番外編 ラレット商会のビンスの物語
もうひとりの女護衛、ユナの物語です。始めはビンス視点から。
フェリシティーとバートが襲撃されて、ゴロツキに襲われた後の話になります。
ラレット商会はアリステアの王都に本店があり、各地に支部がある。物の買い付け、輸送、販売のためだ。
俺は今回、フランセーアの支店の1つに来ていた。
フランセーアの貴族や裕福な商人婦人はやたらとドレスを作るが、何度も同じドレスを着ない。流行が移れば捨てられる。
ラレット商会ではその古着を買い取り、誂え直して売る。分解して全く違うドレスにもする。
買い取りの時に、要らなくなった服も引き取る。秤で測って重さで買う。ほとんど無料みたいな値段で。
金持ちの衣類は物が良い。手入れも良い。古着であっても、素晴らしい。
中には誂えたけれど着なかった新古品もある。プレゼントされたが、趣味に合わない服等。
ラレット商会では贈答品の買い取りもする。これが結構な利益になる。不用品なので安く高価な品を買い取れるのだから。
フランセーアで仕入れた古着は、見た目を変えて誂え直し、店に並べる。売れれば良し。数カ月売れなければアリステアの王都の本店か、ローラン支店などに出す。
ある時は売った令嬢が誂え直したドレス買ってくれた。気が付かなかったらしい。
フランセーアでは、ラレット商会ドレス販売店の、「エイリーン」は高級品を扱うドレスショップの1つとして認識されている。
トュリューグ公爵家御用達のドレスショップだからだ。エイリーンで公爵夫人と精霊姫フェリシティーがドレスを誂えていたら、フランセーアの超高級店の1流デザイナーが「エイリーン」に何人も転職してきたのだ。彼等は嬉々として腕をふるった。
精霊姫フェリシティーに自分のドレスを着てもらいたい!そうだ。
アリステア王国の王都でも、フランセーアの「エイリーン」のドレスは令嬢の憧れとして定着した。
ローラン支店でも、ローラン子爵領の周辺の領地の令嬢が数日かけて来店して、寸法直しの間、ローラン子爵領に滞在する。
さて、今回ビンスはローラン職業訓練学校で裁縫とデザインを学んだ、就職希望の少女数名をフランセーアに連れてきたのだ。
フランセーア支店で働きながら1流デザイナーの仕事を見て働いてもらう。その後はフランセーアで働いても良いし、アリステアの本店、ローラン支店でその知識と技術を後進に伝えても良い。
で、見習いのお針子さんに訓練として、古着を個人に誂え直す、ということをしてもらうことにしたのだ。
商売でないので、孤児院に協力してもらう事にした。
慈善にもなる。
フランセーアの孤児院で、優秀で進学できることが決まった数名に協力してもらう。
俺はお針子さんを連れて孤児院を訪問した。採寸のためだ。
院長室で挨拶したあと、お針子さんは院長に案内してもらって子供の採寸をしてもらった。
俺もアリステアの孤児院の出だと言い、見学したいと言うとにこやかに了承された。
案内に利口そうな女の子が来てくれた。
食堂や教室、赤ん坊の部屋などを見せてもらった。
案内の女の子は「来年も服を作ってもらえますか?」と聞いてきた。進学希望だという。
「お針子さんの練習は未定だが、商会として毎年するつもりだよ。」と答えると嬉しそうだった。
幼児室の前に着いたが、案内の女の子、リンが立ち止まって部屋に入らない。
「あの、今はやめておきましょう。」と歯切れが悪い。
廊下側の開いた窓から女性が絵本を読む声が聞こえた。柔らかく優しい声。楽しそうに役になりきって絵本を読んでいる。
数名の子が女性の周りで座ったり、寝転んだり、玩具をいじったりしながらお話を聞いていた。
女性の膝には二人の子が乗っていて、絵本を見ている。幸せそうだ。
濃い茶色の癖のある髪が艷やかに光り、茶色の瞳は穏やかに子供たちを見つめていた。可愛らしい女性だ。奉仕活動の娘さんだろうか?
女性が絵本を読み終えると、子供たちは感想を言いあったり、遊び始めたりし始めた。
俺はラレット商会が引き取った中に、絵本や玩具もあったので、女性と話をしようと部屋に入った。
すると、リンが慌てた。俺を止めようとした。が、俺はドアを開けてしまっていた。
同時に、女性は俺の姿を見て、叫び声を上げた。「ヒイッ」と短く。そのまま女性は倒れた。
リンが「ユリアナさん!」と駆け寄った。
何だかよくわからないが、俺はユリアナさんを抱き上げで医務室に運び、ベットに寝かせた。
子供と楽しそうにしていた姿、笑顔、声、とても可愛らしかった。突然どうしたのだろう?
リンと院長先生が言いにくそうに、「ユリアナさんは男性が苦手で、悪気はないのです。」と言ってくれた。
俺?俺のせい?
ショックだ。
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