ブランドン
俺はブランドン。大国プロンシアーナの王太子だ。今は幽閉されているが、未だに俺が正当な王太子であり、次期国王な事は、決定なのだ。
馬鹿な奴らはそれを知らない。
俺が王太子になったのは、8歳だ。
本来なら15歳になった王子が挑む試練に、俺は8歳で挑戦して王太子の地位を得た。
プロンシアーナ王国の王都、ロンシア。
王都の北にそびえるデモール山脈。山の中腹に隠された洞窟がある。
そこが試練の洞窟だ。
はるか昔は15歳になった王子が一人で洞窟に入り、試練を経て不死身になり戻ったそうだ。殆ど生きて帰らなかったらしい。
しかし、年月がたつにつれ、一人でなく腕利きの従者を連れて行くようになった。そのうち騎士を連れて行くようになったらしい。
人数が増えていった。
そして、試練の内容も王家以外も知ることになった。
試練の洞窟には魔物がいる。洞窟内だけだそうだ。
入れば、襲ってくる。
それを打ち負かし、奥の祭壇で試練を経て、不死身となるそうだ。王族の血を受けた者はそこで祝福されて不死身となる。
しかし、王族の血が無い者は死ぬ。
俺は騎士団を率いて、ついでに奴隷を30人ばかり一緒に連れて試練の洞窟に入った。
魔物が現れれば、奴隷を突き出して襲わせた。そこを騎士団で打ち取る。
奴隷は死ぬが、騎士が死んだり、怪我をしないためだ。仕方がない。
魔物が多く、奥の祭壇に着く前に奴隷を全部使ってしまった。
祭壇につくと、石版に文字が彫られていた。
「我が勇敢な子孫よ。よくぞ魔物を倒しここまでたどり着いた。地の底からの炎にその身を捧げよ。さすれば、不死の身となるであろう」
祭壇奥の、地面近くの壁から炎が斜めにふきだしている。
「何だこれは!死ぬではないか!」俺は怒った。
「ブランドン様、王家の方は、この炎に焼かれても無事なのでございます。」
騎士団長が言った。
「お前、以前に王家の姫が降嫁した公爵家の三男が婿に行った伯爵家の5男が祖父だと申したよな。」
「家名はそうですが、、」
俺は騎士団長をその炎に突き飛ばした。
騎士団長が炎に焼かれ、一瞬で黒焦げになり絶命した。
「兄さん!」
一人の騎士が駆け寄った。
「家名はそうですが、我々は養子なのです!戦災孤児の兄弟を引き取ってくれたんです!」
その騎士がそう言い、なんと、俺を炎に向けて突き飛ばしたのだ!孤児が!王子を!
なんと無礼な、万死に値する行為だ。
俺は炎に焼かれても死ななかった。服すら燃えなかった。炎は俺の周囲あったが、俺を避けて燃えていた。
脳裏に声が響いた。
「勇敢な我が子孫よ。よくそ恐れず炎に身を投じた。この炎は魔族の祝福!これによりそなたは不死の身となった。大地に人の血を吸わせよ!人の嘆きで大気を満ちさせよ!それが地の底の魔族の糧となる!
プロンシアーナの王位を継承せよ。魔族のために争いを絶やすな。
なお、炎に焼かれた不死の身となった者の子供のみが、炎の祝福を得る。不死の身のそなたを殺せるのは、不死の父か兄弟のみ。父は子供を殺せるが、子が父を殺せはそなたも死ぬ。それは魔族の掟。魔族の炎を絶やすな。子孫がいなくなれば炎は消え去る。必ず祝福を受ける子孫を残せ。糧を地の底で待つ。我が子孫へ。魔族より。」
炎から一匹のトカゲが出てきて俺の服のポケットに入った。
また、頭に声が響く。
「俺はお前の使い魔になってやろう。お前の願いを叶える手伝いをしてやる。」
俺はしばし、呆然と焼かれていた。
考えろ。
父王の子は炎の祝福を得て不死の身になれるのか?
今、不死は俺と父王か。
この秘密を知る父を消したいがそれをすれば俺は死ぬらしい。
俺は炎から出た。騎士たちが俺を恐ろしい者を見るような目で見ていたが。
特に俺を炎に突き飛ばした騎士は腰を抜かしている。
とりあえず俺は俺を突き飛ばした騎士を炎に焚べた。
騎士は一瞬で消し炭になった。
俺は不死の身となり王太子となった。
母上に協力してもらい、敵となる兄弟を殺してもらった。不死の祝福は俺だけでいい。
使い魔のトカゲに城の中の出来事を報告させる。誰が父王の子を宿したか。どこに身を隠すか。
誰が俺を排除しようとしているか。
俺のすぐ下の第2王子だけは殺せなかった。母親が平民だったので王子を名乗らせず、市街にほりだしたので、行方がわからないのだ。名前すらわからない。
俺と同母の弟も殺したかった。邪魔だ。
しかし、母上が弟は敵になりえない、と言って反対した。
めんどくさいので母上も殺そうかと思ったが、使える手駒だ。殺すのはいつでも出来る。今はやめておく。
なんと母上は、弟のセインは父王の子でないとぬかした。
はあ?
父王は一人目を産んだ母上に興味をなくしたらしい。寂しくなって、城にきた美男子の劇団員と遊んで出来た子がセインだと?
母上は父王の叔母にあたる。
母上は先王の引退後に迎えた側妃が産んだ末子だ。王女だ。父王の正妃だ。
父王は王女の、王妃の不貞はマズイと生まれたセインも王子とした。殺してしまえば良かったのに。
まあ、いい。敵に成り得ないしな。
それより、兄弟が新たに生まれたら、殺さねば。
父王は子供に興味がないらしい。死んでも何とも思わないようだ。やりやすいな。
俺は不死の身となり15年、思うまま生きた。遊んだ。
楽しかった。
子供に興味の無いはずの父王が俺を王太子から外そうとしているとトカゲが報告した。父王の子供を殺しすぎたか?
可愛がっていた女の子供を殺されたと、父王は母上を毒殺した。
父王は我が子でないと知りながらセインを王太子にするつもりだと?洞窟には行かせず、譲位するだと?
正統の王位をなんだと思っているのだ。魔族のために血を絶やしてはいけないのに。争いを続け、血を流し続けさせなくては。
しばらくして情報が入った。
父王は城の中でなく、外で子を作っていた。それも、何人も!そいつらをセインが集めて父王に媚を売ったのだ。
ひとまずセインを王太子にして、その後自分の血を引く者に王位を渡すだと?!
マズイな。
しかし、父王を殺せば俺も死ぬ。
父王は俺を殺せるのに。不公平だ。
この頃、トカゲが面白い話を持ってきた。
大昔にこの大陸を血で染め上げた話だ。大陸にいた精霊のすみかを片っ端から血で汚し、あと一歩で精霊を駆逐出来る所だった。
それを邪魔した女。
血の大地を浄化する緑の樹々を植え付けた女。精霊の加護を得た女。
その類の子供が生まれるらしい。
精霊の加護を受けた子供を産んだ女を手に入れろ、とトカゲがいう。
今は孕んだその女の子宮が精霊の加護を受けていて、輝いている。
赤子を産んだ後、その女に種を付けろ、と。精霊に愛される子供の異父兄妹をつくれ、と。
赤子を産んだ女の子宮はしばらく輝いているから、トカゲは見失うことはないらしい。
面白そうだ。
ついでに精霊の加護を得ている赤子を殺そう、と提案した。
トカゲは無理だという。
精霊の加護を受けていて、妊娠中の女にも、今は近づく事も出来ないと。
生まれた後も、神に近い無垢な赤子は聖なる光に包まれている。近づけない。魔族はその光で焼かれるという。
とりあえず種付けだ。赤子を産んだ後の女を攫う計画を立てた。
テレサという女を近づけることが出来た。
さらに女を攫うのも、成功しかけた。
しかし、失敗した。
刺客の血を受けた女は、穢を受けた。子宮の輝きが失われた。トカゲは光を目当てに女を見つけていた。見えなくなった。
精霊の加護を受けた赤子の生母だ。使えるだろう。探したが見つからない。元の離宮や女のいた場所を探したが、いないのだ。
歯車が狂い始めた。止める事が出来なかった。
身を隠しながら、セイン、第二王子、セインが匿っている父王の子供を探した。
第二王子は騎士団にいたらしい。しかも、セインと一緒にいると報告が来た。
第二王子め。炎の祝福を受けさせるものか。殺してやる!
しかし、一向に見つからない。父王も見つけられないらしい。
そうこうしているうち、反乱が起きた。
武官、文官、騎士団、平民までがセインと第二王子を支持した。
俺と父王はあっけなく味方に裏切られた。差し出された。幽閉された。
幽閉されて15年。
またトカゲが報告してきた。トカゲは自由だ。
1年くらい、いなくなることもある。
もう月日がわからない。トカゲの報告も実在感がない。
今回の報告は、あの時の赤子が精霊に守られているフランセーアから出て、生母の実家にいるというものだ。
トカゲは再び、楽しい計画を立て始めた。
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