んで、条件付きで入ってもらった。
そんな彼女の条件は「弟もパーティに入れる」
事、そしてパーティ最後のメンバーがその男の子、アラン・リィン。
まだ13歳の男の子で、常に姉に引っ付いて行動する小さな気弱な男の子。
僧侶の弟なので回復は勿論、攻撃魔法も使えるが、正直戦士や騎士の様な前に出てくれる人がもう1人欲しかった。
ゴネても仕方が無いので、戦闘時は俺が一人で前に出る事になった。
そしてこのアラン、1つ問題があり、魔法量は普通なのに、最上級の魔法しか使えない。
つまり戦闘中に数度魔法を打てばその戦闘中は動けなくなるという感じだ。
最上級魔法を覚えている時点で才能はある、だが基礎を怠っているせいでそもそも使いこなせていないのだ。
俺もキュリアも入学したては魔力量はもっと少なかったが、基礎を鍛えまくって底上げしてきた。
だがアランは姉と二人家族で、姉を1人にしたくないからと学校に行かず、ほぼ独学で勉強したせいで変な育ち方をしてしまった。
だがシエラの弟だし、一発の威力は保証されているので最初の低ランクのクエストまでは問題なかった。
実際、1年ほど経った所での俺らのランクはA、普通Aランクは5~10年続けたパーティの一部がなれる程なので、とんでもない出世スピードだった。
しかし、ドンドンと戦う相手が強くなり、その度に遠出をする事、野宿する事が増えて来て、 都市育ちのアランには辛かったのだろう、我儘が増え、更に最上級一撃では沈まない敵も増えてきた事で、限られた回数しか魔法を使えないアランははっきりいってお荷物になりかけていた。
そして冒険から1年半程だった時、アランにパーティを抜けるように頼んだ。
当然反発は起きたが、それはシエラの方で「アランと一緒じゃないと嫌」と珍しく語気を強めて言ってきた。
アランが着いて来れない事、これ以上は危険だと判断しての提案だった。
正直こうなる事も読んでいた、アランもシエラも責める気は無い、ただ俺は心配だからと、そう伝えた
間もなく2人はパーティを離脱し、そのまま王都を出てどこかへ消えてしまった。
正直、シエラクラスの僧侶を失ったのは大きい、他の人を選ぼうにもやはり見劣りする。
仕方なくギルドでも優秀な僧侶と騎士に緊急でパーティに入ってもらい、相性を確認する為にもある程度簡単なダンジョンを選んだ。
しかしと言うべきか、やはりと言うべきか、冒険者としては規格外であろう俺達の動きに着いて来れず、二人はそうそうに離脱。
仕方なく残りのダンジョンは俺とキュリアで順調に進んでいたが、いつもより負担が増えたキュリアが疲労からか油断して、強制転移の罠にかかり、それを瞬間的に庇った俺はダンジョン最下層、しかもダンジョンの主、猛毒キメラが居る部屋まで飛ばされてしまった。
幸い勝つ事が出来たが、腹部に攻撃を受けてしまい、毒と出血、そしてここまでの疲労が祟り完全に動けなくなっていた。
それが今…というかさっきの出来事。
そしてもう直に死ぬ、俺の人生だ。
勇者にしては、何も成し遂げられていない。
何故か魔王の討伐には、最期まで行かなかった、行く気にもならなかった。
アランとシエラには…… 酷い事をした、ちょっと…言い過ぎたのかも知れない…
キュリアは無事か…ちゃんと逃げてくれただろうか…
あぁ、折角なら言っとけば良かったかな…
もう…遅いか…
父さんも母さんも、元気だろうか…
勝手に出ていって、ごめん
勝手な息子で…ごめん…
もう少し立派になったら、会いに行こうと思ってたのになぁ…
少し涙が流れる、身体中は冷えきっているのに、その涙は更に冷たく感じた。
意識が薄れていく…世界を救う勇者がこんな…ダンジョンの最下層で人知れずに死ぬ……本当に…無駄で…呆気ない……最…ご…
意識を手放す寸前…
「………ス…!」
聞き慣れた…声がした。
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