フェリシティーがいなくなりました
全員、疲労の色が見えた。
濃い1日だ。人生でこれほど一度に出来事が起こった日があっただろうか?
セインとガイルは王宮に部屋を用意してもらった。
エリンとレイナルト夫妻、アーサーは王太后宮の客室に下がった。
エリンはアシェルを心配していた。
王太后に会いに行く前、たっぷり母乳を与えた。一緒に来ていた乳母にアシェルの世話を頼んでいたが、思いがけず長時間になってしまった。
子供達は途中から、男の子組と女の子組に別れ、王宮の一室で待機していた。
元々、湖畔の離宮で遊ぶ予定だった。
子供達はそのまま、王宮にお泊まりすることになった。楽しそうにはしゃいでいる。
「お父様お母様、シェリー様たちと子供だけで過ごしたいので、邪魔しないで下さいね。」
フェリシティーが両親に言った。
ベルンハルトとサーラも、王宮に用意された部屋で一晩過ごした。
翌朝、ベルンハルト夫妻は部屋で朝食をとった。
その後少しベルンハルトとゆっくりお茶を飲んでから、サーラは女の子達の部屋に案内してもらった。
フェリシティーの様子を見に来たのだ。帰宅の事も相談するつもりだった。
サーラを見て、シェリーが不思議そうな顔をした。
部屋にはシェリー、オルガ、ローズしかいない。
「おはようございます。シェリー様。オルガ様とローズ様もおはようございます。昨日は色々な事が起こりましたね。ところで、フェリシティーは、?お手洗い行ったのかしら?」サーラが聞いた。
「サーラ妃殿下、フェリシティーはご両親が迎えに来たので帰りますとご挨拶して帰られましたわ。」
シェリーが不安そうな顔で答えた。
サーラがふらりと倒れかけた。付き添いの侍女が支えた。
「サーラ様!」シェリーもサーラに駆け寄り、サーラを椅子に座らせた。
「いつ、フェリシティーは出ていったの?」サーラ。
「1時間くらい前、だと思います。」シェリー。
「すぐに、ベルンハルト様に伝えて。」
サーラが侍女に頼んだ。
サーラはシェリー達に、フェリシティーの様子を聞いた。
「王宮に来てから、色々ありましたが、そう言えばフェリシティーの様子がおかしかったと思います。」
シェリーが話した。
女の子達はこの部屋に来てから、口々にお喋りし始めた。
湖に落ちて、不思議な空間に入り込み、気がついたら王宮の精霊の泉の前に放り出されたのだ。
「こんな不思議な体験、最初で最後ね!私達は、巻き込まれただけよね。」
「そうね。精霊が呼んだのは、ベルンハルト殿下とフェリシティーよね。歴史の一幕だったわね。」
「精霊可愛かった!」
「精霊の話、不思議だったわ。先生に習ったのと違うわ。」
「私達、初代王家の血を継いでないのね。ショックだわ。」
「お父様お母様になんてお話しようかしら。お話して良いのかしら。」
シェリー、オルガ、ローズは、会話というよりそれぞれ思ったことを次々口に出していた。
しかし、フェリシティーは無言だった。
メイドがお茶と菓子を運んできても、無言で食べていた。
「フェリシティーは最初に来た時から精霊様が見えていたの?」シェリーが聞いた。
「あ、はい。小さな上の泉の方に精霊様がいました。手を突っ込んだら、消えてしまって。その後、水柱が立ったんです。笑いながら私の周りを飛んでました。でも、誰にも見えてなかったから、黙ってました。」
フェリシティー。
「まあ、でも、そうよね。他の人に見えてないなら、怖いわね。」シェリー。
ローズが無邪気に、
「知らない人達がいたわね。スゴイ美人の人!あの人エリンて人、フェリシティーに似てた。ご親戚?」
シェリーは会話でなんとなく、気づいていた。
「あったことない人よ。」フェリシティーが答えた。
「ふーん。でも、私達貴族って、よくわかんない親戚多いわよね。そういう人なのかも。
サーラ様のお友達みたいだったわね。」
「エルドったら、フェリシティーへのアピールがすごいわね。思わず助け舟を出しちゃったわ。婚約しようと必死よね。エルドは。
フェリシティーは知らないだろうけど、ずうっと、あんな感じなのよ。フェリシティーはエルド、どう思う?」
「なんとも思ってないです。」フェリシティー。
フフっと、姫たちが笑った。
「まあ、そうね。見てたらわかるわ。」
「初めがひどかったものね。」
「押しすぎよね。」
その夜も女の子達は恋バナをして眠りについた。
シェリーのノロケ話が多かった。
オルガとローズは恋に憧れて、王太子の婚約者のシェリーの話を聞きたがった。
フェリシティーは相槌程度で、ほとんど話さなかった。
そして、朝お手洗いに出て行き、部屋に戻ると、親の迎えが来たから、と帰ったのだ。
フェリシティーに付き添っていたメイドは、気を失ってお手洗いの個室に閉じ込められていたのが発見された。フェリシティーに閉じ込められたそうだ。
サーラの侍女からの知らせで、フェリシティーがいない事を知らされたベルンハルト。すぐに護衛や女官を走らせた。
フランセーア王に知らせ、門衛に問い合わせた。
フェリシティーは正門を通っていない。
フェリシティーがいなくなってから、城から出たのは食料品を届けに来たいつもの業者がいくつかと、装飾品を納入しに来た商会がいくつか。城の備品の納入業者もいた。ゴミの回収業者。
数名の夜番の城内の使用人が帰宅。
夜警の騎士らの帰宅。
かなり多くの人が城を出ていた。
フェリシティーは目立つ。
誰も、フェリシティーを見ていない。
城内に隠れているかもしれない、と捜索されたが、見つからない。
知らせを受けてサーラは真っ青だ。
ベルンハルトも心配している。
フランセーアの王族も、困惑と心配で落ち着かない。
フェリシティーは自分の意志で出ていった。
お読みいただきありがとうございます。




