王子と公爵令息と夕食だそうです
結局、アーサーと一緒に王子の招待に応じることになったフェリシティー。
アーサーの親戚の娘設定として、控えめなワンピースを選んだ。カツラとメガネをかけて、アーサーと共に子爵家を出て馬車に乗る。
「フェリシティー、そう嫌そうな顔をしないで。俺もめんどくさいけど、人の世のしがらみだから、我慢しよう。」アーサー。
「そうですけど。何のために苦労してるのか、わかってたらそっとしておくものじゃないですか!」フェリシティー。
「まあ、そうだね。」アーサー。
二人で文句を並べて言い合っていたら、王子の滞在するホテルに付いた。
アーサーがフェリシティーをエスコートする。
最上階、と言っても三階の、スイートルームに案内された。
王子とルーファスがいて、挨拶し合う。王子たちはにこやかだ。
一番身分が高いのはアリステアの第2王子リュシードだ。
次が国の大きさからいって、フランセーアの公爵令嬢フェリシティー。フランセーアでは准王族と遇されていて、姫と呼ばれている。
その次がアリステアの公爵令息ルーファス。
そしてローラン子爵アーサー。
血縁ではアーサーとフェリシティーが叔父と姪。アーサーとルーファスも伯父と甥に当たる。
フェリシティーはリュシードが父方のイトコ、ルーファスが実母方のイトコだ。
リュシードの母とルーファスの父が兄妹であり、ふたりも従兄弟同士になる。
アーサーとリュシード王子は血縁がない。
フェリシティーとルーファスは血縁上はイトコだが、他人としてお互い振る舞っている。
設定があるので、身分は王子、公爵令息、子爵、子爵遠縁の娘となる。
とりあえず、ややこしい血縁、身分の会食が始まった。部屋には護衛騎士2人が控えている。
「久しぶりだね、えっと、フェリス嬢。」
リュシードがフェリシティーに話しかけた。
「はい。」フェリシティー。
「僕も久しぶりです。フランセーアの学園では、あまりご一緒出来なくて残念だった。声を掛けづらくて。」
ルーファスは1年間留学しに来ていた。
しかし、婚約者のいないルーファスはフランセーアの貴族令嬢に囲まれてフェリシティーには近寄れなかった。
また、フランセーアの第2王子エルドがフェリシティーに男を近づけなかった。
フェリシティーに話しかけようとすると挨拶程度で、エルドが割り入り、エルドと会話する事になるのだ。
パーティでも、フェリシティーに挨拶しか出来なかった。
子供の頃はベルンハルトがフェリシティーを守り、滅多に外に出さなかった。(子供の頃のフェリシティーは外に出せる令嬢ではなかった)
フランセーアで美しく成長したフェリシティーと再会したのに、エルドにことごとく邪魔された。
「フェリス嬢、まだ婚約は決まってないと聞いています。あなたにご執心と有名な方とはどうなっていますか?」ルーファス。
「?どうともなっていませんが。それはエルドのことですかね?色々と贈り物やお茶会、劇場等のお誘いはあります。断っているのでそろそろ諦めると思います。」フェリシティー。
リュシードとルーファスが目配せした。
「フェリス嬢、婚約の申込みの釣書を見たこと、聞いた事はありますか?」ルーファス。
「いいえ。」フェリシティー。
リュシードとルーファスがため息をついた。
「そうか、あの方のために、アリステアからのものはとめているのだな。フェリス嬢のお家宛のものは、親御様が。」リュシード。
「なんのお話しですか?全くわかりません。このソテー、美味しいですね。果実水も絶品です。」
フェリシティーはモクモクと食事に集中している。さっさと食べ終えて、帰ろうとしていた。
「うん、さすがだ。ソテーはお取り寄せの食材かな?果実水はローラン領地の特産品だよ、フェリス。高いからうちじゃ、出してない。ごめんな。」アーサー。
アーサーもサクサクと食事を進めている。
「このホテルの料理長に認められたなら、もっと販路を広げれそうだ。農園主と話をしよう。」アーサー。
「この添え付けのジャムも美味しいです。」フェリシティー。
「リュシード殿下、この後、料理長と少し話をさせていただけませんか?ここのホテルの系列ホテルは王都や他領にもありますよね。ローラン領の特産品を使ってもらえないか、紹介していただけないか商談したい。」アーサー。
リュシードとルーファスは、二人を見て困った顔をしていた。眼中にないようだ。
「後日、子爵が料理長に会えるように命じておきます。」リュシード。
アーサーが嬉しそうに礼を言った。
リュシードが話を始めた。
「あー、ある人の話をしよう。フェリス嬢。
大国のとある姫の話だ。
王子が婚約したいそうだが、姫の親が断っているそうだ。しかし、王子は諦めす、毎月婚約を打診しているそうだ。
で、王子を狙う貴族令嬢が自分も婚約者を決めないとか。それで、貴族令息も婚約者が出来ず、困っているそうだ。
なんと、姫のもとには、他国からの申込みもたくさんあり、他国でも婚約を見合わせる貴族令嬢令息が幾人もおり、困っているらしい。
何を隠そう、この私も、ルーファス、ルーファスの兄弟も婚約の申込みを半年ごとにしている。」
「そうですか。知らないです。
でも、その姫のせいではないですよね。
お家宛でなく、御本人に申込みしてみては?
断られたら諦めて、他の方と婚約すれば良いと思います。」フェリシティー。
「私も知らなかったです。そんな話があるんですね。」アーサー。
「王族の姫、御本人に、親の許しもなく婚約の申込みはできないよ」ルーファス。
「それなら、フェリス嬢、今度の休みに森林公園を散歩しませんか?天気が悪ければ新設の図書館をご一緒したい。」リュシード。
「申し訳ございません。他の方との約束がございます。」
「では、その次の休みに。」リュシード。
「お断りします。私は学びに来ております。楽しんでいます。はっきり申します。不敬ですが、邪魔をしないでいただきたいのです。」
「私との時間は邪魔ですか?」リュシードが不機嫌になった。
「今はそうです。」フェリシティー。
「もちろん私も変装して同行する。」リュシードが食い下がった。
「王子がお嫌なら、私とはいかがでしょう?フェリス嬢。」ルーファス。
フェリシティーが嫌そうな顔をした。
扉の向こうが騒がしくなった。
「お帰り下さい。誰も入れるなと言われています!」
「私を誰だと思っているの?!公爵家の人間に無礼は許しません!」
令嬢に手荒な事もできす、騎士が止めきれなかったようだ。扉が開き、豪華なドレスをまとった令嬢が部屋に入ってきた。令嬢の侍女と護衛まで部屋に入った。
部屋の中の護衛が令嬢に槍を向けた。
「まあ!怖い!リュシード王子様、お助け下さいませ。」
令嬢がクネクネしながらリュシードに言う。
「あなたか、リコーネ公爵令嬢。名前を呼ぶ許可は出していないはずだが?」
リュシードがため息をつく。
「お会いしたかったですわ。私の事はレイチェルとお呼び下さい。何度もお願いしておりますのに。ね、レイチェルとお呼びくださいましね。
私もこの田舎に留学しましたの。ぜひお知らせしたく、リュシード王子がご滞在のホテルにご挨拶に伺いましたの。あら、サンフォーク公爵家のルーファス様、お久しぶりですわ。」
「人の話を聞くよう、何度もお伝えしましたが、伝わらないようだ。大切な方との会食中だ。出ていってくれ。」迷惑そうに言うリュシード。
「まあ、この平民は何故リュシード王子様と同じテーブルについておりますの!身の程を知りなさい!」
レイチェルがフェリシティーに向けて、勢いよく果実水を顔にかけた。とっさに手で防ごうとしたが、頭部や服に受けてしまった。
「出ておいき!平民!」リコーネ公爵令嬢。
「なっ」リュシードとルーファスがリコーネ公爵令嬢に鋭い視線を向けた。フェリシティーが視線でそれを止めさせた。身分を言ってほしくない。
驚いて事の成り行きを見ていたアーサーとフェリシティーだったが、乱入者が来た事で、帰宅することにした。
「身の程をわきまえておりますので、これて失礼いたします。」フェリシティーが席を立った。
「私も失礼いたします。高貴な方のマナーは素晴らしいですね。」席を立ちながら呆れたアーサーが言った。
「えっ、まだ話が、食事も途中で、、」リュシード。
「そんな、せっかくの機会ですのに、、」ルーファス。
「お話しなら、私が楽しい会話を提供いたしますわ。お食事も私といたしてくださいな。」レイチェルがフェリシティーの席に座った。
「ぜひ、そのように。リコーネ公爵令嬢。」冷ややかな笑顔のアーサーが言う。
「で、ては、またの機会に。フェリス嬢。申し訳ない。」リュシード。
「身分をわきまえておりますので。」断るアーサー。無視するフェリシティー。フェリシティーが冷ややかな侮蔑の目線で帰っていく。
リュシードとルーファスは青くなり立ち上がり頭を下げた。
「叔父上!申し訳ございません!フェリス嬢も、大変な失礼を、お詫び申し上げます!」ルーファス。
フェリシティーは大国フランセーアの准王族。公爵令嬢。フランセーアの第2王子の想い人。フランセーアの民衆から精霊姫と称えられる絶大な人気の姫だ。
ここがフランセーアなら、この公爵令嬢レイチェルは討ち取られていたかも知れない。
「子爵、ぜひお詫びの機会をお願いします!」頭を下げるリュシード。
「え、オジウエ?ただの田舎子爵でしょう?」
背後に公爵令嬢の声が聞こえた。
アーサーとフェリシティーは部屋を出た。
フェリシティーはハンカチを出して濡れた服などを拭いた。
アーサーもハンカチを出してフェリシティーを拭く。
「いや、印象深いご令嬢だったね。」アーサー。
「そうですね。連射攻撃でした。退散しましょう。もう呼ばれても、今回の事を出して、お断り出来ますよね」フェリシティーもニコニコしていた。
実は令嬢の非礼を二人はさほと気にしていなかった。早く帰れてラッキー!と思っていた。
二人はさっさとローラン子爵家に帰宅した。
翌日、詫び状と招待状が届いた。
すぐに返事を出して断った。以降も断るので、もう招待しないで下さい、とフェリシティーはしたためた。
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