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借金令嬢の娘は隣国で公爵令嬢となり精霊姫と呼ばれて母の友人と出会い幸せになります!  作者: つーかたかさん


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番外編 女護衛ネイの物語

フェリシティーと共に襲われた二人の女の子の話が出来たので、投稿します。始めはネイから。

ローラン領を出てバートを追っかけたフェリシティーを追いかけたネイとユナの物語です。

よろしくお願いします。


私は孤児だ。

母親は娼婦。父親はわからない。

母は娼館ではなく、昼間は路地で客引きをしたり、夜は酒場で酌婦兼娼婦をしていた。

自宅で客を取る時、母親は客が来ると私を狭いトコに押し込めた。

ベッドの下や食料庫で、客が帰るまで待った。

母のうめき声や男の声に震えたこともある。子供の目では、男が母をいじめているように見えたのだ。母を裸にして乗っかって苦しませている、と。


ある日、客に見つかった。

「なんだ?こいつもやっていいのか?小せえ子供が好きな野郎を知ってるぜ。いい額を出してくれる。紹介するぜ。」

幼い私は男が何を言っているかわからなかった。


数日後、母親が珍しく私を外へ連れ出した。行き先は孤児院。

私は捨てられた。


孤児院はうるさくて好きになれなかった。

だけど、食べるものがあるのが嬉しかった。


1番記憶に残っている孤児院での事は、滅多に食べれないお菓子をもらった場面だ。

食べるのがもったいなくて、大切に手のひらに載せて、嬉しくてニコニコ眺めていた。ちょっとずつ、大切に食べようと思った。無くなるのが嫌だった。柔らかいクッキーにクリームが挟まれていて上にチョコレートが少しかけられていた。

私はこの宝物を消してしまいたくなかった。

そしたら、いきなりお菓子が消えた。

隣の子が、自分のを食べ終え、私のお菓子をかっさらい、すぐさま口に入れたのだ。


周りは子供達で騒がしい。

ガヤガヤと子供の騒ぎ声、喋り声。

私のかすかな悲鳴も泣き声もその中に混ざった。


私の正面で座っていた男の子が無表情で見ていた事を私は知らなかった。

滅多にないお菓子の日は定期的なものと、突然のものがある。


その次のお菓子の日はその数日後に来た。

私は自分の手にお菓子が載せられたとたんに口に入れた。

本当は眺めていたかった。

それ以上に取られてしまうのは嫌だった。前回私のお菓子を取った子が、私の隣に座ったからだ。


それは瞬間だった。私のお菓子を取った子のお菓子が消えたらしい。

確かに配られた。順番に。

その子の手に載せられた時にその子の椅子がぐらついて、一瞬お菓子から気が逸れたら、消えたのだ。

今回はその子が悲鳴と泣き声を出していたが、またしても喧騒の中に混ざった。


今回のお菓子はマフィンだった。

お菓子の時間が終わり、お遊びタイムになった。

私は騒がしいのが嫌いなので、スミッコでしゃがんで木の枝で地面に絵を描いていた。

横に一人の男の子が来た。

「猫?」私の描いている絵を見て聞いた。

「うん。」

私は顔を見ず、手元を見ながら返事をした。


「これ、やる。」

その子がハンカチに包んだマフィンを差し出した。

「えっ?」

私はびっくりして顔を上げた。

茶色い目に茶色い髪の普通の顔をした男の子がいた。

「前回、アイツに取られたろ?今日、アイツのお菓子を取ってやった。これは正当なお前のものだ。」

「でも。」言いよどんだ私に、その子が言う。


「俺の手はキレイだ。これは俺がもらって、すぐにハンカチに包んだ。アイツのは俺が食った。」

ぽかんとした。私達は建物の壁のそばで話していた。誰も私達を見ていない。

「ゆっくり味わって食え。誰も取らないから。」


その男の子はハンスと名前を教えてくれた。


私がいつも座る椅子の隣の椅子の脚に仕掛けをかませて、アイツがお菓子を手に載せられた瞬間にかませてあった仕掛けを抜いて、椅子をぐらつかせたそうだ。


以降、ハンスは端っこに私を座らせ、隣にハンスが座ってくれた。私は安心してお菓子やご飯を食べれるようになった。

そして、お兄さんのように私の世話をしてくれた。

甲斐甲斐しく世話をするのでなく、見守ってさり気なく助けてくれた。

無口で友達がいない私を心配してくれた。


私は勉強を頑張った。

孤児院には感謝している。親のいない私を食べさせ着させベッドを与えてくれた。

でも、孤児院は私の安心出来る場所ではなかった。うるさい。馴染めない。

ハンスもそうだったらしい。ハンスは優秀だった。

目立たない。よく居る風貌の子供。存在感を消しているらしい。

一度ハンスにそれを聞くと、「目立つとめんどくさいから、空気になるよう。周囲に同調して気配を消すようにしてる」だって。

それでいて、勉強は地域の学校の1番なのだ。私はハンスより1つ下の年齢クラスの1番だ。


その地域の学校を卒業すると、ハンスは領都の学校に奨学生として巣立っていった。

翌年、私もハンスと同じ学校へ奨学生として入学した。ハンスはいつも正しい。そのハンスの行く道に付いていけば間違いない。


その学校でハンスはスカウトされた。

ハンスは体術、暗器、毒物をマスターした。

私も一年遅れでスカウトされた。ハンスの行く道を追おうとした。

その時、ハンスは血相を変えて私に「止めろ」と言った。


いくら給料が良くても、駄目だと。普通の役人や文官になってくれ、と。


私はそれを聞かなかった。

ハンスは私の説得を諦めた。かわりに、授業以外で訓練をしてくれた。

尾行や盗聴の仕方、目線の使い方。小物で服装を変えたり別人に見えるようにする等。


ハンスと私は表向きは王宮の使用人だ。

かつ、王宮での出来事を見聞きし、命じられた人物を調べる。いわゆる裏方仕事だ。給料は2重にもらえる。


次第にハンスは上司の信頼を得て、表舞台の役職も上がっていった。

私は賓客が女性であった時には護衛を兼ねたメイドとして配備される仕事が多くなった。


ある時、上司が年若いメイドを集めた。15名くらいだ。

「お前たち、付き合っている男はいるか?」

いないのでそう答えた。

上司は困った顔で、

「次回来る賓客は隣国の貴族だ。40くらいだ。後ろ盾のない平民の少女が大好きだ。毎度、手を付けて良い女をメイドに出せと言う。今回、お前たちがその貴族のメイドになる。付き合いのある人がいれば、先に済ませておけ。その貴族は気前がいい。嫌なら、しばらく下働きに混ざってもらうことになる。考えて俺のとこに下働きをしばらくすると言いに来てくれ。メイドは3名から5名必要だ。メイドしてくれる者にはその月の給料が2倍になる。それにその貴族は毎回身の回りの高価な品を下賜する。それも受け取っていい。」


私は考えた。下働きにまわされるともう一つの仕事ができない。済ませておけ、と言われても相手がいない。


真っ先にハンスの顔が浮かんだ。



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