借金令嬢の裸婦画で事件です。
第2王子が登場。サーラの絵で印象深い出会いになりました。
午前は3限、ランチを挟み午後も3限が学園の授業時間割だ。
後期になり、サーラは2限が無い日が出来た。
サーラはこの時間を人気のない場所でスケッチをしている。灌木に囲まれて見えにくい。昼寝をする日もあった。
たまにエリンとバートも来る。
いつものように過ごしていると、ガサガサと音がして一人の男子生徒が飛び込んできた。
その男はサーラを見て驚いたようだ。しかし、すぐに気を取り直し言った。小さめの声で。
「匿ってくれ。」
男は息を潜めた。
「ベルンハルト様ー」女の子達の声がした。
声と足音が遠退いていく。
ベルンハルトとやらがホッとした顔になった。
サーラを見る。
「ここで何してたの?」
「授業が無い時間なので、絵を描いたりしてくつろいてました。あなたが来るまでは。」
「そう、ゴメン。助かったよ。追われてたんだ。」
「そですか。もう行っていいのでは?」
「すまないが、ここにいていいだろうか?見つかりたくない。」
「はあ、良いですけど。」
サーラは絵の続きを書き始めた。
騒ぎでリスが逃げてしまった。ため息をつく。
思い出してリスを描くがうまくいかない。
チラリと男を見る。美形だな。絵になる。
「スケッチしていいですか?」
「君、絵を描くの?この辺の見てて良いなら、描いて良いよ」
男はサーラのスケッチブックを数冊手に取った。サーラのシートに座った。
「上手だね。」「これは校舎だね。あの場所かあ」「アハハ。リドル先生だ。」
男はサーラのスケッチブックを楽しそうに見てめくる。
パラリとめくり、男は固まった。凝視している。次もめくり、また見つめている。次の絵も。3枚の絵を何度も繰り返し見ている。
サーラは描くのに集中している。
そこにエリンとバートが来た。
「あれ?新顔がいる。」
「アッ」バートが声を上げた。
男がスケッチブックを慌てて閉じる。男の顔が赤い。
バートがそのスケッチブックを取り上げて開く。
隣りにいるエリンを見る。顔が真っ赤になった。
キョトンとしたサーラが、アッと怯んだ。
「もしかして、あれ?!見ちゃった?」
エリンを見て、謝る。「ごめんエリン」
「返して。見ないで。秘密の絵が」オロオロするサーラ。
「なに?この絵」
バートがサーラとエリンを見て聞く。声が低い。怒ってるみたいだ。
スケッチブックをサーラに渡した。バートもシートに座った。
エリンが「もしかしてこの絵?」
後ろを向いて髪をたくし上げてうなじを見せる。脚を交差させた。
ブホッっと男達の声がした。咳き込んでいる。
サーラが説明した。
昔の絵や彫刻には裸婦像がある。描いてみたい。
美術館で彫刻の裸婦をスケッチしていたら監視員に怒られた。
その話をしたら、エリンが。
「報酬もらえるなら、モデルになるよ」って。
サーラの部屋で、ポーズをとってもらい、描いた。
それが3枚。
ウッカリ学園に持ってきちゃった。
3枚の絵で、エリンは一糸も纏わぬ姿を見せていた。
うなじを見せての立ち姿で後ろ姿。
髪を両手でたくし上げている。
細いうなじ。美しい背中。くびれたウエストに形の良いオシリ。長い脚を交差させている。
椅子に座って猫を膝に乗せて身体は少し斜め向き。ほぼ正面の姿。猫を愛でて微笑んでいる。
タワワな胸にちょこんとある乳首。膝の上の猫が気持ちよさげに寝ている。
ベッドで腕を顔のそばに置き、横向きに眠る姿。
重みと重力で垂れる2つの膨らみ。寝顔がそそる。腰のあたりが艶めかしい。
「これは、マズイ」バートがつぶやく。
「ダメだな」男。
「ところて、この人ダレ?」エリンが男を指差す。
「さあ?」サーラ。
「知らないのか?第2王子じゃん。」バート。
「へー。」エリンとサーラ。
「あ、じゃあ、この絵売れるかな?」
王子の似顔絵をサーラが見せる。
「あいかわらず、上手いね。そうだ。令嬢に売れるぞ!うん、高値で売れるね」
「そうなの?!サーラ、もっと描いて!儲かりそう!」
「あー、あの絵と交換してくれるなら、いくらでも描いていい。」王子。
「ダメだ!アホか。あの絵は俺が買い取ろう」バート。
「俺も欲しい。3枚とも欲しい。買い取る。言い値で買おう。特に寝姿が欲しい。芸術だ」
男が二人、睨み合う。
「コイツには絶対に売るな」バート。
「君こそ。危ない目だ」王子。
サーラが問う。
「もしかして芸術じゃなくて、嫌らしい目で見ました?」軽蔑が目に宿る。
「エリンの絵だから、エリンにあげます。エリン、誰にも売ったりしたら駄目ですよ。焼いたほうが良いかも。練習のつもりだったし。」
「白黒なのに。色を付けたら恥ずかしいけど。このくらい大丈夫よ。」
「あ、予鈴だ。行こう」サーラ。
「行かないの?バート。」エリン。
「ちょっと、今は無理。先に行って。」バート。
男二人は座ったまま。股間に手を乗せている。
「お前もか」バート
「男ならこうなるだろ」王子
「タッテテ、タテナイ。」バート
「静まるまで、待とう。」王子
「静まる気配がない。」バート
「同意見だ。スゴイ絵だったな。」王子
「猫が羨ましい。」バート
「ベッドで裸って、もう想像力が」王子
「夢に出そうだ」バート
「いいな、それ。出て来て欲しい。」王子
「お前はダメ。お前王子だろ」バート
「心の中は自由だ。関係ない」王子
「すました王子の本性それかよ」バート
「王子も人だ。それにしても無防備すぎる。」王子
「だから俺がついてるの」バート
「惚れてるんだ」王子
「まあね。だからおまえは静まれ。なんか腹立つ」バート
「まだ無理。さっきから不敬だそ。おまえ呼ばわり」王子
「タッチャッテル王子様に言われてもなー」バート
「それもそうだな」王子が破顔した。
バートも笑う。
男二人は3限の授業に来ることは無かった。
その絵は後日、バートがエリンを言いくるめて買い取った。
バートの部屋の鍵の掛かった引き出しに仕舞われている。
時々コッソリ眺めてるとか、眺めてないとか。本人のみぞ知る。
読んでくださり、ありがとうございました。
ブックマークつけていただけたら嬉しいです。
前回同様、エリンを脱がせてスイマセン。