ローラン子爵家で過ごします
フェリシティーがアーサーに留学したいと手紙を出した。
ベルンハルトとサーラも、フェリシティーの留学を了承し、ローラン子爵家にフェリシティーを置いて欲しいと手紙を出した。
その手紙を貰ったアーサーは、正直、困った。
フェリシティーは精霊の祝福を受けた稀有な姫だ。
アリステア王家とフランセーア王家の血筋を引く姫。
精霊姫はフランセーアで民衆から絶大な人気だ。
留学中、何かあったら、ヤバい。
なにしろ、ここは田舎だ。
やっと領都は栄え、賑わいが板についた。
出店が増えて職を得ようと新規に領民が増えた。
学校に通うため、他領から沢山人が来ている。
もしもフェリシティーに危害を加える目的の余所者が紛れても、わからない。
しばらくアーサーは考えた。
そして、ベルンハルト殿下に手紙を出した。
これで良ければ、フェリシティーを我が家にお迎えいたしましょう、と。
ベルンハルトとサーラはその内容に驚いた。
フェリシティーもびっくりだ。
しかし、フェリシティーはアーサーの提案した策に了解の返事を出した。
フランセーアの貴族学園は休学した。
しばらくフェリシティーはアーサーの指定した修行をした。慣れない事で手は傷だらけになった。
ただ、始めは上手くできない事が出来るようになると嬉しいし、楽しい。苦ではなかった。
1ヶ月を自宅で修行して過ごし、準備してアリステア王国ローラン子爵家へ旅立った。
ローラン子爵家も、フェリシティーを迎える準備をしていた。
その頃。
アリステアの王都で、ある募集広告が話題を呼んだ。
「ローラン子爵家経営のローラン職業訓練学校に貴族の令息令嬢が留学予定。ローラン子爵家に滞在されます。よって、腕の立つ護衛多数募集中!!委細面談。出自問わず。保証人3名必要。誓約書に同意必須。尚、命の保証なし。」
「貴族の令息令嬢募集中!アリステア王国の職業訓練学校で学びませんか?ローラン子爵家に滞在してローラン職業訓練学校に通えます!学費・滞在費は詳細をご覧ください。委細面談。制限人数あり。面談後こちらからお断りする場合もあります。こちらの用意した同意書、誓約書に署名必須。保証人必要」
アリステア王都の学園で、商人の学校で、王宮騎士団で、この募集広告を見て密やかに噂が広まった。
サンフォーク公爵の次男、ルーファスがこの策に面白がって協力を申し出た。
アリシアが兄アーサーの今回のローラン職業訓練学校の募集の裏側を息子たちに教えたのだ。
サンフォーク公爵令息が参加すれば、ローラン子爵領に大っぴらに護衛を投入できる。
つられて参加する貴族も出でくるだろう。
さらに貴族と縁を結びたい商人も学校に来る。
ローラン子爵領は代替わりしてから発展目覚ましい魅力的な土地である。その子爵家に滞在して子爵と面識を得る事は、将来的に悪いことではない。
ローラン子爵はほとんど王都に出てこない。貴族の交流に興味がないらしい。面識を得るチャンスかもしれない。
何しろ、ローラン子爵家はサンフォーク公爵家と縁続きだ。噂ではサンフォーク公爵令息が参加するらしい。サンフォーク公爵令息達は王子の従兄弟だ。
職業訓練学校も評判が良い。実践的な学びを得られるらしい。
何故か王宮騎士団が率先して腕利きをローラン子爵家に派遣するらしい。もしかして、スゴイ貴族家の令息令嬢が来るんじゃないか?もしかして、王子も?
噂が広まり、面接希望者が殺到した。希望者が程よく集まった頃、アーサーが王都に来た。
アーサーが祖母のリッチモンド伯爵家を間借りして、数日間面接を行なった。
厳選し、経歴と保証人を確認してから合格者に通達。
一週間後、護衛が30名がローラン子爵家へやってきた。
護衛は騎士団の精鋭にさらに鍛えられる。また、ローラン子爵の警備隊と領地をまわり、土地勘を得てもらう。
1ヶ月後、荷物を積んだ馬車が連なった。
令息令嬢がやってきた。こちらは色々である。
侍女、侍従、護衛付きの高位貴族の令息令嬢。
一人でやってきた下位貴族の令息令嬢。
子爵邸の1階に令息。2階に令嬢達の部屋とした。新品の家具が揃えられている。令嬢5名令息5名だけだ。
さらに子爵の家族のスペースと使用人、護衛の部屋がある。
一気にローラン子爵邸は賑やかになった。
それに、領都も賑わい始めた。
面接に落ちた貴族令息令嬢や商人の子供達がローラン子爵領のホテルに滞在し始めたのだ。
ローラン子爵家の中で貴族令息令嬢に頭を下げ、使用人と並び働く年若い少女。変装したフェリシティーがいた。
フェリシティーを社会勉強と言う名の留学として、ローラン子爵家の使用人として迎え入れた。当のフェリシティーはもちろん、ベルンハルトとサーラも承諾した留学だ。
使用人達は令息令嬢とは違い、子爵のプライベートスペースで働く事が多い。
今のローラン子爵家で働いている使用人は、元からいた使用人達であり、フェリシティーをアーサーの遠縁の親戚のお嬢さん、と紹介してある。また、使用人だがアーサーの子供の家庭教師も兼ねている、と。
他に新しく10名の使用人が入り、人数の増えた子爵家の雑用をしている。この10名はアリステア王宮が貸し出した武術も1流の使用人だ。フェリシティーの護衛を兼ねている。
フェリシティーは今、ローラン子爵家で洗濯、掃除、料理などをしている。時々アーサーの息子二人の家庭教師もだ。
そして、週3日働き、3日は職業訓練学校に通う。1日は休みだ。
ローラン子爵家では、以前から使用人は無料で職業訓練学校に通えるようにしていた。フェリシティーも新しく来た使用人も、そうしている。
フェリシティーは腰まであった髪を肩の下くらいで切り、茶色のカツラをかぶっている。前髪でかなり顔を隠し眼鏡をかけ、頬にソバカスを描いている。
ベルンハルトがアリステア王の兄に頼み、精鋭騎士、精鋭王宮使用人を貸し出してもらった。
フランセーア王家は渋々、フェリシティーの留学を承諾した。
とにかく、フェリシティーは特別扱いされない平凡な少女としてアリステアに滞在していた。
さらに、頼んでいないのにアリステア王国第2王子、リュシードまで参加したのだった。
ローラン子爵家でなく、急遽、領都で一番のホテルを貸し切りにして滞在するそうだ。
アリステア王宮から人材が派遣された理由は第2王子の留学だと知れ渡った。
王宮の騎士団の精鋭、王宮の護衛団がローラン子爵領都に派遣された事に皆が納得した。
そして、さらに多くの貴族令息令嬢がローラン職業訓練学校に留学してきたのだった。
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