最終回
バートのラレット商会はフランセーア、プロンシアーナ、アリステア王国で順調に商売を大きくした。
国々の都市を廻り、買い付けては売り、加工して売り、不用品をリメイク、リサイクルして売った。
利益で学校、病院、老人ホームや孤児院を建設した。
心配した襲撃や誘拐は、結婚当初の数年に数回はあった。
フランセーアの旧王家の没落貴族(令嬢の不幸の噂を信じなかった少数)やプロンシアーナの旧王族や没落貴族の逆恨みした本人や、刺客。
または庶民の強盗、フェリシティーが美人ゆえの誘拐。
それらの犯行が行われそうになった時、犯人に不幸が起こった。
フェリシティーに襲いかかろうとした犯人はフェリシティーに手をかける寸前で足元から昆虫が這い上がり口や目鼻を塞ぎ、衣類の中、肛門まで虫に入り込まれた。狂死したものもいた。
多量の蜂に刺された刺客は全身腫れ上がってボコボコになりショック状態となり死亡した。
犯人に鳥が襲いかかって逃げ出したり、犯人がカエルやムカデまみれになったり。
屋内での刺客にはネズミやゴキブリが襲いかかった。
その犯行の悪意によって、犯人に襲いかかる不幸に差があるようだった。殺意や明確な害意には、容赦のない報復が犯人、命じた張本人に襲いかかるのだ。
毒入りの食物をフェリシティーが手に取るとその食べ物が変色した。食べ物や飲み物がキラキラと光り、自動的に解毒された。そして、どこかで誰かが急死するのだ。
フェリシティー自身、何が起こっているかわからないのだから、説明が出来なかった。
寸前より前の襲撃者は、護衛が斬り捨てている。
暗殺を生業にする者たちの間では護衛に斬り捨てられたほうが幸運だと言われていたらしい。
フランセーア王宮に寄った時にエヴィに聞いたところ、エヴィは
「フェリシティーが目覚めたからよ。」と答えた。
「フェリシティーはエスメとだった事を思い出したから。その記憶を自覚しながら、プロンシアーナとフランセーアで植樹したでしょ。それで、樹々も水源も大地にいる精霊達が大昔にこの地を浄化したエスメがフェリシティーだと繋がったのでしょうね。ゆっくりと広まって、今は大陸中にまで行き渡ったんでしょ。
土に生きる虫や樹の実を食べた鳥、花の蜜を吸う蜂、水源、生きとし生けるものがフェリシティーの味方なの。守ってくれてるのよ。安心だね!」エヴィはニコニコしている。
「一緒にいるバートや侍女も守ってもらえて助かってるわ。」笑えないフェリシティー。
「そりゃ、フェリシティー御一行を守るんでしょうね。行き届いてるわね。」エヴィが感心した。
「お母様から手紙で、アイが木登りして、落ちた時に大きな鳥が数羽飛んできてアイを支えて、落下地点にウサギや犬がクッションになってくれて、アイが無傷だったとあったのよ。」フェリシティー。
「親切ね。」エヴィ。
「、、、すごすぎて、わけがわからない加護を貰っちゃったのね、私。」フェリシティー。
「いいじゃないの。気にせず生きていいと思うよ。感謝してることで、十分なんじゃない?エスメには何もの恩返しもできなかったから、フェリシティーに還ってきた恩寵だと思って。」エヴィ。
「いいのかなぁ?私、大したことしてないのに。確かに、凄く助かってるけど。
そうそう、セイン様とガイルに、お子さんが産まれたのよ。男の子だって。それを報告しにきたの!」フェリシティー。
「そっかあ。良かったわね。」
「パラダイスがすごいことになってるらしいわ。毎日がお祭りみたいなんだって。」少し遠い目をするフェリシティー。
ゲイの皆さんが大騒ぎしてるんだろうなあ。
「あそこは賑やかそうね。一昔前じゃ、考えられないわ。」
そうよねー、と二人は笑いあった。
歓談して、「じゃ、またね。」と笑い合って別れる。
こんなふうに、フェリシティーはフランセーアを訪れる度にエヴィに会いに来た。
フェリシティーはラレット商会の会長夫人として国々を旅した。どの国でも穏やかで寛容な性格で愛されたという。
フェリシティーはその生涯を通して、アリステアでもフランセーアでも、プロンシアーナでも精霊姫と呼ばれた。爵位など無くとも国を超えて敬われた。その夫のバート・ラレットも精霊の恩寵を受けて守られたという。
もちろん二人は末永く、幸福に暮らした。男女二人の子に恵まれた。
ラレット商会を大きくし、その利益を各国の社会福祉に寄付し、貢献した。
フェリシティーの生涯は、大陸各国で語り継がれる物語となった。
アリステアの第2王子の長女として産まれ、フランセーアで精霊の泉と大樹から多大な祝福を受けて精霊姫と呼ばれ、フランセーア王国の王子に求婚されるも断わった。敵国であったプロンシアーナ王国と国交を結び、セイン王と友人となり、大陸に和平をもたらしめた姫。平民の商人と結婚し、社会福祉に大きく貢献した慈悲あふれる姫。精霊に愛され守られ、幸せな生涯を送った精霊姫フェリシティーとして。
おしまい
女護衛二人の物語を番外編で書いてあります。それで「借金令嬢は女神様です」を終わります。
拙い小説をお読みいただき、ありがとうございました。




