出来事の処理に忙しいです
その後はバタバタと医師や看護婦が出入りした。
アーサーが手配済だったのだ。
フェリシティーは月のものが急に来て、少しばかり子宮の病気があって出血が酷かったと説明された。
しばらく静養となった。
その頃。
忘却薬が王宮から届けられ、ネイとユナは忘却薬を少量ずつ飲んだ。
禍々しい体験が自分の身体に刻まれ、心を蝕み苦しい。忘却薬はその体験と記憶を夢で見たような、窓の外側から見たようなものに変えてくれた。
また、自分達を陵辱した奴等の処置を聞いた。処刑予定であることも伝えられた。
ネイは果敢にもゴロツキ達のいる牢を監視窓から見た。切り取られ、処刑におびえている奴らを見てネイは心が落ち着いた。
相手が罰を受ける事でネイの心は安らいでいった。
ユナはまだその段階までこれていない。
その後、処刑を実際に遠くから見ることでユナの傷も癒えていったと聞いた。
ローラン領と隣の伯爵領では女性の強姦事件が噂になり、処罰が速やかに行われた事も噂となっていた。
処刑後に噂は静まった。
ネイとユナは名前を変えて王都のアーサーの直営店で仕事をすることになった。
フェリシティーは隣のクロフォード伯爵家にしばらく滞在する事になった。実母エリンへの報告も兼ねている。
力を貸してくれた大木の精霊は苗木をそのままフェリシティーのそばに置いて欲しいと願ってるそうだ。エヴィによると、苗木には大木の分身の精霊が育つから、フェリシティーが住む屋敷に植えて欲しいらしい。
「好かれるから、フェリシティーは。」とエヴィが言った。
「精霊の力を無理に使いすぎたの。今、力がかなり減っているの。」という。
本来、精霊は生命に干渉してはならない。本体と遠く離れた地で、ミカエルを排除したことでエヴィの精霊力が弱くなったらしい。
事件後、セインとガイルはしばらくローラン領に滞在していた。アーサーの職業訓練学校が大いに気に入ったらしい。
人材派遣会社にも顔を出して人を勧誘したり、領都をあちこち見て回っていた。
ブランドンの事を忘れたわけではなかった。幽閉してある地下牢と見張りの警備隊のもとを、度々訪れていた。
セインはブランドンを正体不明の不法滞在者としていた。死んでほしかったが、伝記によると炎の祝福を受けた王太子を殺せば、恐ろしい呪いを身に受けるとある。
自然死する老齢までの幽閉が穏便だった。
密かにプロンシアーナから精鋭を呼び寄せる手はずと、その許可をアリステア王国に求めて待っている状態だ。
アリステア王宮がプロンシアーナの精鋭を国内に入れることを警戒していて、許可が出ない。
得体のしれない魔族と契約しているブランドンを連れての旅路は気が重い。
セインは自国の精鋭部隊を待っていた。
ローラン領地は退屈しないし、と居続けていた。
そしてフェリシティーもまだローラン子爵家にいた。
ベルンハルトは護衛騎士団を連れてフランセーアに帰国した。
フェリシティーの無事とバートとの婚約、その他色々をサーラ、フランセーア王家に報告せなばならない。
人の口に戸は立てられないものであり、性被害の噂は広がっていた。
曰く。
ローラン子爵家に滞在していた子爵の遠縁の娘が、外出時に誘拐されて隣の伯爵家の山荘に閉じ込められて弄ばれた。襲撃でどちらも死傷者が出た。女性護衛がゴロツキ複数名に陵辱されて救出された。その時直ぐにゴロツキ達はアレを切り落とされた。その後公開処刑された。女性達は救出されたが傷物になった。
しかし、子爵の遠縁の娘は、身分を隠した他国の高位貴族のようだ。
報告を聞いてアーサーは脱力した。かなり真実が噂になって出回っている。
街医者は口が堅い。連れて行った護衛も話さないはずだ。しかし、知っている者は多かった。
地元の警備隊。街道沿いに住む村人達。
伯爵領山荘の使用人、村人。
ただ、解決が早かったことと処罰と処刑が速やかに行われたことで、ローラン領から出ていく人は殆どいなかった。
アーサーがホッとしているとケイトが言った。
「今ローラン領地から帰宅したら、その令嬢が被害令嬢かと思われるからよ。職業訓練学校は出席率が上がったそうよ。」
バタバタしていたのは子爵家のプライベートルームのほうで、令嬢令息たちのいる宿泊棟ではない。
ケイトは性被害に合ったのは遠縁の使用人だと信用できる数名に伝えた。その方が預かっている令嬢たちのためであり、ローラン領にも良いはずだった。
遠縁の娘フェリスはローラン子爵家から自宅へ帰ることになっている。クロフォード伯爵家に行くのはフランセーア国の公爵令嬢フェリシティーだ。
報告、手続きの連続だった。
その最中、それは起こった。
深夜、ブランドンを幽閉している建物が崩壊。警備隊に怪我人が出て、ブランドンが行方不明。プロンシアーナで起こった事が再現された。
ブランドンの脱獄の知らせより先にローラン子爵家に異変が起こった。
フェリシティーの護衛は男に代わり、客室の外にいる。バートが婚約者としてフェリシティーの隣の部屋。セインとガイルは同室でフェリシティーの反対隣の部屋にいた。
深夜に突然ローラン子爵家だけが地響きのような音と揺れがあった。
こういう時には、それぞれ最愛の人の安全を確かめる。
ケイトは我が子の安全を確かめる。アーサーは妻子の無事を確認すると建物と人の被害を見て回った。
調理室で小規模の火災が起きたが、使用人達が消火していた。
ただ、不思議な事にフェリシティー、バート、セイン、ガイルの姿がない。フェリシティーの部屋には鍵か掛かり、入れない。合鍵は回らない。扉を壊そうとしてもびくともしない。しかも、中で切羽詰まったような声がする。
お読みいただきありがとうございます。




