番外編 ハンスの物語
俺の母親は弱い人だった。
父親は出稼ぎに行き、戻らなかったと言った。
俺は母は父に捨てられたのだと思う。
食べていけないからと、俺は孤児院前に捨てられた。
孤児院では飯が食えたから、捨てられて助かった。あの母といたら、振り回されたと思う。
精神的に不安定で、すぐに誰かに頼り、良いように使われて、たいていかねを取られる。借金を負わされる。いつも自分は不運だ、不幸だと嘆いている。そんな母親だった。子供みたいだった。
俺は孤児院で大人しく、自分が大人になるのを待った。人生には期待していない。神などいない。
自分の面倒は自分でみれる、自立した大人になりたかった。
それにしても、孤児院はうるさい。
愛情に飢えた子供達がウジャウジャいる。
大人の手が足りてない。
俺はウンザリしていた。
早く成長して孤児院を出たい。
俺はいつの間にか人を観察するようになっていた。
慈善を商売の広告にと割り切っている商人。
暇なのか?優越感を味わいに来ている貴婦人。
見せかけの善意も普通の善意も、俺達孤児にとっては変わりないものだった。
縁談に有利になるように慈善に来ているだけの令嬢。貧しい中で、少しばかりの施しをくれる人。表の顔と裏の顔。建前と本音。誰と誰が繋がっているか。誰の意思が決定を決めるか。
孤児院に関わる大人の力関係。
眺めていると中々に含蓄がある。面白い。
孤児院に新しく入った子がいた。
いつまでたっても馴染めないみたいだった。静かな子だ。スミッコで絵を描いたり、木の枝を積んで一人で游んでいる。
関わる理由もないので、多数いる孤児の一人の子としての認識だった。
ある日のオヤツに、その子が嬉しそうに笑った。笑顔を初めて見た。可愛かった。
その笑顔が泣き顔になった。隣にのヤツにお菓子を盗られたからだ。
孤児院では始終子供の諍う声、泣き声、話す声、笑い声で溢れている。大人は忙しく、一人の子、一つの出来事にかまってはくれない。
悪いことをしても罰せられず、ルールを守ろうと破ろうと、本人次第だ。
俺は次のオヤツの日に、そいつのオヤツを盗り、食ってやった。マフィンだった。そいつ自身にも犯人が俺だと気づかれないように。面倒事はごめんだからな。
で、マフィン(俺がもらったやつ)をその子にあげた。
びっくりした顔、戸惑った顔、嬉しそうな顔、色んな表情を見れた。
話してみると俺はその子が気に入った。気を使わずに一緒にいて心地よい。お互い馴染めない孤児院で、唯一気が合う子。
その子の名はネイリー。1つ下。賢い子だ。
俺は勉強、体力づくりに励んだ。早く大きくなりたい。大人になりたい。
勉強が良くできれば上の学校へ行ける。良い職に就ける。ネイリーも俺と同じで、上の学校に来て、同じ職場に就いた。
ネイリーは目立たないが可愛い。成長するに連れて心配になった。
俺は表向き王宮の召使いだ。裏では見聞きしたことを報告、監視の役目もしている。
順調に仕事をこなし、信頼も得ていた。2重の職に就いていたから金も早くに貯まる。
ネイリーも俺と同じで、主に女性達の監視をしていた。
ある日、ネイリーが休みの日に街で会いたいと言ってきた。
待ち合わせ場所に来るなり、「大切な話があるから」と宿屋の部屋に連れて行かれた。
「俺もネイリーも年頃だから、宿屋に二人きりは不味い」と言ったが、ネイリーは譲らない。俺は17、ネイリーは16歳だった。
そんなに人に聞かれたくない大切な話かと、俺は部屋に入った。
そしたら、ネイリーに聞かれた。
「付き合っている人はいるか?」と聞かれた。
いない、と答えると、ホッとした顔をした。張り詰めていた表情が緩み、しかし、また真剣な顔になった。
唐突に「私はハンスの好みだろうか?」と聞かれた。
好みどころか、俺はネイリーが好きだった。
驚いて、モゴモゴしていたら、ネイリーが服を脱ぎ始めた。
ネイリーがドアを背にしていたから、部屋を出れない。展開についていけない。何が起こっているのか?
「ネイリー、どうしたんだ?やめろって。」
「経験を済ませたいんだ。好きな人がいないなら、お願いしたい。信頼できるのはハンスしかいないから。」
「なんだよ、それ!大事なことだろ?経験を済ませるって、急ぐことか?!」
話しながらもネイリーが服を脱いで、生まれたままの姿になった。スラリとしたプロポーション。凄くキレイだ。
「気に入ったメイドに手を付ける客が来る。40代の人だって。辞めるわけには行かないから、ハンスに教えてほしい。」ネイリー。
「仕事辞めろよ!」
「せっかく高給をもらえる仕事に就けたから、辞めたくない。わかった。、、、他の人に頼むからいいよ。悪かったわね。」
「違う!そうじゃなくて、、、、わかったよ!教えられないけど、いいか?俺も初めてだからな!」
ハンスはヤケクソ気味に言った。




