夢の中へ入ります
アーサーが地図を持ってきた。
「えっと、思い出すから。バートと森林公園駅に行って、肉をほら、焼串の肉を食べながら歩いてた日に。」エヴィが説明する。
「行儀が悪いな。公爵令嬢が?」アーサー。
ギロっとベルンハルトに睨まれて黙った。
「小高い丘に大木があった。木陰でフェリシティーとバートが昼寝した。そこの大木が、エスメと植えた木なの。フェリシティーからエスメや私の気配を感じて、すっごく喜んでた。フェリシティーが大木を褒めてたから、絶対に協力してくれる。
あと、散歩で行って、大木の下でバートとサンドイッチ食べてた、あの木。エスメと植えた木だった。」エヴィ。
「あの木、って、どこ?」アーサー。
「さあ。地図の見方がわかんない。
結界の中で、木の気配とフェリシティーを辿ってただけ。
サンドイッチはフェリシティーが作ったの。お弁当でバートが無理して不味いのに美味しいって言って、食べたフェリシティーにバレてケンカになって、大木が心配してた。大木の下で食べてケンカしたんだって。
あと、いい感じの枝ぶりで、フェリシティーとバートが木登りした大木。精霊が大感激してたよ。
フェリシティーって、ピンポイントでエスメの植えた木に行くから、びっくりしたんだ。さすが、精霊姫。呼ばれてるのかなぁ。」エヴィ。
「、、、領内にある大木を回れば良いのか?」ベルンハルト。
「なんでバートがそんなに俺の娘と?」とつぶやいてた。
「バートなら地図見せたらわかるんじゃないか?」アーサー。
「3本の大木から枝を取って苗木にすれば良いんだな?」
「そう。その苗木に精霊に付いてきてもらって、フェリシティーを囲んで、強力な結界を張る。大地の精霊、木の精霊、私がフェリシティーの中の魔の種を無力化する。
胎児を剥ぎ取って体内から出す。フェリシティーには、また眠ってもらう。ベルンハルトとセイン、アーサーは、結界の中に入れるから、フェリシティーを守って欲しい。魔族の種は暴れるでしょうね。心理攻撃がある。絶対に負けないで。結界の外で、ガイルが守って。
邪魔させないで。皆が自然に目覚めるまで。」
夜が明けて、アーサーが庭師を連れてバートの療養している診療所を訪れた。
バートの矢傷と刀傷は処置されてかなり回復したようだった。
襲撃後は発熱し、失血もあり重傷であったが。
早朝に来たアーサーを見て、バートは挨拶もせずに「フェリスはどんな様子だ?!」と心配している。
「あー、まあ、大丈夫だ。それより協力してくれ。」アーサー。
「フェリスは?」バート。
「昨日目覚めたよ。襲撃された後の記憶がない。お前の心配をしていた。」アーサー。
「そうか、無事なら良かった。」バート。
「で、協力してほしい。
フェリスと森林公園で肉を食べて、大木があったろ?昼寝した場所を教えてくれ。」アーサー。
何のことかわからないので変な顔をしたバートだが、説明されて協力する。
バートはフェリシティーの妊娠より、それにより死亡すると聞いて生きた心地がしない。フェリシティーが死ぬなど、絶対に嫌だ。生きて笑っていて欲しい。
未だ傷は痛むが、案内を申し出た。
バートは3本の大木の場所に案内した。
バートはフェリシティーから贈られた万年筆の飾り紐を大木に押し付けた。
「木の精霊様、この髪の持ち主のため、苗木に付いて来てください!助けてください!」と言った。
傍から見ると変人だが、一行は真面目だ。
精霊が見えないのでわからないが、庭師が苗木にしてローラン子爵家に持ち帰った。
エヴィの植木鉢はフェリシティーの部屋だ。
「ケイト、フェリシティーは起きたか?」
出迎えたケイトにアーサーが聞いた。
「それが、声をかけても起きないのです。ベルンハルト様がついておられます。」
フェリシティーは寝台で眠っているように見えた。
枕元に置かれたのエヴィの木がほのかに光っている。
「苗木、持ってきたぞ。枝を指しただけだけどな。」
アーサー。
フェリシティーの部屋にはベルンハルトとアーサー、付いてきたバートがいる。
セインとガイルが呼ばれて部屋に来た。
バートが手短に自己紹介した。バートはセインとガイルとは初対面だ。
ポワッとエヴィが姿を表す。
「フェリシティーには眠っててもらうわ。
私の木はこのまま。3本の木はフェリシティーのベッドの両側と足元に置いて。」エヴィが指さして置き場所を示した。
アーサーが簡単にセインとガイル、バートに説明した。
「んげっ。妊娠?胎児を出さなきゃ、フェリシティーが死ぬって、マジか。」セインが青くなる。
「誰のせいだと?」ベルンハルトがセインを睨む。
「申し訳ない。俺の兄のせいです。」セイン。
「精神攻撃があると?」ガイル。
「すでに胎児は臨戦状態よ。」エヴィ。
「フェリシティーは、自分が身ごもったと知っているのか?」バート。
「フェリシティーは知らない。すでに胎児は母体を食べ始めてるの。栄養を吸い取り始めた。早くしなきゃ。」エヴィ。
「え、何をするんだ?」アーサー。
「フェリシティーの意識の中に入る。ベルンハルト、セイン、アーサーと、バートは入れる。胎児を一緒に、流させるために。来て!」エヴィ。
「どこに?どうやって?」アーサー。
「行く人はフェリシティーの手を握ってそれぞれ繋いで!」エヴィ。
4人が寝台のそばで膝をついてフェリシティーに近づく。
アーサー、ベルンハルトがフェリシティーの手のひらを握った。バートとセインも手の甲側を握った。
「よし、フェリシティーを見つめて!意識をフェリシティーに向ける!そーれ!」エヴィが光を放った。
同時に3本の苗木も光った。
4人の意識が無くなった。眠ったように見える。ガイルが「頑張れよ、セイン。」と小さな声で言った。
夢の中で、フェリシティーは困っていた。ふわふわした白いモヤの中にいる。頭がボンヤリしている。
近くで赤子が揺りかごにいる。泣いているのだが、黒い禍々しい煙に覆われていて、怖い。
そばに行ってあやさねばならないような気がするが、行ってはいけないように思う。
赤子の泣き声は次第に大きくなり、耳をつんざく。
禍々しい黒いモヤが自分のそばに寄ってきた。
いくつもの黒い腕の様にも見える。気持ち悪い。
フェリシティーは動けない。怖い。逃げたい。それなのに身体が重くて動けない。
3匹の光る妖精がふわりと現れた。
妖精はフェリシティーに微笑んだ。そして、黒いモヤとフェリシティーを隔てた。
フェリシティーの身体が軽くなった。
フェリシティーは逃げ出した。光りが見えて、そちらに向って走った。
すると、ぼんやりと父ベルンハルトが見えた。
「お父様!」フェリシティーがベルンハルトに抱きついた。ベルンハルトもフェリシティーを抱きしめる。
「よし、保護できた。」エヴィ。
見ると、アーサー叔父様と子供の頃に見たプロンシアーナ王セインがいる。そして、バートも!
フェリシティーはベルンハルトから離れてバートに駆け寄った。ベルンハルトがちょっとしょんぼりした。
「お怪我は?」フェリシティー。
「大丈夫だよ。フェリシティーのほうが心配だ。」バート。
「あいつが来た!」エヴィ。
モヤの中に可愛らしい男の子がいた。黒髪黒目の5歳くらいの子だ。
微笑んでフェリシティー達を見ている。
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