リカルドとシェリーの結婚式へ
次々に各国の招待客がプロンシアーナを出国していく。王族、高官が豪華な馬車と護衛に守られて列を作っていた。
各国の招待客はプロンシアーナが様変わりした事を喜び、交易の約束をして帰国の途についた。
男装したセイン、エルンストとコレット(と護衛のガイル)が王城からその列を見守る。
「すごいな。」
ガイルが呟いた。
「そーだな。」セイン。
「よくこんな未来を引き寄せることが出来ましたよね、陛下。」コレット。
「うん。ホントなら、ブランドンが王になって、戦争しまくり、俺らも生きてないはずだったんじゃない?平和になった。」セイン。
「どっから、こーなったんでしょうか?」エルンスト。
「んー、やっぱりエリンと会ったからかなー?」セイン。
「俺達、逃げようとしてたもんな。ブランドンは不死身だし。開き直って、前向きにしてくれたな。エリンは」ガイル。
「なんだかんだ言って、俺らのコトを応援してくれてたよな。恥ずかしくない。堂々と愛し合える国にしてみやがれ、そうできる位置にいるってハッパかけてくれたなあ。」セイン。
「そうだな。俺は今、最高に幸福だ!」ガイル。
「あー、そこまでにして下さい。」エルンスト。
「いいじゃない。夫婦だし。見慣れたし。」コレット。
「そう、ですね。絵面が美しくなりましたしね。前はちょっと、ヒゲの擦れ合う音がして引きましたもんね。」エルンスト。
プロンシアーナは良い国になるだろう。4人は幸せに、楽しげに笑いあった。
ベルンハルト達の帰国後。
フランセーアでは王太子リカルドとシェリーの結婚式が荘厳な教会で盛大に粛々と行われた。
トュリューグ公爵家はベルンハルトとサーラ、フェリシティーと参列した。幼すぎるルークとアイリーンは控えの間で待機だ。
結婚式はつつがなく終わった。
次は披露パーティーだ。
エルドがフェリシティーをエスコートしたいと名乗り出たが、フェリシティーは断った。フランセーアでの発表はまだだが、バートと婚約したことを王家に伝えてある。
公式の場でエルドにエスコートされると、誤解される。
フェリシティーは婚約者がいると知らせた上でシモンにエスコートを頼んだ。
家族で王城に着き、それぞれエスコートされながら会場に入る。
シモンがフェリシティーに告げた。
「妙な噂が出ている。僕から離れないで。」
「そう、ありがとう。シモン。」フェリシティーは察した。
「エルド殿下がエスコートしないから、信憑性が高まったよ。僕らは知ってるけど。フェリシティーはエルドを好きじゃないんだろ?」シモン。
「まあね。無理。」
にこやかに歩きながら、二人は会話していた。
王と王妃、王太子夫妻、エルドが壇上に並んだ。左右に王弟夫妻等の新王家とベルンハルト達トュリューグ公爵一家が控えた。王位継承権を持つ一族が会場を見下ろす形となる。
王が王太子夫妻への祝辞を述べ、貴族達に労いの言葉と恭順を求める激を入れつつフランセーア王国の繁栄を祈った。
ダンスが始まった。王太子リカルドとシェリーが中央でダンスを披露した。幸せそうだ。
続いて王族がダンスの輪を作る。
エルドは諦めてオルガとダンスをしている。フェリシティーとシモンをチラチラ見ている。
「本当に婚約したんだ。幸せそうで安心した。おめでとう。結婚式には呼んでよ?親戚なんだから。」シモン。
「ありがとう。結婚式は、こじんまりとするつもりだから。」フェリシティー。
「町人風で行くから。」シモンが笑って言う。本心だ。
「そう?わかった。招待するわ。」
フフっと笑いながらフェリシティーが言う。幸せそうだ。
美しいな、シモンは感嘆した。
フェリシティーはエルド以外の王家の人々と会話し、家族とシモンといるようにした。
エルドはフェリシティーに近づけなかった。
シモン、ジェフリー、オルカ、ローズらがシェリーからそうするように指示されていた。
エルドはまだフェリシティーを諦めきれなかった。恋していた。
エルドがフェリシティーに会えるのは公式の場しかなかった。
ジェフリーとシモンがエルドを遠ざけ、オルガとローズ、フェリシティーだけになった時。
一人の令嬢がフェリシティーに近づいた。
「フェリシティー様。傷物になってエルド殿下との婚約は白紙になったと聞きましたわ。暴漢に襲われて閉じ込められて、何人もの人を相手に数日間に渡って、と。お気の毒ですわ。お見舞い申し上げます。ですけれど、そのような事がおありなら、このような場においでになってはいけませんわ。見世物になってしまいますもの。」
「はあ?なんです?その噂。」フェリシティー。
「衛兵、このご令嬢を連れていきなさい。閉じ込めておくように。」オルガ。
「何するのよ!もう、皆知ってるんだから!知らせてあげただけよ!人前に出ていい体じゃなくなったんだって!」令嬢が声を荒らげた。
「陛下の命令です。衛兵、縛って猿轡をして差し上げて。うるさいわ。」オルガ。
注目されている。会場が静まり返っている。
フェリシティーは会場の目線が自分1人に注がれていることを知った。
噂に尾ひれがついている。
「フェリシティー!」
ベルンハルトとサーラがやって来た。
会場の、自分を見つめていた目がそらされる。
「ありがとう。オルガ。ローズ。シモンとジェフリーも。今日はおめでたい日だから、騒ぎを起こさせたくないわ。私、帰るね。リカルド様とシェリー様によろしくお伝えください。」フェリシティー。
「そうか、俺達も帰る。」ベルンハルト。
公爵家一家はその後の式典も参加しなかった。
じわじわと広がる噂。
気晴らしに買い物に出掛けたり、外出すると、目を逸らされ、ヒソヒソ話しているように見える。
幸いにも暴漢がプロンシアーナの者とは知られていない。戦争の心配はいらないようだった。
あれ程あったお茶会の誘いが一切無い。
ベルンハルトは一家で外に出るようにした。閉じこもっていては、噂を肯定するようなものだ。
家族で美術館、植物園、博物館へ。あまり貴族に会わず、警備もキチンとしてくれる場所へ。
フェリシティーは幼い弟妹へのプレゼントを選びに、街の本屋へ行ったり、おもちゃ屋へ買い物に行った。
にこやかに、元気に。
フェリシティーは成人の16歳を持って公爵籍から抜けて平民となり、バートと結婚する予定だ。
王家の管轄する貴族管理局にも事前に届けている。
フェリシティーはバートと文通している。幸せな未来を思い描いて準備していた。
しかし、気を張ってしまう。貴族の社交界へは出ずに街へ出る日々にも疲れた。
「しばらく、一家で旅行しよう!」ベルンハルト。
「それはいいわね。」サーラ。
アリステアの観光地を周ろうと計画していた。
そこに、プロンシアーナから手紙が届いた。
内容は以下だ。
プロンシアーナで広範囲の農地が日照りになり、飢饉が予測されること。
しかし、フェリシティーが植えたエヴィの苗木のある一帯は全く被害がない。
フェリシティーの植えた3本のアリステアの大木の苗木。王城に記念樹として植えたのだ。すると、王城の畑も豊作。
庭師や農民がそれらから苗木を作っても、効果は見られない。フェリシティーが植えたことに意味があるかもしれない。
帰国して間もないのに申し訳ない。また、プロンシアーナに来てもらえないだろうか?
とセインからの手紙だった。
フランセーア王家にサッサと出国を告げて、了承をもらうとベルンハルト一家はプロンシアーナへ旅立った。




