救出のため再会しました
ローラン子爵家で、フェリシティーを預かると決めた時。
アーサーはアリステア王にある権限を求めたが、得られなかった。
求めれば「街道の封鎖が出来る権限」「貴族家に立ち入り内部を探索する権限」「自領の騎士を他領に入れる権限」だ。フェリシティーを預かる間だけ。
アーサーとしては、フェリシティーの誘拐はあり得ると考えていた。
アリステア王としては、国の一大事ではないのに街道封鎖や武力の移動を1貴族のみに許可することは出来なかった。
反乱、クーデターを起こせるからだ。
どんな理由があろうと、一度許可すれば後に前例を作る口実となり得る。
貴族家に立ち入る許可をローラン子爵にだけ与えることも、理由がつけれない。
王から権限は得られなかった。
こっそり一時的に許可する文書が来ることも無かった。
しかし、精霊エヴィがフェリシティーを守る結界を張る事が出来るだけから、ローラン子爵家に留学させてほしいとフェリシティーに言われた。ローラン子爵家から遠くに行かない、と約束した上でフェリシティーを預かった。
エヴィによると、フェリシティーに殺意や極度の害意を抱く人間は結界内に入ると健康を甚だしく害するそうだ。昏睡状態に陥るらしい。
数ヶ月、フェリシティーはローラン子爵家で楽しく過ごせた。何も起こらなかった。油断していた。
夜中に怪しい動きをした人物が入館した貴族家のサリエル伯爵家の別荘は、温泉地に建つ山荘だ。
怪我人やネイ達をローラン領に運び、襲撃と犯人の報告をし、翌日の夕方、アーサーは山荘の近くの宿にいた。
付近の個人商店や食堂などで聞き込みしたところ、その山荘は伯爵家の人が使ったり、親類が使ったり、伯爵が知り合いに貸したりしているらしい。
先日から見慣れない人物が出入りしていると情報を得た。
変わった客だと噂になっていた。
夜遅くに馬で山荘に入ったらしい。女連れで。
召使いは通いだけで午前中だけで良いと返したらしい。
料理人に午前中だけ来て、ある程度の料理をしたら帰宅させる。
客人はのんびり隠れ家的な温泉付き山荘で愛人を連れ込んでお楽しみ中、と言う噂だ。
数日後、通いの召使いの女性に屋敷の中の様子を聞けた。
山荘にいるのは、貴族らしい中年男性。愛想がなく怖い印象だという。
ベッドで眠ってばかりいる金髪の少女。
親子ほど歳が違うし、不思議に思っていたそうだ。
アーサーは歯ぎしりした。
踏み込みたい。
王宮に客人が襲撃されて貴族の別宅を捜索したいと封書にして届けた。
サリエル伯爵家の山荘の捜索の許可を待って10日。
王宮から返事が来ない。
アーサーは村の宿屋で滞在していた。
商人で、商談に来ているとしている。
昼食を宿屋の一階の飯屋でとっていた。
「お久しぶりです。このような所で会えるとは奇遇ですね。」
振り返ったアーサーの瞳に、思いがけない人物が映った。
「、、、セーラさん。本当にお久しぶりです。ガイさんも。」
女性にしか見えない女装したセインと、相変わらずなガイル。
2人がアリステア、フェリシティーの誘拐中にここにいる、それは、犯人がアイツということに確定だな、アーサーは理解した。
「狭いですが、この上で話しましょう。」アーサーが
宿屋の自室にセインとガイルを連れて上がった。
「お兄様を探しているのですか?」
アーサーの問いかけにセーラとガイルが目をみはった。
「当たり、です。何不自由なく閉じ込めていたのに、不思議な地震が起こり、その建物だけ倒壊したのです。」セイン。
「強盗殺人が続々と起こり、そいつはアリステアに向っていた。最後にプロンシアーナの旧体制の大物の邸宅で殺人があった。かなりの金品が奪われた形跡がある。それでピタリと強盗殺人がなくなった。
不審人物の情報を追いかけてここまで来た。」ガイル。
「ただ、やっかいなの。プロンシアーナの王と王太子は不死身なんだ。」セイン。
「、、、なんですか?それ。」アーサー。
「伝説みたいなんだけど、本当らしいの。王太子になるには試練の洞窟に行くの。そこで騎士たちが見た話があって、、、」セインがアーサーに説明した。
「ブランドンは不死の身だろうから、捕縛しかできない、ということになりますか?」
説明を聞いたアーサーが言った。
「不死なんだろうけど、歴史上、不死の王太子が不審死してる件がいくつかあるの。どうやら、王か兄弟なら王太子を殺せるみたい。ただ、おかしな事件が起こった形跡があったわ。
わからないから、ブランドンを殺すより、捕縛して幽閉したいの。
歴代プロンシアーナ王はキッチリ70歳から80歳の間で老衰で死んでいるの。ブランドンも、不死ならそのくらい生きるだろうから。
協力をお願いします。」セイン。
「そちらはブランドンを捕獲したい。こちらはフェリシティーを保護したい。利害は一致してます。
その後、プロンシアーナは今回の不祥事について、どうしますか?」アーサー。
「申し訳ないと思っています。捕縛の後、出来得る限りの補償をするつもりです。」セイン。
「知らんふりして逃げないなら、良いです。事が事なので、公にはしたくありません。」アーサー。
「私達もです。」セイン。
ドアがノックされた。
「俺だ。フェリスの父だ。ベルンハルトだ。」
ベルンハルトか商人の旅装姿で部屋に入った。
アーサーは久しぶりにベルンハルトと会った。
フェリシティーが誘拐されて10日。
すぐに使者を出し、返信でローラン子爵家にベルンハルトが来るとあった。
最速6日の往復道程なので、王族としては早い。
キツイ旅路と心配でベルンハルトはやつれていた。
年頃の娘が誘拐された。その父親なのだから。
ベルンハルトはアーサーとセイン、ガイルを見て驚いた。
「なんで、彼らがいる?」ベルンハルト。
「ついさっき、下で会ったところです。お久しぶりです。ベルンハルト様。お預かりしていたのに、申し訳ない。」アーサー。
「お久しぶりです。殿下。この度の不祥事、我が兄が犯人かと思われます。誠に申し訳ない。」セイン。
「お久しぶりです。とにかく、説明をお願いします。」ベルンハルト。
アーサーが説明を始めた。
フェリシティーがバートを一人で馬で追いかけて結界の外に出たこと。
バートと3名の護衛、フェリシティーと2名の女性護衛が襲撃されたこと。
バートは負傷。2名の護衛も負傷。1名死亡。
フェリシティーと2名の女性護衛がさらわれたこと。
隠れ家て護衛2名が襲撃集団に陵辱されていたが、保護できたこと。
隠れ家の別室でフェリシティーも辱めを受けた形跡があったこと。
フェリシティーは未だに行方不明だが、伯爵家の山荘に犯人といると思われる事。
アーサーが説明をしている間にセインは女装を解いた。衝立の奥で着替えて化粧を落とした。貴公子になりベルンハルトの前に現れた。女装は旅装だったらしい。
セインが説明を始めた。
幽閉していた前王太子ブランドンが逃走している事。
プロンシアーナ王国に伝わる、王と王太子が試練の洞窟で不死となること。
ブランドンを捕縛して帰りたいこと。
我が国の不始末です。申し訳ない。何でも協力します、と。
ベルンハルトは歯を食いしばり、二人からの説明を聞いた。
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