フェリシティーの結婚
予定通り、フェリシティーはローラン領の小さな教会でバートとの結婚式を挙げた。
両親のベルンハルトとサーラ、弟妹のルークとアイリーン。
ローラン子爵夫妻と子供のラシェルとクリス(従兄)。実母のエリンと夫のレイナルトと、その子供のアシェルとキアラ(異父兄妹)。
フランセーアの新王家からシモン、ローズ、ジェフリー、オルガが来てくれた。
サーラの親や伯父伯母いとこ達。
こじんまりと挙式だった。
しかし、参列者が控えめな衣装であっても、気品があり美男美女多数。さらに花嫁も絶世の美少女。
見かけた通行人が教会前で立ち止まり見物する。
フェリシティーは貴族としては簡素な花嫁衣装だ。豪華なものは好まない。ベルンハルトとサーラもフェリシティーの意思を尊重した。
白いドレスとヴェールに包まれたフェリシティーは美しかった。
フェリシティーはバートと結婚することが重要だった。バートもだ。
神父が新郎に誓いの言葉を促した。
「病める時も健やかなる時も、どんな困難がこの先の人生にあろうと、この命が尽きるまで、妻フェリシティーを愛し敬い、誠実に共に生きることを誓います。」バート。
フェリシティーも「夫バートと人生を共にし、喜びも悲しみも困難も、共に歩み互いに支え合う事を誓います。」と誓った。
新郎新婦は神前で、ふんわりとしたキスをして微笑みをあった。
ローラン子爵邸で披露宴が行われた。
「おめでとう!フェリシティー!バート!」
祝宴が始まった。始めはお互いに名乗り合い、遠慮もあったが、酒が進み、次第に遠慮が無くなり、、、。
場の雰囲気に子供たちも緩んだ。
「おねーしゃま!お嫁にいっても、コーシャク邸に来てね!アイに会いに来てね!寂しいよう。」ウワーン、とアイリーンが泣き始めた。
「アイ、大丈夫よ。お姉さまはお嫁に行っても、アイのお姉さんだからね。ルークもよ。」涙を浮かべながらフェリシティーが言う。
その胸に「お姉さま!寂しくなります!でも、お姉さまが幸せなら、我慢します!会いに来て下さい!」ルークが飛び込んだ。胸に頬ずりする。
ルークはチラリとアシェルとキアラを見た。
「ルーク、アイ、かわいいわ。」フェリシティーも二人をナデナデギュッとする。
「姉上。」アシェルがフェリシティーにそばに来た。
「おめでとうございます。本当にお美しいです。ルーク様、アイリーン様、お祝いの席です。笑顔で、ね。子供ですから仕方ありませんね。
姉上は母上にそっくりですね。こうしていると私やキアラと姉弟だとすぐにわかってしまいますね。」クスリ。アシェルが笑った。
キアラを連れてそばに来ていたエリンがニッコリ笑ってアシェルの首根っこを捕まえた。
「アシェル、ルーク様はフェリシティーの弟君です。姉上と呼ぶのはいけません。つまみ出しますよ。」エリン。
しかし、エリンとキアラ、アシェルとフェリシティーが並ぶと、確かに似ていた。金の髪も、そのゆるいウエーブも。顔立ち、体つき、雰囲気までもが。
ルークは悔しそうな顔をした。ルークは父親似なのだ。それを見て、アシェルかまたニヤリとした。
アシェルはエリンに引きずられて席につかされた。
残ったキアラが、ルークに謝罪した。
「兄の不敬を謝罪いたします。妹のキアラと申します。兄はルーク様が羨ましいのです。
兄は母上が大好きでして。はっきり言って、マザコンです。父上と母上を取り合って、しょっちゅう口でバトルしているのです。
その母上にそっくりなフェリシティー様を敬愛しておりまして、クロフォード領地での短い間のご滞在の間引っ付いておりました。フェリシティー様と御姉弟のルーク様に嫉妬して嫌味を言ったのです。申し訳ありません。」キアラ。
ルークはキアラを凝視した。フェリシティー姉様によく似ている。
「大丈夫、です。気にしてません。」ルークは頬を赤くしながら、やっと、それだけ言えた。
キアラが頭を下げてルークのもとを去ってからも、ルークはキアラを目で追っていた。
「こーんばーんはー!!」大きな声が会場に響いた。
「失礼する。祝に来た!」でかい金髪の美丈夫とほっそりした黒髪の美人だ。
「おめでとうー!!フェリシティー!バート!」
セインとガイルが来たのだった。
「「え、呼んだっけ?」」フェリシティー。バート。エリン。
「呼ばれてないけど、お祝いしたくて。式には間に合わなくて残念!はい、お祝いに爵位。」セイン。
プロンシアーナの貴族院の紋章入りの分厚い証書を差し出した。バートが受け取る。
「え、プロンシアーナの伯爵位?ラレット伯爵?え?」バート。
「これがあったら、プロンシアーナ貴族相手の商会のお仕事がやりやすいわよ。あと、王家御用達の証明書とバッジ。国境を超えやすくなる。」セイン。
「あの、フランセーア国王からもこれ、預かってきました。」ジェフリー。
フランセーア王家からも、伯爵位と通商に役立つバッジ。
「えっと、、、。爵位?いらない、かなー?」フェリシティー。
どちらとも宮廷爵位で、領地はない。名誉爵位だ。
「まあ、何かあった時に、役に立つかも知れないから、ありがたくいただくよ。」苦笑いのバート。
「困った時は遠慮なくそれを使って!いくらでも味方するから!なんたってフェリシティーのおかげで、プロンシアーナから魔族王はいなくなったのよ。プロンシアーナ王国の恩人!
個人的には私を女にしてくれた恩人!プロンシアーナの、私の女神!」セイン。
「いや、それは大げさ、、。成り行きなだけで。」フェリシティー。
「そんなことないわ。エリンとフェリシティー母娘のおかげで、私の人生が幸せで一杯なの。」セイン。
「とにかく、祝い酒!フェリシティーとバートのこれからの人生に沢山の幸福を!カンパーイ!」セイン。
この後は、すごい盛り上がりの宴会となり、ほとんどの大人は酔い潰れた。
宴会途中でフェリシティーとバートは退場した。
ローラン子爵邸は小さいので、近くの高級ホテルのスイートルームに泊まるのだ。
馬車に乗り、走り出すとバートがフェリシティーを抱き寄せてキスした。2度、3度と繰り返すうち深い口付けとなる。苦しくなったフェリシティーがバートの胸を叩いた。
「苦しい!」フェリシティー。
「ふふ、ゴメンね。僕の奥さん。」いたずらっぽく笑うバート。
スイートルームに入り、先に湯浴みしたフェリシティー。バートが寝室に入ると、フェリシティーは眠っていた。お酒を飲んだことと、疲れが出たらしい。
薄い夜着にガウンを羽織っている。
幸せそうなフェリシティーの寝顔を見て、バートは笑った。
「まだまだ子供かな。待つのは得意だし。おやすみ、フェリシティー。」
バートはフェリシティーの隣で大人しく眠りについた。
深い眠りの中、バートは夢を見た。
エスメの夫だったアラン、クロエの夫のフランセーア建国王キースが白い光の空間でバートに微笑んでいた。バートの前世。バートの魂の中にいる二人。
「良かったな、バート。今世では年の差で無理かと思ってた。」アラン。農民の衣服で蔦草の草鞋を履いている。
「おめでとう。大切にしろよ。身分差も年の差もぶっ壊して手に入れたな。」ニヤリとするキース。草原の騎馬民族風の衣装だ。
「ああ。もちろん。」バート。
「父娘だったり、母と息子だったり。姉弟だった時以外は夫婦だな。絆が深い。」アラン。
「アランとエスメの絆とエヴィが魂を呼び寄せてるのかな。だが、お前はバートだ。俺たちはお前の魂の中で眠る。フェリシティーもフェリシティーとして生きる。記憶に蓋をして眠るだろう。お前たちの人生はこれからだ。バートとフェリシティーとして生きろよ。」キース。
「わかってる。俺はバート・ラレット。商人だ。俺の人生を生きるよ。」バート。
「おう!」「じゃあな、俺!」「またな!」笑い合った。アランとキースの笑顔が薄くなって消えた。バートの意識が深い眠りの中に落ちていった。
「バートさん!起きて。寝ちゃった?バートさん!」
バートはフェリシティーに起こされた。まだ深夜のようだ。
「んー、フェリシティー?どうした?」
「私が寝たのが悪いけど。起こしてくれたら良かったのに。」プンプンしているフェリシティー。
「え、いや。寝てたから。」寝起きのバート。
ムスッとしたフェリシティーが、バートの頬にキスしてきた。ガウンを脱いでバートの身体にすり寄る。
「、、いいの?」バート。
「いいの!」フェリシティー。
くるりとフェリシティーに覆いかぶさり、薄い夜着の上から身体をなぞる。キスを頬、額、口に何度も落とした。フェリシティーの夜着をはだけさせ、肌をあらわにする。
一旦起き上がり、自分の夜着も脱ぎ落としたバートは、再びフェリシティーの上に覆いかぶさった。
夜明け間近の闇夜が、ゆっくりと明けていった。




