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氷の花 透明の花があったら綺麗でしょうね~度★★★★★
森の奥に佇む、一本の裸の木。
寒い冬の時期に花をつけつる木。
雪がひらりふわりと降り始めた頃に、蕾をつける。
ぷっくりとした、艶やかな透明の蕾をつける。
雪降る寒い中。
人々が身を縮めて、森のそばを歩きすぎてゆくなか。
その木はもこもこと蕾を揺らし、花開く。
ぴらりぴらり。
ぴきりぴきり。
透明の花弁が開いてゆく。
ぴらんと開いた透明の花弁。
氷の花。
ふるん、と。
キラキラとした涙のような雫を、花弁の先から溢す。
裸の木は、キラキラとした透明の衣を纏う。
満開に咲き誇る氷の花。
吹雪がその木を過ぎてゆく。
ひらりふわり。
透明の花弁が舞う。
木の周りに積もった白い雪の上に、ひらり。
そして、じゅわり。
氷の花弁は雪に溶けていった。