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夜に艶めく透明の薔薇 物語っぽい詩度★★★★★
満月の夜
揺らめく月光
きらきらと降り注ぐ月下
一輪の深紅の薔薇有
艶やめく紅
美しく
けれども
どこか不気味な一輪
薄い雲が夜の端から流れてきて
くるりくるりと満月に絡みつく
きらきらと夜を照らしていた月光は一変して
妖しく不気味な灯りで夜を照らす
すると
月下の深紅の一輪が揺れる
風もないのに、揺れる
ざわざわと揺れて
花びらが一枚一枚もぞもぞする
ぷわり
花びらの一枚一枚から
薔薇の紅が抜ける
ぷわり
ぷくり
花びらから紅が抜けて行く
花びらから抜けた紅は
ひとつに纏まり
翼を生やし
ヒトガタになる
裸に近い衣服を纏い
なだらかで美しい曲線
女淫魔
男をとろかす妖艶な物の怪
柔らかな双丘をたゆりと揺らし
くすりと不気味に微笑すると
夜空の彼方へと消えていった
今夜の男を探しに
夜の闇に溶けていった
紅の抜けた一輪の薔薇
女淫魔不在の薔薇は
色無き透明の薔薇として
きらきらと月下で揺らめいていた…